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都議会質問記録

【12】2011/10/04 東京都健康長寿医療センターにおける高齢者医療について質問

2011年10月4日、東京都議会 厚生委員会において、報告事項である地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター業務実績評価書について質問しました。都政における高齢者医療への取り組みについて東京都 福祉保健局に質問しました。以下に質問と答弁の概要を掲載します。

〇中村委員 それでは、報告事項である地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターの業務実績評価書について質問します。質問に先立ち、都議会民主党の議員でセンターを視察し、病院、研究所を見学させていただきました。現場の先生方は本当に一生懸命、都民のために治療や研究をしていただいたことは十分理解しました。その前提に立ちながら、今回、評価書が議会に報告されていますので、それに関連して質問させていただきます。なお、質問のためにこの評価書を丹念に見させていただきましたが、目標と評価だけが本文で、実績は別添の参考資料だったために少々読みづらかったです。評価委員会から都への報告書という位置づけなのでしょうが、都議会や都民がその経営内容を検証できる限られた資料ですから、目標、実績、自己評価、評定が一覧できるような工夫が必要ではないかと思います。次回以降の改善を求めて質問に入ります。

 まず、最初の質問として、地方独立行政法人と東京都のかかわりについて伺います。当該センターは、地方独立行政法人という形態であり、都が直接運営するわけではないにせよ、民間ではできない部分を公が担うという制度だと理解しています。その趣旨からすると、都政において大変重要な位置づけにあるといえます。そこで、地方独立行政法人に対し、都としての行政目的を達成するために、どのように関与しているのでしょうか。都からの財政支援はどうなっているのでしょうか。評価年度である平成二十二年度の財政支援の金額と、どのような名目で出されているのか伺います。また、研究テーマと都とのかかわりについても伺います。研究所にとって何を研究するかは大変重要ですが、研究テーマの選定に当たっては、長寿医療センター独自での選定なのでしょうか。福祉保健局から研究課題を提示しているのでしょうか。さらには、研究の成果はどのように生かされているのか伺います。

〇高木施設調整担当部長 まず、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センターに対する関与でございますが、都は、中期目標を定め法人に示しますが、その中で、都としての行政目的の達成に必要な事項を明確に指示してございます。この中期目標の達成状況につきましては、法の規定に基づき設置されました東京都地方独立行政法人評価委員会におきまして評価することで、適正な事業の実施を担保しております。
 また、定期的にセンター内の会議に出席し意思疎通を図るなど、緊密な連携を図りますとともに、都からも、中期計画にかかわる内容について議題とするなどの働きかけを行っております。今後も、法人の自主性に十分配慮しながら、設立団体として適切な指導、支援を行ってまいります。次に、センターへの都からの支援でございますが、病院事業に係る費用につきまして、都が負担する運営費負担金、研究事業に対します運営費交付金、都の派遣職員の給与を支払うことによる法人の財政的な負担を軽減いたします運営支援補助金がございます。平成二十二年度の交付額は、運営費負担金が約二十九億七千万円、運営費交付金が約十八億円、運営支援補助金が約三億四千万円でして、合計で約五十一億一千万円でございます。
 三点目としまして、研究成果についてでございますが、研究成果を都民に還元することは地方独立行政法人としての使命でありまして、高齢者の医療と介護を支える研究に、さまざまな視点から取り組んでおります。研究テーマの設定に際しましては、個別の研究課題を都が提示するものではございませんが、都が法人に対し指示する中期目標を指針としまして、法人みずからが中期目標に沿った研究テーマの設定を行っております。研究成果につきましては、例えば認知症の研究知見を生かし、診療現場において精度の高い診断を実現するほか、区市町村に対して、介護予防プログラムの普及啓発を行いますなど、具体的な成果の活用が図られております。

〇中村委員 高齢化社会が進展する中で、高齢者医療はますます重要性が増していきます。高齢者に関する医療には、他の世代とは違う特徴もあるかと思います。
 そこで健康長寿医療センターが目指す高齢者医療とは、どのようなものでしょうか、伺います。

〇高木施設調整担当部長 健康長寿医療センターでは、患者本位の質の高い医療サービスの提供、高齢者に対する専門的医療と生活の質、QOLを重視しました医療を提供することを病院の運営方針としてございます。また、高齢者の特性に配慮した医療の確立と提供という目標のもと、血管病医療、高齢者がん医療、認知症医療を重点医療と位置づけ、医療と研究との一体化の利点を生かしまして、高齢者特有の医療課題に積極的に取り組んでおります。具体的には、がん医療における外来化学療法や、血管病医療におけますインターベンション治療などでありまして、これらの取り組みを通じて、高齢者の心身への負担の少ない治療、手術を推進し、高齢者のQOLに配慮しました医療を提供しております。

〇中村委員 ご答弁の中に生活の質、QOLの向上についても述べられていましたが、センターでは退院支援を行っているということですが、QOLとのかかわりに留意する必要があります。退院支援によって、平均在院日数は平成二十一年度の十八・五日から、二十二年度は十七・七日になっています。在宅での療養を患者や家族が望むのならいいのですが、数値だけでは推しはかることはできません。本当にQOLの向上になっているのでしょうか。退院後のフォローはできているのかを含めて伺いたいと思います。

〇高木施設調整担当部長 在院日数の短縮につきましては、年度計画にも掲げ、取り組んでいるところでございます。高齢者にとりまして、不必要な入院の長期化は心身への大きな負担となり、身体機能の低下を招く側面もございますため、これを予防する観点からも、在院日数の短縮を進めております。また、入院時から、多職種から成ります退院支援チームによる支援を行いますとともに、退院時には、在宅医療・福祉相談室が中心となって行います地域の関係機関との合同カンファレンスを通じまして、在宅療養へのスムーズな移行に取り組んでおります。これらの入院時から退院後までを含めました一連の取り組みによりまして、平均在院日数が短縮し、結果としてQOLの維持向上につながっております。

〇中村委員 ありがとうございます。在宅療養へのスムーズな移行については、引き続き取り組みをお願いします。さて、評価書の項目について個別の評価を見ていくと、法人の自己評価と評価委員会の評定に乖離が見られる部分があります。例えばコンプライアンスの項目では、自己評価がCなのに、評価委員会の評定ではBがついています。もちろん、評価委員会の方が厳しい場合もあるので、全体的に甘過ぎるとまでは一概にはいえませんが、高齢者急性期医療の提供の項目では、自己評価はBなのに、評価委員会の評定ではSと、二段階も評価が離れています。評価委員会の評定について、どのような判断に基づいてなされているのか、伺います。

〇高木施設調整担当部長 健康長寿医療センターの評価を実施いたします評価委員会、高齢者医療・研究分科会は、病院経営に関する学識経験者や、医師会関係者、公認会計士などの外部有識者五名で構成されております。この評価委員会では、中期目標の達成に向け、法人の中期計画の事業の進行状況を確認する、都民への説明責任を果たすなどの基本方針に基づく評価方法を定めておりまして、それに沿った評価を行っております。実際の評価に当たりましては、提出されました業務実績報告書をもとに、法人へのヒアリングを実施するなど、法人の自己評価の妥当性を含め、業務実績を総合的に判断しております。

〇中村委員 先ほど、自己評価と評定が乖離している例としてコンプライアンスを挙げましたが、中身を見てみると、平成二十一年度の年は、三万四千錠もの向精神薬が所在不明となった紛失事故がありながら、評定がBというのは少し甘いのではないかとも思います。また、プレス発表資料として評価報告書の概要を都がまとめた資料では、薬剤紛失事故だけではなく、薬剤耐性菌の院内感染についても記載がありません。これらの事故についてはメディアでも取り上げられ、社会的にも重い責任のあった問題だと思うのですが、都としての認識を伺います。特に薬剤の紛失事故については、昨年九月の本会議の一般質問で、くまき委員長も取り上げています。その質問を経て、ことし五月には検討報告会の報告書が出されましたが、その内容と、その後、実際に取り上げられた対応を伺います。

〇高木施設調整担当部長 まず、昨年度の向精神薬の紛失及び多剤耐性菌の院内感染につきまして、重大な問題と受けとめ、都として必要な指導及び支援を行い、対策を講じてまいりました。また、センターでは向精神薬紛失の事故発生後、外部有識者を含めた検討会を発足し、事実関係の調査を進め、ことし五月に報告書を取りまとめました。
 報告書の中では、センターの薬剤管理の問題点として出庫数量と処方数量の照合や、処方後の残数確認を行う体制が十分でなかったこと、施錠管理の方法に問題があったことなどが指摘されております。これらの指摘を踏まえまして、センターでは、使用量と残数の確認を毎日行うほか、月ごとには医事会計システムのデータにより、処方量と残数を確認する体制をとっております。あわせて調剤棚や調剤室の施錠管理の徹底も行っており、管理に万全を期しております。

〇中村委員 引き続き管理の方の徹底をお願いします。さて、評価書の方では、都が定めた中期目標に従い法人みずからが中期計画と年度計画を立てています。その計画に対して法人が提出した実績に基づいて、評価委員会は評定しています。その中で、二十二年度の年度計画では、二十二年度より呼吸器外科外来を開設するとあったのですが、実績の欄にはできなかったと記載がありました。開設できなかった理由と、今後どう取り組むのか、伺います。

〇高木施設調整担当部長 呼吸器外科外来が開設できませんでしたのは、業務実績報告書にありますとおり、専門医師の確保ができなかったことが原因でございます。センターでは今後も呼吸器外来の開設を目指しておりまして、引き続き計画に反映することを検討しております。

〇中村委員 センターだけの問題ではなく、社会的な背景等があるのはわかりましたが、PDCAサイクルとして検証したことをどう改善するかが重要です。そのための検証をしているわけですから、評定後の対処についてどう取り組むのかがわかるような仕組みが必要だと思います。さて、先日健康長寿医療センターを視察した際に、物忘れ外来の説明を受けました。認知症対策は大変重要であるため、この取り組みは評価します。しかし、現状は予約がいっぱいであるとのことでしたが、どのような対応をしているのでしょうか、伺います。

〇高木施設調整担当部長 物忘れ外来の初診の診察予約枠につきましては、一週間当たり最大、平成二十一年度は十三枠、二十二年度は十四枠、二十三年度は十五枠とふやしましたほか、心理職を増員するなどの取り組みにより初診患者数が増加し、予約待ちの期間も平均三カ月程度と昨年度と比べ約一カ月短縮しております。受診希望者に対しましては、診療前の専用窓口におきまして問診を行い、重症度の高い場合は速やかに受診できるようトリアージを行いますとともに、診療待ちの間も連絡をとり状況を把握するなどの対応を行い、患者や家族の不安解消に努めております。

〇中村委員 この平成二十二年度までで、都が定めた四年間の中期目標の目標期間の半分が終わったことになります。都としてはこの二年間の取り組みをどのように評価をしているのでしょうか、伺います。

〇高木施設調整担当部長 外来化学療法室の設置、拡充、重症救急患者の受け入れに関する特筆すべき実績や、研究部門における研究成果が国際的にも高く評価されるなど、法人化後二年間の実績といたしましては、中期目標に掲げた項目についておおむね順調に実施していると都としても認識してございます。一方、評価書では法人運営全体を統一的、一体的に管理する仕組みのあり方や、より一層のコスト意識の醸成などについて意見が述べられるなど、課題も明らかとなっております。都といたしましては、これらの課題を踏まえ、平成二十五年度からの次期中期目標を作成してまいります。

〇中村委員 最後に、センターを含めた都の高齢者施策について伺います。私は、六月の都議会本会議の一般質問で高齢者施策を取り上げて、その中で、都知事が選挙公報に、認知症ゼロ、寝たきりゼロ、孤独死ゼロのトリプルゼロ社会を東京ルールで実現しますと掲げているので、それに向けて取り組んでほしいとの発言をしました。高齢者医療に取り組むセンターは、大きく寄与することになると思います。そこで健康長寿医療センターについて、今後の都政にどう生かし、都としての高齢者施策を推進していくのか、最後に局長の所見と決意を伺います。

〇杉村福祉保健局長 先ほど来お答え申し上げておりますとおり、健康長寿医療センターは、臨床と研究の一体的な取り組みを図りながら、高齢者に関します最新の医療を広く都民に提供する拠点として設置したものでございます。都といたしましては、センターが地方独立行政法人の特性を一層生かし、より自立的かつ効率的な運営を行いまして、センターの重点医療でございます血管病、がん、そして認知症など、高齢者特有の疾病に対します専門的医療の提供とあわせまして、介護予防プログラムの普及など、幅広い行政課題の解決に資することを期待しております。今後ともセンターを高齢者の専門医療及び研究の拠点として活用いたしまして、その成果を社会に還元しながら、高齢者が健康で安心して生活できますよう高齢者施策を推進してまいります。

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