2020/03/16 住宅の震災対策、高齢者の居場所、空き家対策を質問しました
3月16日、都議会の都市整備員会に出席し、住宅政策本部の来年度予算案、条例案、報告事項について質疑を行いました。マンションの耐震化促進、高齢者の居場所づくりと見守り、空き家対策、都営住宅と人権施策について質問しました。暮らしに欠かせない住まいについての課題について議論しました。
○中村委員 それでは、住宅政策本部への質問として、最初にマンション管理について伺います。
先日の委員会で、今年度の最終補正予算の質問で、耐震改修及び設計が当初見込みの三千戸を上回る三千四百一戸だったとの答弁がありました。ただ、棟数ではなく戸数による目標と実績だったので、予算としては大幅に減額補正をすることになりました。
そこで、まず最初に、来年度の予算と当初見込み数について伺います。あわせて、達成に向けた対応策について伺います。
○栗谷川民間住宅施策推進担当部長 来年度の耐震改修助成事業といたしまして三千戸を見込み、予算額は一億六千二百万円を計上してございます。
マンション耐震化促進事業に加え、マンション耐震化サポーター派遣事業等により、区分所有者間の合意形成を支援し、耐震化を促進してまいります。
○中村委員 ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。
さて、昨年三月に一部施行されたマンションの適正な管理の促進に関する条例について伺います。
ことしの四月一日に、マンション管理組合の届け出に関する部分も施行となり、これで完全施行となります。現在の耐震基準となる一九八一年六月一日以前に新築された旧耐震マンションについても届け出が義務化されます。条例で罰則はないとはいえ義務化されるので、ある程度の期間はかかるとは思いますが、履行されるようにしなければなりません。
現在、東京マンション管理・再生促進計画の策定を進めていますが、届け出の目標は五年後の二〇二五年度で八〇%とのことです。届け出から都の施策も始まるのでしょうから、この二〇%が今後課題になっていく可能性が高く、その点では早く一〇〇%にすることが重要です。
目標が少し控え目ではないかと考えますが、理由を伺います。
○栗谷川民間住宅施策推進担当部長 本計画の成果指標である五年後の八〇%の届け出率につきましては、同様の届け出制度を先行して実施している豊島区におきまして、制度施行後五年間で七割程度の届け出率であったことなどを参考に設定したものでございます。
都のマンション管理条例では、正当な理由なく届け出がない場合について、マンションの管理組合または区分所有者等の協力を得て、当該マンションに立ち入り、書類その他の物件を調査することができることとなっております。
管理組合や区分所有者等の協力や理解を得ながら、成果指標の届け出率の達成を目指すとともに、さらなる届け出率の向上に向けて、粘り強く取り組んでまいります。
○中村委員 策定中の計画では、旧耐震基準のマンションの耐震化の促進として、耐震診断の実施率は二〇一一年度末で一七%、二〇二五年度末で一〇〇%となっています。
二〇一一年度以降、正確な状況を把握していないようであり、また、先ほど届け出の目標が八〇%ということでしたが、耐震診断が一〇〇%になることをどのように把握するのでしょうか。目標を達成することは望ましいのですが、どのような施策をもって一〇〇%を達成するのか、あわせて伺います。
○栗谷川民間住宅施策推進担当部長 この四月からの届け出制度では、耐震化の状況についても届け出事項としております。このため、五年後の耐震診断の実施率につきましては、管理状況届け出システムや届け出内容等により測定することとしており、届け出を契機として、管理組合へのアドバイザー派遣事業やサポーター派遣事業による耐震診断の実施を働きかけることにより、おおむね一〇〇%の達成を見込んでございます。
また、届け出がない場合につきましては、先ほどの答弁のとおり、条例に基づく調査権を活用しながら、届け出とあわせて耐震診断が実施されるよう、管理組合等の協力や理解を得ながら、粘り強く取り組んでまいります。
○中村委員 今ご答弁あったんですが、届け出システムや届け出内容等により測定するということなので、届け出が出たものを見て、一〇〇%ということなんでしょうから、実際には、先ほど五年で八〇%ということであれば、その八〇%の中で一〇〇%であれば、全体でも八〇%じゃないかという思いもないわけでもありません。
耐震化を進めたいということですから、これは数字の見方だけかもしれませんけれども、ぜひもう少し、二〇%の部分が大変だというお話を先ほどさせていただいたんですが、しっかりとその届け出を早目に済ませていただくことと、この数値の一〇〇%ということの数字だけで満足することなく、いち早く耐震化を進めていただきたいというふうに思います。
さて、マンションの老朽化、そして、そこに住む方々が高齢化をしていくため、合意形成が困難となり、耐震化や建てかえは大変大きな課題ともなります。たびたび指摘をしていますが、都は、緊急輸送道路の沿道建築物について耐震診断を義務化し、耐震化を努力義務化し、大幅に補助したにもかかわらず、当初の予定に比べて大幅におくれています。通常、マンションの耐震化はもっと難しく、より一層の取り組みをしなければ進みません。
マンションは民間建築物ですが、緊急輸送道路沿道のように公益性がないから規制できないというなら、なぜ補助金を出すのかということになります。
私は、緊急輸送道路沿道ではなくても、一戸建てに比べると規模が大きく社会的責任があるから補助もするし、だからこそ一定の規制をしていくべきと考えますが、改めて見解を伺います。
○栗谷川民間住宅施策推進担当部長 マンションは、地震による倒壊等があった場合、周辺地域にも大きな影響が及ぶ上、合意形成の難しさから、その再建には困難を伴い、復興の障害となるおそれもあるため、耐震性が不足するマンションにつきましては、耐震改修や建てかえ等を行うことが急務でございます。
これまで、都内に約一万二千棟ある旧耐震基準のマンションを対象にマンション啓発隊による個別訪問を実施するなど、管理組合に対して助言等を行うとともに、区市と連携して、耐震アドバイザーの派遣や耐震診断及び改修等の助成制度の活用を促しております。
また、昨年度からマンション耐震化サポーター派遣事業を開始し、今年度からは耐震化の助成制度を拡充してございます。
マンションの耐震化を促進するためには、所有者みずからが主体的に取り組めるよう、管理組合の合意形成に向けた働きかけが重要でございます。この四月から始まる管理状況の届け出により把握した耐震化の状況に応じ、助成制度の案内や耐震化サポーター派遣等を働きかけるなど、今後とも、管理組合の合意形成に向けた取り組みを支援していくことが必要と認識してございます。
○中村委員 規制ということまではしないようですが、条例を制定するということも一つの契機になるかと思いますので、ぜひとも広報等しっかりとしていただきたいというふうに思っています。
さて一方、災害時のマンションの存在というのは、地域において大きいと思います。都市型水害などの際には、高層建築物に緊急避難することが必要になる場面もあります。また一方では、高層建築物になると建築物周辺に空地があったり、また、広いエントランスやスペースがあるため、住宅密集地域においては周辺住民が緊急で逃げ込める余地もあります。
高層で得られる眺望は、一方では周辺の日照や景観が失われることにもなりますので、だからこそマンションそのものも地域の中にあり、つながりがあってもよいと思います。
災害時の避難場所としての地域での一定の役割を果たすことが支援の理由になると思います。
災害時の対応や、可能であれば地域との日常的な交流の場としての活用など、こうした良好な交流関係を築けるよう都が働きかけをしていくことが必要と考えますが、見解を伺います。
○栗谷川民間住宅施策推進担当部長 マンションの居住者と周辺の住民との防災、防犯等における連携を進めることは、都市における良好なコミュニティの形成を図る上でも、また、災害への対応においても大変有効でございます。
このため、マンションの社会的機能を高める取り組みについて、この三月に改定するマンション管理ガイドブックなどにより普及啓発を図っていくことが重要であると認識してございます。
○中村委員 空き家の問題が戸建てで発生していますが、マンションでも、今後、空き家問題が発生しかねません。ひとり暮らしで相続人がないまま亡くなられる場合、建てかえの経費を含めると資産価値が赤字の場合には相続放棄などがある場合、また、所有者がはっきりしていても資産価値がなく放置されてしまう場合などが考えられます。そうなると、より一層合意形成が図れなくなります。
分譲マンションにおける空き家問題はどう対応するのか伺います。
○栗谷川民間住宅施策推進担当部長 国が平成三十年度に実施いたしましたマンション総合調査によりますと、古いマンションほど空き住戸の割合が高くなる傾向にございます。
また、居住者の高齢化が進んだマンションでは、将来、相続後に利用されず放置される可能性があるなど、管理上の問題を生じる懸念がございます。
このため、都では、弁護士による専門相談や、昨年九月に開設いたしました分譲マンション総合相談窓口におきまして、マンションの状況に応じた相談を受け付けております。
また、改定するマンション管理ガイドブックにおきまして、住戸が相続されない場合の対応について記載するなど、マンションの空き家問題に対する意識向上を図ってまいります。
○中村委員 策定中の計画の参考資料に、都のマンション実態調査結果が掲載されています。その中で、耐震診断や耐震改修を検討しない理由として、費用がないという回答が最も多くなっています。これは、合意形成が図れない理由でもあるのでしょうし、合意形成はできても実行できないということもあると思います。
修繕積立金の設定は住民が行うことですが、適切な段階から積み立てをしていくよう、住民への情報提供、管理組合への指導等も重要ですが、見解を伺います。
○栗谷川民間住宅施策推進担当部長 修繕積立金の重要性や積み立て方法等について、管理組合向けに普及啓発を図っていくことは重要であり、これまでもマンション耐震セミナーの開催や東京都マンションポータルサイトを通じた情報提供を行ってまいりました。
また、改定するマンション管理ガイドブックでは、耐震診断や耐震補強の実施時期を大規模修繕工事に合わせることが経費などの面において有効であり、それに伴い長期修繕計画や修繕積立金を見直すことが重要である旨、紹介してございます。
こうした取り組み例を示すことで、引き続き耐震化を促進してまいります。
○中村委員 今、マンションの管理について、また、耐震化について質問させていただきましたが、本当にこれから先々、東京におけるマンションの耐震化等の課題というのは、ますます大きくなっていくと思いますので、ぜひ早目早目、先手先手に手を打っていただきたいというふうに思っています。
また、こういった耐震化の問題、災害対策という問題でいうと、マンションだけではないんだろうというふうに思っています。
先日も、三・一一東日本大震災から九年目を迎えたわけですけれども、改めて、引き続き東京都の課題としては、災害の対応というのは最も大きな課題の一つになるかと思っています。
そこで、昨年度の予算について計上されていた項目なんですが、大学提案ということで二千七百万円が、首都直下地震時の仮設住宅不足への対応準備についてということがありましたので、この点を伺います。
首都直下地震時に想定される仮設住宅の不足に対して対応準備する事業とのことですが、昨年十月に会議をやったようですが、具体的にどのような成果が出たのでしょうか。住宅審議会においても、被災後の都民の居住確保として、資料には掲載されていますが、具体的な動きは見えません。
大学提案や都民提案の予算の執行率には高くないものもあるようですが、本事業について、これまでの成果と今後どのように展開していくのか伺います。
○澁谷住宅政策担当部長 首都直下地震時の仮設住宅不足への対応準備事業は、専修大学の佐藤教授の提案を受けまして、平成三十一年度の大学提案事業として採択されたものでございまして、大規模地震時における仮住まいの確保のため、自助、共助、公助の観点からの平時の対応策につきまして、都民等への意識啓発や行政に対する提言を行うことを目的としてございます。
これまで、学識経験者等から成る東京都防災・仮住まい検討会を四回、都民や都内勤務者などからご意見を伺うワークショップを都内各所で六回開催するなど、主に自助、共助の観点から、提案者と連携して事業を着実に進めているところでございます。
今年度の成果といたしまして、年度内に、発災から仮住まい、復興までの流れや支援制度などを示すとともに、都民等に対しまして、平時からの備えを促すための都民向けリーフレットを作成する予定でございます。
来年度は、タウンミーティングの開催などにより、リーフレットを活用しながら、都民等に自発的な防災対策や災害後の行動を啓発するとともに、引き続き検討会を開催いたしまして、仮住まいの確保につきまして、主に公助の観点から提言を取りまとめていただく予定でございます。
その後、提言を踏まえまして、都として必要な施策を展開してまいります。
○中村委員 具体的な話はまた来年度ということではあるんですけれども、被災後の都民の居住確保というのは大変重要なことでございますので、引き続き取り組んでいただきたいと思います。
次に、来年度予算に新規事業として東京みんなでサロンを新設し、都営住宅の集会所等を活用し、都営住宅や地域の高齢者等に食事を提供するため、三千二百万円が計上されました。これは、都民による事業提案制度として三百十七票獲得して実現したようです。
昨年の事務事業質疑では、都営住宅の集会所は貴重であり、地域に活用して交流を図ってはどうかとの提案をしましたが、居住者のためのものなので、自治会と町会の協議が調えば開放するとのことでした。
この事業は、中身だけでいえば福祉保健局かもしれませんが、都民の提案は、あくまで都営住宅の集会所を活用してということであり、集会所をもっと活用したいと多くの都民も思っているということだと思います。
未来の東京戦略ビジョンで、二〇三〇年に千カ所を創出するというみんなの居場所創出プロジェクトの一環として、百カ所を設置するとのことです。
事業の内容そのものはよいのですが、都営住宅だけではなくて周辺住民も参加できるのか、集会所の利用について自治会とどのように調整するのか、来年度は二カ所のみの立ち上げということのようですが、どのような内容なのか伺います。
○土屋経営改革担当部長 来年度、都営住宅の集会所等を活用いたしまして、居住者や近隣の方々が交流を深めることができる事業として、東京みんなでサロンを実施することといたしました。
実施に当たりましては、集会所の日常管理を行う団地自治会の協力を得ながら、利用日時等について調整するほか、地域の町会や地元区市と連携して、地域のニーズに合ったイベント等も工夫して、早期にモデル事業を開始することとしております。
今後、地域活動を担う団体や社会貢献事業に取り組む民間事業者などが行っているコミュニティ活性化の取り組みを生かしつつ、地域を変えて数カ所で行い、それぞれの地域の実情に合わせた居場所づくりにつながるよう工夫を凝らし、実施、検証してまいります。
○中村委員 都営住宅の集会所というのは、地域にとっては貴重な居場所になっていくんだと思っています。もちろん、管理しているのは団地の自治会ということになるかもしれませんが、団地の住民だけのものということよりも東京都の施設だと思いますから、都民の共有財産として幅広く使えるようにしてはというふうに思います。せっかくこうした新しい事業があるわけですから、このことを通じて、こういった団地の自治会の皆さんと地域の町会、周辺の皆様と、より交流が深められるような事業にしていただければということを要望いたします。
さて、次に、昨年五月の東京都の住宅政策審議会の答申によると、東京における高齢化は急速に進行しており、都営住宅の高齢化も著しいとの認識が示されました。こうした状況から、大変残念ながら孤独死をされる方もおり、高齢の居住者の方々へのサポートは重要な課題であると思います。
そこで、現在、都では、都営住宅における高齢者世帯サポートにどのように取り組まれているのか伺います。
○土屋経営改革担当部長 高齢者世帯をサポートするため、指定管理者である東京都住宅供給公社では、巡回管理人制度を実施しておりまして、希望する六十五歳以上の世帯に対して定期的に訪問し、日常的な相談を受けるほか、各種申請書類の取り次ぎなどを行っております。平成三十年度は、約一万七千世帯を対象に、九十一人の巡回管理人が延べ約二十万回訪問いたしました。
また、高齢者世帯の安全を確保するため、公社のお客様センターで、二十四時間三百六十五日受け付け可能な連絡体制を整備し、居住者の緊急時の安否確認を実施しております。
さらに、平成二十四年度からは、安否確認時に、より迅速な情報収集及び入室確認等を行うことを目的としまして、現在、三十七区市町との間で安否確認に関する協定を締結し、連携の強化に取り組んでおります。
この安否確認により、平成三十年度は、公社が警察立ち会いのもと入室して、百三十件の救急搬送につながっております。
今後とも、高齢者世帯のサポートに取り組んでまいります。
○中村委員 今お答えがあったように、一万七千世帯で二十万回訪問ということになりますと、大体一世帯につき年間で十回ぐらいの訪問だというふうに思っています。これは見守りではなくてサポートということですので、この回数なのかもしれませんけれども、できればこういった回数がもっとふえていった方がよろしいかと思いますので、ご検討いただきたいと思います。
そういった意味では、来年度の予算のところで、大学研究者による事業提案制度として、都営住宅による単身高齢者の見守りシステムの構築として三千百万円が計上されました。
AIを活用してとはいえ、これまでも、電気量を検知して安否確認をするものは可能であったのかとは思いますが、今回どのような点が特徴であり、どのように展開をしていくのか伺います。
○土屋経営改革担当部長 本プロジェクトは、ICTを活用いたしまして、都営住宅の巡回管理人による見守りのサポート強化を図ることを目的としております。
そこで、都営住宅におきまして、単身高齢者世帯十から四十世帯程度の協力をいただきまして、メーターボックスにスマート化された電力計と室内のエアコンに温度計を設置いたします。
この電気量データとエアコンの利用の有無をAIで判断し、異常となるデータが検出された場合、公社の巡回管理人等に通報するという見守りシステムを構築し、モデル実施をしてまいります。
まずは、本プロジェクトの中で、単身高齢者の見守りシステムとしての信頼性や汎用性について確認しまして、その後、具体的な展開について検討してまいります。
○中村委員 次に、都営住宅ではないんですが、同じ見守りという点で伺いたいというふうに思っています。
セーフティーネット住宅、住宅要配慮者に対する住宅の方においても、来年度の新規事業として見守り機器の設置費用補助ということで、モデル事業として二百戸を対象として行うとのことです。
改めて、まず、この内容について伺います。
○栗谷川民間住宅施策推進担当部長 見守り機器設置費等補助につきましては、セーフティーネット住宅の貸し主に対しまして、居室内に設置する見守り機器の購入費及び取りつけ費の二分の一を、戸当たり三万円を上限として補助するものでございます。
本事業と現在行っております見守りサービス支援モデル事業により、高齢者の入居に伴う貸し主の不安を一層軽減し、セーフティーネット住宅の登録促進を図ってまいります。
○中村委員 セーフティーネット住宅の登録がまだまだ進んでいないというところもあると思いますので、こういったこともひとつ活用しながら促進していただきたいということは思っております。
今、都営住宅にしても、セーフティーネット住宅についても、見守りということについて質問させていただきました。見守りそのものということは地域福祉なのかもしれませんが、住まいは最大の福祉でもあり、高齢化に伴う住まいの政策と見守りの問題は、一体化をしてもよいと考えています。
今年度から住宅政策本部ができましたが、ハードの都市整備局との一体性という点ではいろいろと賛否があったと思いますが、独立した組織になった以上は、住まいを中心として、人に焦点を当てたソフト面での政策も重点化していくことができるかと思っています。
先ほどから質問しましたが、そもそも見守りを想定したサービスつき高齢者住宅や、都営住宅での見守りが政策として進められています。
しかし、経済的事情や抽せんに当たらずそれらに入りたくても入れない人で、生活保護でない場合はそうした見守りサービスはありません。セーフティーネット住宅で見守りを始めるようですが、まだまだ十分な数でもありません。
さまざまな住宅の種別で、見守りが受けられたり受けられなかったりしますが、希望している高齢者単身の世帯には、例えば高齢者だけの世帯においては、どのような住まいの種類かにかかわらず受けられるようにするような制度を構築すべきとも考えますので、今後、ご検討をお願いしたいと思っております。
さて、次に空き家対策について伺います。
住宅マスタープランの政策目標では、計画を策定する市区町村の数を二〇二四年度末までに八〇%以上にすることだけでしたが、さきに策定された戦略ビジョンでは、その他空き家の住宅総数に占める割合が、二〇一八年度二・三五%を、二〇二五年度では二・三一%として、これ以上ふやさないとしています。
確かに、少子高齢化とはいえ、地方に比べれば都は人口が減らず、また、ひとり暮らしの高齢者の増加や若者の晩婚化により世帯構成が変わり、世帯数は減ってはいません。
しかし、都心での超高層マンションの建設や宅地開発による新規物件の出現で、老朽化した住宅は空き家となり、空き家を減らさないということは大変困難ではあります。
空き家の活用という点では、居場所づくりや防災倉庫などの活用は重要ですが、全体の数からすればわずかです。
来年度、民間空き家対策東京モデル支援事業が行われますが、件数はわずかです。どのような効果があるのか伺います。
○澁谷住宅政策担当部長 空き家対策は、地域の実情を把握している区市町村の役割が重要でございまして、都はこれまでも、区市町村に対しまして財政支援等を行ってきてございます。
一方、都内には、NPO等多様な民間主体による空き家の利活用や発生抑制等に資する取り組みが見られまして、広域的見地から、こうした取り組みを促進していくことも有効と考えられます。
そこで、都におきましては、区市町村支援に加えまして、来年度から民間事業者等に直接、補助を行い、空き家予備軍対策や5G等先端技術を駆使した空き家対策など、重層的に空き家対策に取り組む予定でございます。
効果といたしましては、支援したモデル的な取り組みを他の民間主体に波及させることで、利活用や発生抑制に資するさまざまな空き家対策が促進されるようになることを見込んでございます。
○中村委員 来年度の取り組みについてご説明をいただきましたが、空き家をふやさないとはいえ、コンパクトシティーとして都心や駅前の開発を続ければ、周辺や駅から遠い場所は空き家になってしまう可能性があります。空き家は、核家族化と高齢者のみの世帯が多くなり、相続が発生すると親の住まいがそのまま空き家になってしまいます。駅から離れていると、住めない、貸せない、売れないとして空き家になります。場合によっては、既存不適格で建てかえができない場合も空き家になります。
空き家の割合をこれ以上ふやさないという目標をどのように実現するのか伺います。
○澁谷住宅政策担当部長 都が取り組む空き家対策は、空家等対策特別措置法に基づきまして、都民の生活環境の保全や空き家等の活用を図ることなどを目的としてございます。
この達成のために、昨年十二月に策定された未来の東京戦略ビジョンでは、新たに、その他空き家と称しております長期不在、取り壊し予定等の空き家の住宅総数に占める割合を政策目標として掲げました。
総務省の平成三十年住宅・土地統計調査結果によりますと、都内のその割合は、都道府県では突出して低い二・三五%でございます。
その他空き家は、一般に管理が行き届かない可能性が高いことから、この新たな目標は、その値を過去二十年間の平均水準以下に保つことで住宅市街地の環境を維持することを目指すものでございます。
この実現のために、今後、空き家の適正管理、有効活用、発生抑制等の基本的な取り組みを区市町村と連携して一層強化するとともに、福祉分野等との連携や民間のノウハウ等も最大限に生かしながら、空き家対策を加速してまいります。
○中村委員 幾つか、都が関係している空き家セミナー等も出させていただいたんですが、非常に多く関心があって参加されていらっしゃる方もいらっしゃいます。より一層こうした取り組みをこれからも進めていただきたいと思っております。
さて、最後に、都営住宅の入居について伺わせていただきます。
二〇一八年十月、東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例が制定されました。その第三条には、都は、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別の解消並びに性自認及び性的指向に関する啓発等の推進を図るものとするとあります。いわゆるLGBTの方々への差別をなくすよう取り組むことになりました。
そして、昨年十二月に、条例に基づいて策定された東京都性自認及び性的指向に関する基本計画に期待をしていました。
計画では、当事者は、住宅の入居に当たって差別的な取り扱いを受けたり、周辺への理解が得られず、苦労するケースがありますと問題の認識をしています。そして、民間の住宅については、LGBTの方を住宅確保要配慮者として位置づけ、民間賃貸住宅への円滑な入居等が行えるよう、セーフティーネットの登録を促していますとお願いをしています。
しかし、都みずからが運営する都営住宅において、人権を取り巻く社会の動向等を踏まえ、管理制度等における取り扱いについて検討していきますのみでした。局が違うとはいえ、都が差別をなくそうとした条例をつくったのに、都みずからがその差別を解消しようとしないことは残念です。
世田谷区や渋谷区のように、証明書があれば入居できるとすれば、どの自治体に住むかで都のサービスに差が出てしまうので、一律に入居可能な制度をつくるべきです。
榎本本部長は、前のお仕事は総務局の次長として条例制定にかかわりましたので、大きく期待をしています。条例の趣旨に鑑み、LGBTなどの同性パートナーの方も都営住宅に入居できるようにすべきと考えますが、お伺いします。
○土屋経営改革担当部長 都営住宅では、使用者の資格の一つとして、東京都営住宅条例で、現に同居し、または同居しようとする親族があることと規定しておりまして、入居の際、親族関係については住民票により確認しておりますが、同性パートナーについては、親族関係の記載がないため入居資格を確認できません。
今後、東京都性自認及び性的指向に関する基本計画を踏まえ、他の自治体における動向や課題等を調査するなど、都営住宅の管理制度等における取り扱いについて検討してまいります。
○中村委員 都として条例をつくったわけですから、これは局をまたぐということなのかもしれませんけれども、ぜひこれは進めていただきたいと思っています。
逆にいうと、本当にこれはトップの判断が、知事がもっと、こういった条例をつくったことで指示を出していただければというふうには思うんですけれども、こういった多様性を尊重する時代でもあり、排除ではなく共生の社会へと進んでいくためにも、こういった制度の促進ということをぜひ進めていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。
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