立憲民主党から3つの意見書案を出すも他会派の賛同得られず
- 2025/03/28
- カテゴリー:都議会
2025年3月28日、都議会定例会が閉会しましたが、会期中に立憲民主党が提案した「高額療養費制度における自己負担上限額の引上げの凍結に関する意見書(案)」、「選択的夫婦別姓制度の法制化に関する意見書(案)」、「インボイス制度等の速やかな廃止に関する意見書(案)」は他会派との調整が整わず提出にいたりませんでした。
以下は意見書案の全文です。
◆高額療養費制度における自己負担上限額の引上げの凍結に関する意見書(案)
高額療養費制度は、治療が長期にわたる患者やその家族などの当事者にとり命綱であり、本来、制度め拡充を目指すべきである。
しかし、政府は制度を見直し、本年8月から3段階に分けて、自己負担上限額を引き上げる方針を決定した。
この引上げ方針は、当事者に甚大な影響を及ぼすもので、がん患者や難病患者などから、生活が成り立たなくなる、治療の継続を断念しなければならなくなるといった声が数多く上がった。こうした声を受け、政府は引上げの内容を修正し、「多数回該当」については、4回目以降の自己負担上限額は引き上げず、現行のまま据え置くと表明したが、それでも悲痛な声がやむことはなかった。
このような状況の中、石破首相は、本年8月からの引上げは実施した上で、来年度以降の在り方を本年の秋までに再検討する方針を表明したが、それでも悲痛な声がやむことはなく、本年8月からの引上げも見送ることになった。
現在、政府は本年の秋までに再検討するとの方針は堅持したままだが、制度の見直しは拙速に実行することなく一旦凍結し、適正な手続を経るべきである。
よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、高額療養費制度における自己負担上限額の引上げを凍結するよう強く要請する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
◆選択的夫婦別姓制度の法制化に関する意見書(案)
民法第750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定め、夫婦同姓を義務付けている。その結果、多くの女性が婚姻に際して改姓し、アイデンティティの喪失に直面したり、仕事や研究等で築いた信用や評価を損なったりするなど、様々な場面で不利益を被っている。
これらは「婚姻の自由」や「氏名の変更を強制されない自由」などの人権や憲法に関わる問題であり、国際社会からも女性差別撤廃条約や自由権規約に反するとの指摘を受けている。とりわけ、国連の女性差別撤廃委員会は、政府に対し、平成15年7月以降4回にもわたり、女性が婚姻前の姓を保持することを可能にする法整備を強く勧告している。
これに対し、政府は、旧姓の通称使用拡大の取組を進めているものの、令和3年9月30日開催の男女共同参画会議第3回計画実行・監視専門調査会配布資料において、旧姓の通称使用を拡大したとしても、例えば金融機関等との取引や海外渡航の際の本人確認、公的機関・企業とのやり取り等での困難は避けられないなど、7分野にもわたる旧姓の通称使用の限界について内閣府がまとめている。また、経済団体・労働団体等の各種団体からも、旧姓の通称使用は企業にとってビジネス上のリスクであるとする意見等が述べられている。さらに、日本経済団体連合会の会員企業の女性役員を対象にした令和6年の調査においては、旧姓の通称使用が可能な場合でも、何らかの不便さ・不都合、不利益が生じると回答した女性役員の割合は88%にも上っている。
この問題の根本的な解決のためには、夫婦の姓に関し選択肢を設ける法制度の導入が必要であるが、法務大臣の諮問機関である法制審議会において、選択的夫婦別姓制度の導入などを含む民法の一部を改正する法律案要綱が答申されてから、既に四半世紀以上が経過しているにもかかわらず、国会での 議論は依然として進んでいない。
よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、選択的夫婦別姓制度を法制化するよう強く要請する。
立ミ
◆インボイス制度等の速やかな廃止に関する意見書(案)
令和5年10月、複数税率に対応した仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式(以下「インボイス制度」という。)が導入された。
この制度においては、適格請求書(以下「インボイス」という。)の発行事業者ではない事業者からの仕入れでは税額控除をすることができない。そのため、主に小規模事業者や個人事業者である免税事業者は、取引先からインボイスを求められても、発行することができず、不当な値下げや取引の打切りを求められるおそれがある。また、インボイスの発行事業者になると、消費税の申告・納付が義務付けられ、税負担と事務負担の二重の負担を負うことになる。
制度の導入に当たっては、インボイスの発行事業者になった場合に令和5年10月1日から3年間は納税額を軽減するなどの税制措置や、税務署における相談体制の構築などの事業者支援措置が講じられてきた。
制度の導入から1年以上が経過したが、これらの負担軽減策は不十分であり、小規模事業者などからは、減収や税負担の増によって経営状況が悪化したとの切実な声が上がっているほか、インボイスに係る経理事務が過大な負担になっているとの訴えも噴出している。
エネルギー価格や原材料費等の高騰も長期化し、人材不足が深刻化する中で、経営環境は一層の厳しさを増しており、インボイス制度に係る負担を小規模事業者などに求めることができる状況にはない。
インボイス制度の導入後の小規模事業者などの苦境や昨今の経営を取り巻く環境に鑑みれば、国の支援措置の拡充だけではもはや不十分であり、小規模事業者などの経営の持続化や都内における経済の活性化の重要性を考えると、今やインボイス制度そのものを廃止することが最良の策であると言わざるを得ない。
また、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」によって、契約書などの電子データを一定の形態で保存することなどを義務付ける電子帳簿等保存制度は、特に小規模事業者などからは、事務が余りにも煩雑で、事業活動に支障が生じかねないとの声が上がっている。
よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、事業者に過度な負担を与えるインボイス制度及び電子帳簿等保存制度を速やかに廃止するよう強く要請する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
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