【7】2011/06/15 看護師不足の解消について質問
2011年6月15日、東京都議会 厚生委員会において都民から提出された「看護師等の大幅増員と夜勤の改善で安全・安心の医療・介護を実現することに関する請願」に関して質疑を行いました。以下に質問と答弁を掲載します。
〇中村委員 看護師等の大幅増員と夜勤の改善で安全・安心の医療・介護を実現することに関する請願について質問します。
請願者によれば、看護職員等の労働環境は厳しさを増し、離職者も多く、深刻な人手不足となっているとしていますし、そのような報道がされることもよく目にします。労働時間の問題は、国の労働基準監督行政の役割とはいえ、適法な勤務時間内であっても人員不足を要因とした質の低下がないのか懸念されます。
そこで看護職員の不足をどう解消するかは、都民の生命と安全を守る上での医療福祉政策上の課題でもあり、都としてどのようにこれに取り組んでいくのかという観点から質問を行いたいと思います。
東京都は、昨年度、平成二十三年から二十七年までの看護職員の需給見通しを策定しました。これによれば、平成二十三年は二千六百二十三人の看護職員が不足しているとのことになります。この数値だけを見れば、医療現場でこんなにも不足しているのかという感じを受けますが、都としてはこの数値をどう見ているのでしょうか。今後の都の看護職員対策は、この推計が基礎になるわけですので、そもそもこの推計はどのようにして行われたのか、まずお伺いします。
〇中川原医療政策部長 都は、昨年度、実効ある効果的な看護職員確保対策を展開していくための基礎資料といたしまして、看護職員需給見通しを策定いたしました。各年の需要数の推計は、医療、福祉施設の施設管理者の意向調査の結果や既存統計等に基づきまして、就業場所別に積み上げて算出いたしました。供給数の推計は、年当初就業者数、新卒就業者数、再就業者数の合計から退職者数を差し引いて算出しております。
具体的な人数を申し上げますと、平成二十三年は、需要数十一万五千四百六十二人に対しまして、供給数は年当初就業者数十一万一千二百十七人、新卒就業者数五千二百三人、再就業者数一万四千三十六人、退職者数一万七千六百十七人で、合計十一万二千八百三十九人であり、差し引き二千六百二十三人の不足となってございます。
〇中村委員 施設管理者や統計等に基づく積み上げの数字ということですが、労働監督行政の視点では医療サービスの質は見ないわけですから、東京都として医療サービスの質に問題ないのか、あわせて注視をしていただきたいと思います。
さて、看護職員の需給見通しによれば、今後、看護師の確保を進めて、平成二十七年には需要と供給ともに十二万五百七十五人になると推定していますから、その時点で数値上は不足の解消が図れることになります。とはいえ、七千七百三十六人もの看護師確保は大変なことだと思います。これを着実に進めて需給均衡を目指していく上で、どのような取り組みを行うのか、課題は何だと考えていますか、お伺いします。
〇中川原医療政策部長 都は、これまで、養成対策、定着対策、再就業対策を柱に総合的な看護職員の確保対策に取り組んでまいりました。
養成対策につきましては、少子化により若年人口が減少傾向にあることから、今後、大幅な増加を期待することは困難な状況でございます。今後は、教育、研修体制の整備などの定着対策や、資格を持ちながらも就業していない、いわゆる潜在看護師等の再就業対策を強化していくことが重要というふうに考えております。
〇中村委員 先ほどの需給見通しの推計では、毎年約一万八千人がやめていくとの話でした。やめる人の中には、再就職、つまりは転職者も含まれた数値とはいえ、全体の一割以上の方が何らかの形で移動するという流動性の高さには驚きます。ここ数年、離職率は低下傾向が続いているようですが、結婚、出産、育児を機にやめる人も多く、常にその対策は考えなければなりません。
現場の看護師が仕事を続けられるよう支援するために、総合的な看護師確保対策を行うことが必要だと思います。今後、どのようにして離職防止、定着対策を進めていくのか伺います。
〇中川原医療政策部長 看護職員の離職防止と定着促進のためには、新人期の支援と、結婚、出産、育児のライフイベントにおける支援を強化する必要があるというふうに考えております。
新人期には、看護基礎教育と臨床とのいわゆるリアリティーギャップの解消や、看護の質の向上に向けた新人研修体制の整備を進め、新人職員の早期離職防止を図る新人看護職員研修体制整備事業を実施してまいります。
結婚、出産、育児などにおけますワークライフバランスのための支援といたしましては、東京都ナースプラザの就業協力員を二次保健医療圏ごとに配置いたしまして、短時間正職員制度など多様な勤務形態の導入や、研修体制の充実など、看護職員が安心して働き続けることができるための環境整備について指導助言を行ってまいります。
また、東京都ナースプラザにおきまして、医療の高度化や看護サービスの多様化に対応するための知識、技術に関する研修を実施し、臨床能力とモチベーションの維持向上を図っていくと、こうした取り組みによりまして看護職員の定着促進を進めてまいります。
〇中村委員 育児による離職の防止、定着対策として、二十四時間保育が可能な保育園の充実が必要になります。もちろん、預けられる子どもの立場からいえば大変なことですし、院内保育についても、住まいと職場の距離を考えると実態と合わない部分もありますが、それでも必要な人が預けられるよう設置する病院への支援の拡充をお願いします。
もう一つ、看護師不足を解消する上でぜひ考えなければならないのが、都内にいる約五万人の潜在看護師の活用です。せっかく取得した資格を生かすことができないのは、本人にとっても、社会にとっても残念なことです。出産や育児などでやむを得ず離職しても、できる限り早く、スムーズに現場に復帰できるよう支援することで看護師不足はかなり緩和されるのではないでしょうか。都の再就業支援の取り組みについて伺います。
〇中川原医療政策部長 離職している看護師等を潜在化させることなく、再就業へと結びつけていくためには、再就業支援研修と就業相談を受けられる地域確保支援事業を実施してまいります。
また、無料職業紹介所でございます東京都ナースプラザで、看護師等の再就業相談及び就業あっせんについても着実に実施してまいります。
〇中村委員 ご答弁ありがとうございました。今後、社会全体の動向にもよりますが、在宅医療が進めば、訪問看護の分野で活躍する看護師が、今の推計を上回る人数、必要になるかもしれません。いろいろな動向を見ながら施策の拡充をお願いします。
また、平時において看護師が不足するとすれば、震災発生時には深刻です。一度離職してしまうとなかなか現場に戻るのは大変だとはいえ、災害時などにおいては、一般の資格のない人に比べればはるかに活躍することができると予想されます。もちろん政策の最優先事項は離職された方の現場への復職ですが、仮に復職できなくても、災害時に備えて年に一度でもいいので災害対策用の講習や、いざというときに動ける離職中の看護師を人材バンクとして名簿を備え、災害時に協力要請するなど、災害対策も検討してほしいと思います。今後の都の看護師不足解消に向けての施策の促進をお願いして、質問を終わります。
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