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都議会質問記録

【10】2011/06/28 震災時の人工透析患者への対応と、高齢者の熱中症対策について質問

2011年6月28日、東京都議会 厚生委員会において、議案審議と報告事項への質問が行われ、震災時の人工透析患者への対応、高齢者の熱中症対策について東京都 福祉保健局に質問しました。以下に質問と答弁の概要を掲載します。

1.震災時の腎臓病患者の透析についての対応について

〇中村委員 三月十一日の東日本大震災以降、福祉保健局の皆様も不眠不休の対応が続いたと聞いており、深く敬意を表します。
 まずは、その震災への対応についての報告事項に関して質問します。
 厚生委員会に提出された報告書には、都が人工透析患者等三百九十九名を、日本青年館ホテル等で受け入れたとありました。今回、福島県いわき市等から、透析ネットワークを通じて都内に避難され、透析を受け、都の職員の皆さんも、受け入れ準備から送り出しまで大変なご苦労があったと聞いています。
 そこでまず、都がどのような支援を行ったのか伺います。

〇前田保健政策部長 三月十六日に、震災により医療機関のライフラインの寸断等によりまして、透析医療機関が受けられなかった患者さんの方々で、都内の医療機関では治療が確保された方につきまして、東京都医師会及び透析医療ネットワークから、東京に対して緊急の要請があったため、宿舎等の手配を行ったところでございます。
 三月十七日には、三百九十九名の透析患者及び家族が東京に到着されましたが、患者様の大半が高齢で、また、介助が必要な方が多かったため、急遽、通院手段を確保いたしますとともに、都立看護学校の教員、生徒にボランティアを依頼いたしまして、日常的な介護を支援したところでございます。

〇中村委員 都が直接、透析患者向け避難所の運営に協力するということは想定されていなかったようですが、今回の経験をもとに、今後につなげる部分もあると思いますので、幾つか伺いたいと思います。
 まずは、透析ネットワークを経由せずに避難してこられた透析患者さんについては、どのように把握をしているでしょうか。また、他の避難所や親戚などを頼って避難した方々で、医療機関への送迎等の支援を受けられた方はいるのでしょうか。また、そのための周知はどのように行ったのかを伺います。

〇前田保健政策部長 都が設置いたしました避難所におきまして、保健師が健康相談等を実施し、避難者の健康状態を把握しておりましたが、避難所におきましては透析患者さんはおられませんでした。また、親戚などを頼って避難してきた方々につきましては、被災自治体からの情報提供もなかったため、把握しておりません。
 このたびの支援は、親戚などを頼ることができず、自力での避難や医療の確保が困難であった透析患者様方につきまして、透析医療ネットワークが都内医療機関での治療を確保したため、都が緊急的に宿舎等を提供したことでありまして、透析治療を受けるようにしたものでございまして、広く周知は行っておりません。
 なお、被災透析患者への支援は、避難の状況により異なりますけれども、医療費の一部負担金につきましては、全員が免除されております。

〇中村委員 今回についての事情は理解しますが、多くが障害者手帳をお持ちの同じ病気を持つ避難、被災者が同じ支援を受けられなかったとすれば、心苦しくも感じ、何とかできなかったのかという思いもあります。
 緊急時の人道的な支援ですから、都民ではなくても支援できる体制を平常時から考えておくことが必要であり、そのことが東京都が被災した際に、他の自治体に都民を救っていただけることにもつながると思いますので、ぜひともご検討願います。
 次に、東京での大規模災害への備えについて伺っていきます。
 防災計画上、重傷者は災害拠点病院で診療し、また、各地域に医療救護所が設置され、被災を免れた医療機関は後方病院として機能することになっています。平成十八年に改定された災害時における透析医療活動マニュアルを見ると、日本透析医会災害時情報ネットワークや、その地域ネットワークが中心となって、都内医療機関の情報を収集し、受け入れ先、医療機関を探すことになっています。
 素朴な疑問ですが、大規模震災時に、都内透析医療機関はどの程度機能し、二万八千人余りの都内透析患者に対しての最大透析可能数との比較は、どの程度と推計しているのかといった数値目標や規模の議論は、過去されたのかどうか伺いたいと思います。

〇前田保健政策部長 平成十八年の災害時における透析医療マニュアル作成時に、都内透析医療機関における平常時の最大受け入れ可能数を確認しているところでございます。大規模災害震災時には、その数値に基づき、災害規模に応じて医療機関や自治体との連携により対応することとしております。今回の震災を受けまして、改めてその数字を確認してまいります。

〇中村委員 一義的にはかかりつけ医療機関が患者さんの状況を把握して、自院で対応が困難な場合は、受け入れ医療機関を探すということになっています。しかし、大規模災害発生時、そのようにきちんとかかりつけ医が機能して、ネットワーク内の市区町村で完結するとは思えません。患者さんや医療機関から、都に直接情報を寄せるケース等も想定されているようですが、患者さんに周知されている電話番号に職員が待機するとか、ほかの連絡手段、例えばメールなども周知しておくことも必要ではないかと思いますが、ご所見を伺います。

〇前田保健政策部長 都では、災害発生時の連絡方法や検査データを、人工透析患者みずからが記載する透析患者用防災の手引を作成、配布しており、その中でも、災害時透析医療ネットワークなどの関係機関のホームページアドレス等を記載しております。今回の震災を受けまして、この手引を改めて患者や関係機関に配布するとともに、災害時における連絡先についての情報も含め、周知徹底してまいります。

〇中村委員 今回の東日本大震災における透析患者の避難等は、もちろん都にいらした方々がすべてではなく、近隣各県での受け入れが行われ、透析ネットワークがコーディネートを行っています。
 他府県に比べて断トツに患者数が多い東京では、都もかなりの役割を担っていかなければならないのではないかと思います。東京において同様の規模の震災が起こることも十分に想定される中、都はそのような事態においても、都内の透析患者が、安心して透析医療を受けることができるよう、今回の震災を今後の対策にどのように生かしていくのかを伺います。
 また透析ネットワークから、今回の支援、避難の全体像を伺い、都への要望も聞き、震災を受けてマニュアルの改訂を行う必要があるのではないかとも考えます。あわせてご所見を伺います。

〇前田保健政策部長 都では、災害時の透析医療の確保につきまして、透析医療機関における平常時からの準備や、透析の継続が困難な場合の患者の受け入れ体制について、災害時における透析医療活動マニュアルを作成し、迅速かつ適切な透析医療の確保を進めてきたところでございます。
 今回の東日本大震災におきまして、こうした医療マニュアルにつきまして、日本透析医会災害時情報ネットワーク等、関係機関と協議した上で、特に医療機関との連携等につきまして必要な見直しを行う予定でございます。

〇中村委員 この震災をきっかけとして、腎臓病以外にもさまざまな慢性疾患や難病、障害への大規模災害時の支援について、どのくらいの規模でどうなるということをできる限り想定し、都が果たす役割を見直していっていただきたいと強く要請しておきます。

2.高齢者の熱中症対策について


〇中村委員  次に、議案である補正予算について、高齢者を熱中症などから守る緊急対策について質問します。
 昨年の夏は猛暑であり、既に先週も大変暑い日が続き、高齢者の熱中症対策は喫緊の課題です。都内の熱中症で亡くなられた方は、一昨年が七名でしたのが、猛暑の昨年は百三十八名と急増し、その九割が高齢者とのことです。
 とりわけ、ことしは節電によりエアコンをつけるのを我慢する方も予想されますし、節電が予定どおりにいかないと計画停電の可能性もあり、そうなるとエアコンがつけられなくなるおそれがあります。
 今回、都は補正予算で、高齢者の熱中症予防に向けて取り組むとのことですが、まずはどのように取り組むのか伺います。

〇中山高齢社会対策部長 お答えいたします。
 高齢者の熱中症予防のためには、特にひとり暮らしなど、孤立しがちな方に対して熱中症に関する正しい情報を届け、地域で見守り、支える取り組みが重要でございます。このため、熱中症リスクが高まる六月から九月にかけて、区市町村が熱中症対策に集中的に取り組めるよう、新たな補助制度を創設いたしました。
 具体的には、民生児童委員や自治会、町会等の地域の担い手を、熱中症予防担当者として戸別訪問していただくことや、商店街の空き店舗などを活用した涼をとれる交流スペースの設置、また、首に巻く冷却用ベルトなどの熱中症予防グッズの配布など、区市町村が地域の実情に応じて実施する熱中症対策に、都として補助を行うものでございます。

〇中村委員 さまざまな取り組みを伺いましたが、制度のはざまになる人、実際にそのとおりにいくのかなと思うところもありました。例えば、ひとり暮らし高齢者か高齢者のみ世帯を対象とするようですが、家族がいても昼間お勤めに出かけ、その間は家に高齢者だけが残る場合もかなり多いと予想されます。
 また、熱中症予防担当者が戸別訪問するにせよ、事前に順番に回っての注意喚起も必要ですが、いざ猛暑日になったときこそ、一斉にすべての家庭を見守る必要があるんですが、それができるのかどうか。さらには、せっかく猛暑避難場所があるシェルターを設置しても、急激に暑くなったら、だれがどのようにそこに連れていくのか。そもそも熱中症予防担当者となり得る自治会の役員や民生委員も、高齢者が多くて、暑い中歩き回って大丈夫かと、いろいろ心配があります。
 熱中症対策を行うことはよいと思いますが、実情に応じた対策であることが大切であり、現実にどのように即した対応を行うことができるのかお伺いします。

〇中山高齢社会対策部長 高齢者の熱中症対策を行うに当たりましては、現在、区市町村が実施している既存の見守り事業の担い手を最大限生かして取り組んでいくことが効果的と考えます。
 この地域における見守りの担い手は、自治会、町会、地域包括支援センター、民生児童委員など、さまざまでございます。このため、本補助制度は、区市町村が地域の実情に即して、工夫を凝らしながら柔軟に対応できる仕組みとしているものでございます。

〇中村委員 取り組みについては、実際に各市区町村が行い、細かい対応は各自治体が柔軟に行うことができることがわかりました。確かに都が全額補助するとはいえ、実際には各区市町村が動かなければ実施できません。自治体の政策の違いは、自治なので、あって当然とはいえ、命にかかわる政策ですから、最低限はどの自治体も行い、その方法に地域特性に応じた対応をとるのならよいと思います。
 そこで、補正予算を編成する際に、市区町村の実情も調べていると思いますが、各自治体の取り組みへの意向について、どのように把握をしているのか伺います。

〇中山高齢社会対策部長 この事業は、区市町村が主体的に実施する事業のため、今回の補正予算の計上と並行しまして、取り組み意向を確認してございます。現在までのところ、二十三区二十六市五町すべての区市町で、実施する見込みとなっております。

〇中村委員 各自治体で積極的に取り組む意向とのことで、安心しました。とはいえ、本来こうした取り組みは、節電がいわれることしだけの、しかも熱中症対策だけではなく、常日ごろから地域の支え合い、見守りなど、地域包括ケアの取り組みとしてあるべきものです。
 日中の暑い時間帯にサロンなどに集まってもらう取り組みは、節電効果があるだけではなく、高齢者の孤立防止という観点からも有効です。ただ、シェルターは商店街の空き店舗や、都営住宅の空き部屋等を活用するようですが、都市整備局と協議して、常設の高齢者の居場所を設置したり、また、都営住宅の集会所も、都営住宅の住民だけではなく、地域住民にも開放していくことも検討できないかと考えます。
 福祉保健局も、介護保険制度の地域支援事業だけでは、十分な見守り活動ができない現状に対応して、都独自事業としてのシルバー交番を制度化し、地域包括ケアを拡充しようとしたことは評価しますが、まだ活用する区市町村はそれほど多くないため、課題の解決に引き続き取り組んでいただきたいと思います。
 以上、さまざま述べましたが、高齢者の見守りや居場所づくりのような取り組みは、ことしの熱中症対策としてだけ取り組むべきではなく、継続的に通年で行うべきだと考えますが、ご所見を伺います。

〇中山高齢社会対策部長 ひとり暮らし高齢者など、地域で安心して暮らし続けるためには、これらの方々を社会全体で見守り支える体制の強化が重要でございます。都は、これまでも区市町村に対し、民生児童委員や自治会、町会などによる高齢者の見守りや、高齢者が気軽に立ち寄ることのできる地域のサロン、ふらっとハウスの整備などの取り組みを包括補助により支援しております。
 さらに昨年度からは、お話のありましたシルバー交番設置事業によりまして、地域における支援拠点の充実を図っております。また、今回の熱中症対策事業におきます涼をとれる交流スペースは、事業終了後の十月以降も、地域の高齢者が集うサロンとして活用することが可能でございます。今後ともこうした区市町村の取り組みを支援することにより、高齢者の見守り体制の充実に取り組んでまいります。

〇中村委員 ご答弁ありがとうございました。
 先ほども述べましたが、熱中症対策を含めて、高齢者の居場所づくりには、都営住宅の活用が有効だと思います。都営住宅は高齢者や障害者を含めた低所得者対策であり、福祉政策でもあります。施設の整備が伴うため、都市整備局が担当していますが、福祉保健局とも、より連携を強める必要がありますし、そもそも都営住宅の担当部門は、単なる大家の役割ではなく、福祉的な視点で都営住宅を活用する政策を実施することが必要です。この場に都市整備局はいませんが、東京都全体に対して要望しておきます。
 また、高齢者だけではないにせよ、とりわけ地域における高齢者の孤立が懸念されていますが、その対応により、熱中症も含めて孤独死を防ぐことにもつながります。
 先週の本会議の一般質問でも、都知事の選挙公報を引用しましたが、認知症ゼロ、寝たきりゼロ、孤独死ゼロのトリプルゼロ社会を東京ルールで実現しますと、知事自身が宣言しているわけです。こうした政策を取り組むと知事が決意していることは、高齢者施策をさらに都政で進めるよい機会になると思います。
 この間、震災対策で大変お忙しいことと思いますが、高齢化の課題は、熱中症に限らず喫緊の課題ですので、ぜひともこの東京ルールの実現を目指して取り組むことを要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。

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