会派を代表して宮瀬議員が議案への意見を表明
- 2018/10/05
- カテゴリー:都議会
都議会定例会最終日にあたり本会議が開会されました。議案に対する各会派からの討論が順次行われ、都議会立憲民主・民主クラブを代表して宮瀬政務調査会長が登壇し議案についての意見を述べました。焦点になった人権条例、工業用水道廃止など知事提出の全議案が可決しました。
以下、全文です。
都議会立憲民主党・民主クラブを代表し本定例会に提出された知事提出の全議案に賛成、議員提出議案第17・18号に反対の立場から討論いたします。
■はじめに防災です。私たちは本定例会に臨むにあたり大阪北部地震で被災した大阪府・京都府・京都市のご担当者のお話を直接伺い、都市型災害の教訓を得てまいりました。さらには西日本豪雨災害で甚大な被害を受けた、倉敷市真備町の被災現場と市役所を訪問しました。
都においては各災害をうけ知事が本定例会に先立ち防災力向上12テーマを総点検し、課題の摘出と今後の対応を発表しました。私たちがかねてより提案していた災害拠点病院、大規模地下街などの浸水対策などが盛り込まれたことをまず率直に評価いたします。一方私どもが伺った現地での教訓や課題と乖離するものや、PDCAサイクルがなく取り組みが不十分なものもあります。
例えば防災意識の向上のための新たな普及啓発への取り組みとして、「仮想現実VRを活用した 防災訓練実施」 を挙げていますが、実際に消防庁が所有しているVR車は僅か1台、その人数も1回当たり僅か8名です。これだけでは都民全体の防災意識の向上には繋がりません。私たちが代表質問で提案したように今後は大規模災害時には“現行の”知事の定例記者会見やツイッターだけではなく、今後は“新たに”知事が直接都民へ「都庁窓口の閉鎖宣言や危機に対する呼びかけ」をすべきです。
このように例を挙げればきりがありませんが今後は、「裏付け数値を伴う精緻な現状把握をすること」「それを元に正しく課題を抽出すること」
「そのための適切な打ち手やその予算規模すなわち量の確保をすること」です。いわゆるPDCAサイクルを機能させた十分な補正予算案が提出されることを望みます。
また避難所にもなる学校の体育館への冷暖房設置についても早期に都の支援策を打ち出すとともに、あわせて再生可能エネルギーを活用した自立的な電源確保など、いざと言うときに機能する効果的な取組みも要望します。
■次に児童虐待です。虐待で苦しむ子どもを無くさねばなりません。同時に虐待をする保護者もまた無くさねばなりません。そのためには児童相談所の人員増・一時保護所・加害者更生プログラムの充実・事案共有などの体制整備に加え、あと何年でどのように実現していくかの具体的なロードマップ作りが急務です。条例や体制強化は児童虐待・虐待死ゼロのための“手段”であり“目的”ではありません。
知事は「待機児童ゼロ」「殺処分ゼロ」など重点政策を掲げています。その一方で「子どもの命が理不尽に奪われる虐待死についても「児童虐待死ゼロ」を知事が高らかに重点政策として宣言し、もうこれ以上1人として子どもを死なせてはならないとの強い覚悟を示すべきだ」と私たちは代表質問で知事に問いましたが明確な答弁はありませんでした。改めて悲惨な子どもの死を繰り返さぬよう知事自ら内外に向けて虐待死ゼロを宣言し、それに向けて総力で取り組むよう強く要望いたします。
また厚労省の専門委員会が目黒区での虐待死事件の検証結果を3日に発表し、改めて都と県の情報共有のあり方が指摘されましたが、今後は新たな課題として業務が区に移管される場合、「都と県」だけではなく、「都と区」や「区と区」との間での情報共有の問題も生じます。あらかじめ都が都内自治体内での情報共有の仕組みを整えておくよう提案します。
つぎに各議案です。
■まず第169号議案東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例です。2020大会の開催都市である東京がソチ大会やロンドン大会を教訓に、LGBTやヘイトスピーチに焦点を当て 条例を制定することは意義があると考えます。
しかし「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現を目指す条例」とする以上、LGBTとヘイトスピーチのみならず、都が人権施策指針で掲げている犯罪被害者・路上生活者・同和問題など17分類の人権課題が忘れられてはなりません。さらには議会質問では明確な答弁がありませんでしたが、この条例制定によって具体的に何がどう変わるのか今後は明確にすべきです。
「まず隗より始めよ」。中でもLGBTについては条例で示されたのは計画策定のみであり、都営住宅の入居での不当な扱いなど都の個別具体の課題は少なくとも都所管の事業であるわけですから、今後はまず都が率先して規範を示すことを要望します。加えて本条例に対し私たちが総務委員会で付帯決議案を出したように、「どのような言動が差別的言動に該当するのか具体的に例示すること」「都民の表現の自由を不当に侵害しないよう具体的措置を講じること」「差別的言動以外の表現活動が萎縮しないこと」などを求めます。
■次に第172号議案「東京都 都市整備局 関係手数料条例の一部を改正する条例」です。本条例案はいわゆるセーフティネット住宅の供給促進に向け、登録申請の負担感を無くし手数料をゼロにするものです。都は平成37年度までに3万戸の登録、32年度までには25以上の区市が居住支援協議会を設置することを目指していますが、実態は12区市に留まっています。またセーフティネット住宅の4万円の家賃低廉化補助も、30年度予算で10区市町村で各50戸を見積もっていますが、現在の実績はゼロです。
今回の条例改正だけでは供給の大幅増は見込めないことからこれを契機に、区市町村や不動産など関係団体に対しより積極的な働きかけを行うこと、
都営住宅の募集案内などの機会を捉えて必要とする都民に制度を周知することなど、住宅セーフティネットの取組みをより強化することを望みます。
■次に第176号議案「東京都 工業用 水道条例を廃止する等の条例」です。工業用水道事業は過去2度 包括外部監査で廃止を含めた 抜本的な経営改革が求められていた懸案事項です。長年放置され続けてきた工業用水の廃止を小池知事が決断されたことは率直に評価したいと思います。
また事業の廃止によって直接的な影響を受ける事業者や都民に対しては適切に支援策を講じていくことは言うまでもありませんが、一方でその支援策の原資となるのは都民の税金です。工業用水を利用しない他の多くの都民の理解も得られるよう丁寧な説明はもとより、支援策の実施に当たってはとりわけ中小・零細事業者への支援が重点化されるよう要望します。
さらには保有資産の可能な限りの売却をはじめ、配水管の撤去費用の徹底的な圧縮など、その影響が都民に及ぶことのないよう最大限の努力を求めます。
■最後に市場問題です。私たちが繰り返し求めてきた「安全宣言」を小池知事が7月の関係局長会議で行ったことは意義があったものと考えます。
しかしなお課題は残ります。その後も施設のひび割れやその公表の遅れなどにより市場関係者を不安にさせましたが、知事並びに市場当局は 地下水の適切な管理や速やかな情報公開など今後は豊洲市場の安全・安心に向けて万全を期すよう求めます。
また「築地を守る」とした知事の公約はどうなっているのでしょうか?今年度中に、都は築地再開発の方針を示す予定ですが、専門家会議の答申は不明瞭、抽象的なものに留まり関係者は不安を募らせています。今後は千客万来施設との整合性含め厳しく議会で確認してまいります。
また本定例会では東京都環境影響評価制度、いわゆる環境アセスの見直し概要が示されました。盛り土が無いことを環境局が見抜けなかった一因は、局が届け出を書面上のやり取りのみで対応確認していたことと考えます。見直し概要ではその仕組みが未だ改善されていません。年間申請数はわずか10件程度でもあり、今後はアセス対象の現地現場に実際に局が足を運び確認することを強く要望いたします。
■我々・都議会立憲民主党・民主クラブは、常に都民の目線に立ち、今後も小池都政に対し「いいものはいい、ダメなものはダメ」とチェック機能を果たしてまいります。また本定例会で付帯決議案を提出したように、批判批評だけではなく、具体的な政策提言で都民の皆様のお役に立つことをお誓い申し上げ討論を終わります。
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