【3】2013/03/13 猪瀬知事に都政運営、高齢化、少子化について質問しました。
予算特別委員会 質問と答弁(2013年3月13日)
2013年3月13日、東京都議会 予算特別委員会において猪瀬都知事等に対して5つのテーマで19問の質問を行いました。以下に全文を掲載します。
1.知事の基本姿勢について
2.福祉政策について
3.多摩地域の振興について
4.労働政策について
5.教育政策について
〇中村委員 それでは、来年度の予算に関して、まず猪瀬知事の基本姿勢について伺います。
知事は、施政方針でも、二元代表制について、都議会の意見に真摯に耳を傾け建設的な議論を交わし、そのことが東京をさらに高いレベルに引き上げると確信すると述べられました。その姿勢は高く評価をいたします。今回、知事として初の予算委員会ですので、基本的な事項を含めて質問しますので、ご答弁よろしくお願いいたします。
まず、知事は、施政方針で何度も官僚主義という言葉を使い、官僚主義と決別をすると述べていました。地下鉄や東京電力の改革も重要ですが、都知事の役割は、まず都庁自体の改革に取り組むことです。都庁も局ごとの縦割りがないとはいえません。仮に改革が進んでいるとしても、組織は絶えざる改革が大切です。
都庁に官僚主義はないのか、都政をどうマネジメントしていくのか、猪瀬知事のご所見を伺います。
〇猪瀬知事 まず、官僚主権の話ですが、日本の政府は、総理大臣が、小泉首相のときは五年五カ月やりましたが、それを除くとバブル崩壊から今日まで、大体平均一年ということになっています。さらに、政府は縦割りの省庁連合、要するに省の連合体であって、閣議は、首相はその司会者にすぎないようなところがある。
また、大臣も頻繁にかわる。副知事として、地下鉄一元化を問題提起して--地下鉄一元化を提起して二年八カ月ありましたが、その間に国交大臣が、前原、馬淵、大畠、前田、羽田、こんがらがるぐらい、五人かわった。これじゃあ政治がリーダーシップとれるわけがない。その点、都知事は四年間の任期がありますから、官僚主権になるかどうかというのは、知事のマネジメント一つにかかっていますが、少なくとも石原さん以降、都庁は政府と全然違うというふうに思っています。
それから、都庁の組織改革と縦割りの問題でありますが、副知事として五年五カ月の間、高齢者の住まい、これは都市整備局と福祉保健局で縦割りを超えてやったわけですが、周産期医療や電力改革など、これも、電力改革も知事本局中心に環境局、その他たくさん、縦割りだったのも入れて、横断的なチームをつくってやったわけです。そうやって課題を解決してきているということは、中村委員もご存じだと思います。
都庁、もう一つ違うのは、霞が関の縦割りというのは、採用時に財務省なら財務省、経済産業省なら経済産業省、初めから採用がそういうふうになっているけれども、都庁は一括採用になっている。ということで、局をまたいだ人事異動も可能になっているから、したがって、都庁の方が縦割りを克服しやすい。しかも任期は四年ある。そういうことで、リーダーシップさえ発揮すれば、霞が関の縦割りを都庁から、霞が関の決定を含めて、都庁から東京モデルをつくって示していくことはできると。
いずれにしろ、縦割りとかこういう分業というものとか、組織的な固定化とかというのは、民間企業でも起きていることであって、大きな組織というのは、ややもすれば、そういうところで働く人の自己保身というものを先にしてしまうところが往々にしてある。
前にイオンの岡田会長と会ったことがありますが、ジャスコからイオンに名前を変えたと。これは、どんどんどんどん規模が拡大していったら、みんなサラリーマン化して固定化してきちゃったと。そこで一回、辞表をとって、イオンって名前変えて、再スタートだと。そういうふうにしたんですというふうにいってましたが、そのぐらい、やはり一つの固定化した組織というのは、ずっとその組織の利益だけを守るようになっていきやすい。
そういうことで、自分の組織の役割や責任の範囲を限定的にとらえて、狭い範囲の中で仕事をしようとして、余計な仕事は自分の仕事じゃないと、そういうふうになりやすいので、そういうことに対してきちんとやっていかなきゃいけないわけで、大体、役所が全部、組織が縦割りであっても、生活は縦割りじゃない。だから、生活が縦割りじゃないところに組織の縦割りを持ち込めば、それは生活者としての都民、国民は困るわけですね。都民の生活は縦割りじゃないし、高齢者の住まいの問題にしても、先ほどいいましたが、住宅か施設かで縦割りにしちゃうと、それはその生活者にとっては、生活者の立場でない形で問題を押しつけられることになると。
そうはいっても、都庁も局の壁はあるんですよ。だけど、それはできるだけ横の連絡をとりながらやっていこうということが僕の考え方です。思想です。
都知事になってから、全職員にこういいました。役所はきのうのルールで動いていると。決まったことというのは、きのう決まったことだから、きょう起きたことに対応するためには、都民のためにやるためには、きのうのルールにのっとった論理じゃだめですよと。常に新しい発想でやりましょうと。しかし、縦割りの組織の面という、既に悪い面を持っていることは確かだから、それを大きくならないように早目早目に摘み取って、改革意識の高い職員が仕事をしやすいようにし、よい目標を、よい規格を職員に示して、都民のためになるようなことをどんどん問題提起していくのがリーダーシップだと思っていますから、都庁の力を最大限に発揮するために、これからもやっていきたいと思っております。よろしくお願いします。
〇中村委員 都知事の決意を聞くことができました。ぜひともリーダーシップを発揮していただいて、都民の生活に合ったしっかりとした都政、マネジメントしていただきたいと思います。
次に、都の外郭団体である監理団体について伺います。
都の事業においては、公共の役割があるため、民間が行うよりも望ましい場合もあることから監理団体があると認識をしています。しかし、そこに公平性や透明性が担保されているかは、厳しく見ていかなければなりません。人事の交流もあってもよいのですが、これまでの都は、監理団体への退職職員の就職を、退職金がないことなどから、国の天下りとは違うというようにしてきました。
そこで、監理団体への再就職について、国の天下りとは違うとしていますが、都民からは疑念を持たれる部分もあるかと思いますので、都としてどのような取り組みを行っているのか伺います。
〇笠井総務局長 監理団体は、都政を支える重要なパートナーでございます。都は、その適切な運営に寄与するよう、早期に退職の勧奨を受ける国の天下りとは異なり、定年またはその直前まで働いた幹部職員のうち、適切で有用な人材を推薦しております。
一方、再就職後は、業績評価制度などを通じて、自律的な経営のかじ取りを厳しく求めております。
また、都民から公正な都政運営に疑念を持たれることのないよう、平成二十二年から、部課長級以上の幹部職員全員について、監理団体を含めてすべての再就職情報を公表いたしております。
今後とも、より一層、公正性、透明性のさらなる向上に努めてまいります。
〇中村委員 少子化や高齢化が進む中で、地域に暮らす住民のニーズは多様化、複雑化をしてきています。こうしたニーズに的確に対応していくためには、行政だけではなく、住民も参加する新しい公共という考え方が必要と考えます。
震災から二年たちましたが、きずなという言葉をキーワードに、地域の課題を解決するために、住民みずからが共助の精神で公共的活動を担うという支え合いの社会の実現に向かって、住民の意識も変化をしてきているのではないかと思います。
今後の行政において、施策への市民参加の促進や、市民等との協働を進めることが大きな課題になるとは考えます。しかし、国は権限を手放さず、地方の財源も限りがある中で、地方が創意を生かして施策を展開できる余地は余り残されていません。
教育や子育て、まちづくり、防災、防犯などのそれぞれの地域の固有の、かつ多様な地域課題を解決するためには、国が一元的に決めるのではなくて、住民に身近な地方政府、とりわけ市区町村がみずから決定し、実行していくことが必要です。
そこで、地方分権改革推進委員会の委員を務めるなど、地方分権改革に長年携わってきた猪瀬知事に、地方のことは地方で決める、地方の力を発揮させるための地方分権改革についての所見を伺います。
〇猪瀬知事 僕は、地方分権改革委員、二〇〇七年の四月からやりましたが、総理大臣が何人もかわって、最後は地域主権ということで民主党政権に勧告を渡しましたが、内閣総理大臣に対して、基礎自治体への権限移譲や、義務づけ、枠づけの見直し、さらには国の出先機関を地方に移管することで二重行政によるむだをなくすなど、四次にわたって勧告を行ってきました。
このときに、最後に、民主党政権で原口さんが総務大臣で、僕は国の公務員が三十万人いて、二十万人が地方にいるわけだから、そのうち三万五千人は少なくとも二重行政なので地方に移管せよと、こう出しているわけ。そうしたら、原口大臣は当時、三万五千人移譲やりますといった。やりますといっただけで、何もやらなかった。できなかった。
これじゃあ話にならないということでありますが、東京都としても、地方分権改革の推進を最重点事項として政府に提案、要望を行うほか、国直轄事業負担金の抜本的改革を求める提案など、具体的な取り組みを行ってきました。国全体に活力を取り戻すために、地方を画一的な基準から解き放ち、その持てる力を十二分に発揮させる改革が必要であります。
しかし、地方を縛る義務づけ、枠づけ、これ、一万ぐらいありまして、そのうち精査して、千ぐらいは大体ある程度できたんですが、あとは出先機関の問題、先ほどいいましたが、全然骨抜きにされてしまって何もできなかった。
まずは、これは安倍政権に、また新しく安倍政権、誕生しましたが、地方分権改革推進委員会の勧告どおりに実施していただきたいと、こういうふうに思っています。
東京都としては、地方がみずからの判断と責任で、地域の実情に合わせた施策を実施できるよう、地方分権改革の実現に向けて引き続き積極的に取り組んでいきます。
〇中村委員 知事は、都を全国自治体の雄と述べられていましたので、ぜひとも全国の自治体の先頭に立って国と交渉し、改革を進めていただきたいと思います。
次に、福祉施策として、特に高齢者福祉について伺います。
今般、高齢者福祉が包括外部監査の対象になり、定例会初日にはその報告もされました。知事は監理団体改革において包括外部監査を重視されると述べていますので、都政そのものの政策課題についても同様に扱われると期待をします。
監査の中では、介護・福祉施設整備の拡充や市区町村への一層の連携の必要性などが意見として出されました。高齢者が住みなれた地域で暮らし続けられることが大切であるとともに、施設の整備もまだまだ必要です。包括監査から多くの意見が出されましたが、どう受けとめ、どう取り組んでいくのか伺います。
〇川澄福祉保健局長 包括外部監査人からは、今後見込まれる急激な高齢者人口の増加などを踏まえ、住まいや介護、福祉サービスの拡充について、多くのご意見をいただきました。
都は、施設サービス、在宅サービス、ケアつき住まいなどのサービス基盤についてバランスのとれた整備を図るとともに、区市町村と連携しながら、地域住民が主体となって高齢者を支える仕組みづくりを進めてきております。
今後とも、高齢化の進展を見据え、ハード、ソフト両面から、高齢者施策の充実に積極的に取り組んでまいります。
〇中村委員 次に、高齢者の住まいとして、自立して生活したいという人たちにグループリビングという住まい方があります。都は、空き家対策のモデルの一つとして取り組んだようですが、十分実績がないと聞いています。この実態と課題を伺うとともに、空き家対策としてとらえるのではなく、きちんとした政策に位置づけることが大切だと考えますが、所見を伺います。
〇飯尾都市整備局長 今年度、空き家の利活用方策の可能性を検証するため、高齢者のグループリビングに活用する場合などに改修工事の一部を助成するモデル事業を実施いたしました。
複数の事業者から相談を受けたところでございますが、対象となる物件が見つからないなどの理由から、応募には至らなかったものでございます。
来年度、実施に当たりましては、引き続きNPO等も含め幅広くPRを行うなど、事業の円滑な実施に努めてまいります。
グループリビングのみならず、都民のさまざまな居住ニーズに対応した住宅が的確に供給されることが重要であり、こうした住宅市場が形成されるよう取り組んでまいります。
〇中村委員 引き続き取り組みの方をお願いをいたします。
さて、高齢者施策なんですが、前の石原都知事は、最後になった選挙の公約で、認知症ゼロ、寝たきりゼロ、孤独死ゼロのトリプルゼロ社会を東京ルールで実現をしますとしていました。具体化されないままご本人は都政を去りましたが、このことは継承してほしいと思います。元気で長く生きられる社会は歓迎すべきことですが、寝たきりや認知症などから、高齢化そのものに悪いイメージができてしまっています。
現在、国では景気の話が多く話題になっていますが、年金しか収入がない高齢者にとっては生活が大変な人も多くいます。東京では家賃だけで収入が費やされ、長寿命化により定年から亡くなるまで数千万円から億単位の貯金が要るとの試算もあるようです。
今回、猪瀬知事が認知症対策や住まいの課題に積極的に取り組むことは評価をしたいと思いますが、高齢化社会については、寝たきりや介護、孤独死、生活困窮など広範な課題もあります。こうした課題も含めて、高齢社会における課題とそれに対する取り組みについて、猪瀬知事の所見を伺います。
〇猪瀬知事 高齢者といっても、できるだけみんな自分の家に住んで、健康でいたいわけですね。ですから、介護が必要になっても、可能な限り住みなれたところにいたい。本当に最後のときに特養に行くわけですから、特養に行くより前の状態をできるだけ長くもたせるというか、そこがやっぱり生活の場ということになりますからね。
そういうときに必要な支援を得られる仕組みができていなければいけないわけです。特に高齢社会では、認知症や介護の問題も、それを支える家族というだけではやっぱり無理なところもあるから、ひとり暮らしの高齢者の孤独死というのもあるし、やっぱり人と人とのつながりが希薄になっていることは、これは事実ですよ。
こうした高齢者の日常生活を支えるのは、やっぱり地域の力。それから、サービスを担う民間の力、そして基盤整備を担う行政の力、これが重なり合っていくことが望ましいということです。
平成二十五年度予算でも、こうした考え方に沿って、民間の力を引き出す東京都独自の補助制度による認知症高齢者グループホームの整備、利用者の所得水準に配慮した都市型軽費老人ホームの整備、そして地域の住民が高齢者を日常的に見守る見守りサポーターの養成など、さまざまな施策を組み合わせていくということになります。
それは自助、共助、公助ということになりますが、高齢者がやっぱり地域の中で安心して暮らせる、そういう、生活できる東京、これを目指しているということで、やっぱり高齢者がどういうふうに自分の--今、七十って若いですからね。八十も結構若い場合もある。八十、九十と。
一回、学校出てから定年までの人生と、定年終わってから亡くなるまでの人生って、大体同じぐらいになってきてるんですね。ですから、そこで一人一人、またテーマを見つけていくことも大事で、やっぱり考え方をこれからもっと変えていく必要があるというふうに思っています。
〇中村委員 一口に高齢化社会といっても、状況はいろいろ変わってきているところもありますから、ぜひとも都知事には、これからの高齢社会、どのようにつくっていくのか描いていただいて、施策に取り組んでいただきたいと思います。
次に、少子化対策、子育て支援について伺います。
虐待やいじめ、体罰、自殺で、尊い子どもの命が失われる痛ましい事例が後を絶ちません。子どもを守るべきすべての大人は、子どもの命が失われない社会の実現に努力をすべきです。子どもと家庭をめぐる問題はさまざまな背景が重なって生じているといわれていますが、都としても、知事を先頭に全庁挙げて取り組んでいただきたいと思います。
先般、新宿区内に新たに開設した東京都子供家庭総合センターが、児童相談センターと教育相談センター、新宿少年センターという三つの相談機関が一つの建物の中で子どもと家庭を総合的に支援するとして、拠点ができました。私も式典に参加をしましたが、子どもの命を守るための大きな一つの取り組みのあらわれと評価をしています。
こうした取り組みを初め、子どもを守ることの重要性を強く都民に発信していく必要性があると考えます。
そこで、まず、この東京都子供家庭総合センターが福祉保健、教育、警察の三つの機関が連携し、子どもと家庭に関するあらゆる相談に応じていくとのことですが、具体的に三機関どのように連携して対応していくのか伺います。
〇川澄福祉保健局長 子供家庭総合センターには、福祉保健、教育、警察の三機関から成る総合電話相談室を設置し、児童虐待やいじめなど、子どもや家庭が抱えるさまざまな相談に最も適切な機関の相談員が専門性を生かして対応しております。
また、一つのケースに児童虐待やいじめなど複数の要因が関係している場合には、三機関が専門的見地から協議を行い、適切な支援を行ってまいります。
〇中村委員 虐待などへの対応などは、児童相談所の体制強化などが重要と考えて、これまでもたびたび議会の質問を通じて求めてきました。同時に、子どもの命を守ることを都民の共通認識とすることが重要と考えます。自治体によっては、子どもの権利条例を制定している自治体も見られます。都としても条例の制定を検討していただきたいと思います。
さて、まず、子どもの命を守る総合的な窓口となる東京都子供家庭総合センターが開設したこの機会に、悩みを抱えている子どもや保護者などに広く呼びかけるべきです。子ども自身が危機や悩みに直面した際、SOSの声を上げることができるよう、相談先があることをきちんと伝えていくことが重要です。同時に、すべての都民に、子どもの命を守っていこうという意識が形成されるよう積極的に発信していくことが必要です。
悩みを抱える子どもに対し、相談先をどのように周知をしていくのか、また、子どもの命を守るため、都民の意識の醸成をどのように図っていくのか伺います。
〇川澄福祉保健局長 都は、虐待やいじめなどに悩む子ども自身が気軽に相談できるよう、フリーダイヤルで二十四時間相談できる窓口を設け、毎年、都内の小学校四年生、中学校一年生、高校一年生の全員に電話相談のPR用カードを配布しております。今後も、子どもが必要なときにアクセスできるよう、制度の周知を図ってまいります。
また、児童虐待から子どもを守るため、十一月の児童虐待防止推進月間を中心に、区市町村や民間団体等と連携し、ポスターの掲示や、多くの都民が参加する子育て関連のイベント等を活用して普及啓発を図っております。
今後とも、関係機関等と連携しながら、社会全体で子どもを守る取り組みを推進してまいります。
〇中村委員 少子化対策について伺います。
今述べたような子どもの安全ということは当然大事なんですが、さらには保育園の対策や、また、子どもを産み育てることに安心を持ってもらうことも大切です。とりわけ若年層が非正規雇用化などによる生活の不安定さから、晩婚化、非婚化が少子化にもつながっています。
二十年前から少子化がいわれていましたが、政府が対応してこなかったことから、第二次ベビーブームの世代が適齢期を超え、これから少子化対策を行って出生率が上がっても、絶対数ではなかなか少子化が改善しません。とはいえ、これは対策を行うことで、何十年も先を見据えての対応をする必要がありますが、この少子化対策について猪瀬知事の所見を伺います。
〇猪瀬知事 人は生まれてから一歳ずつ年をとっていくわけで、一国の年齢構成を考えると、移民を考えない限りは、それは国民一人一人が生まれた時点での人数で年齢構成がこういうふうになっていくことは、もう間違いないんだが、アメリカの場合は移民がどんどんふえてくるので、結局、アメリカは日本の人口の二倍だったのが、今、三億人近くなってますからね。ふえていくんです。
ただ、そうでない、移民を考えない場合、一定の移民は、政策的な移民というのはあるわけですが、ほとんど少ない場合には、やはり少子化対策というのも、長期的な観点で見ないとなかなか難しいと思います。これ、みんな一生懸命考えている課題です。どうしたらいいのか。なかなか答えはないですが、ただ、この前の政権のときに、子ども手当という形でばらまきすれば、直接給付ですね、そうすれば解決するんじゃないかと。でもそれは全然、可能性はゼロじゃないが、あんまり本質的な解決じゃなかったと思うんですね。
やっぱり生きた現場を持つ東京都は、政策的に保育、医療、雇用、住宅、各分野の施策を横ぐしにして、少子化打破緊急対策というのを、一応、全庁的に展開していますが、さらにことしの一月に、「二〇二〇年の東京」へのアクションプログラム二〇一三においても、少子化対策、八本の施策の一つの柱です。そう位置づけているんです。
来年度予算でも、保育の分野で、既にご承知のように、六人から十九人の子どもを預かる小規模保育のスマート保育というものの支援を開始しますが、ワークライフバランスの推進については、先進的な取り組みを進める企業への見学ツアーを新たに実施するなど、引き続き、いろいろ勉強しながら施策の充実を図っていきたいなというふうに思っています。
日本は一度、経験してるんですね、江戸時代。江戸時代の、江戸は一六〇三年に江戸幕府が始まって、赤穂浪士の討ち入りが一七〇二年ですよ。時は元禄十五年。その百年は高度成長で、人口は二倍になっている。そこから、一七〇〇年から一八六八年の明治維新までずっと三千万で、ふえなかった。というか、逆にいうと、よく百七十年間、人口がふえない社会を維持していたなというふうに思うんですね。そのときに、関東地方はさらに、東京に、バキューム効果といって周辺の関東平野の人々が東京にどんどんどんどん行っちゃうので、関東平野は人口減少地帯になっていくんですよ。
そういう中で、逆に百年の高度成長に対して百七十年も、要するに人口減少、あるいは人口がほとんどふえない社会をつくり上げてきて、そういう経験をもう少し生かせないかなというふうには思っております。
〇中村委員 歴史の部分まで含めて語っていただきましたけれども、とにかく少子化対策ということをやっていかなければ、長期的には大変厳しい状況になりますので、しっかりと全庁的な取り組みの方もお願いをいたします。
次に、障害者施策について伺います。
民主党政権の間には、障害者自立支援法の改正や虐待防止法、総合支援法、優先調達推進法など、いろんなものを取り組んできました。とりわけ、このたび障害者総合支援法の施行では、難病を法の対象にする制度の改正も行われました。
知事は、選挙の公約で、健常者が障害のある人を助け、としていましたが、先日の施政方針では障害者施策には触れられておらず、当事者ががっかりしたとのコメントも報道されていましたので、今後はぜひとも発信をしっかりとしていただきたいと思います。
改めて、都として、今後、障害者施策にどのように取り組んでいくのか伺います。
〇川澄福祉保健局長 都は、障害者が地域で安心して暮らし、当たり前に働ける社会の実現を目指し、さまざまな施策を推進しております。
具体的には、地域生活を支えるため、都独自の特別助成を実施し、グループホームや通所施設など、地域生活の場の整備を進めております。
また、区市町村に障害者就労支援センターを設置し、就労、生活両面からの支援を行うほか、企業見学や職場実習を実施するなど、障害者の就労を支援しております。
さらに、来年度からは、入所施設に地域移行促進コーディネーターを配置し、区市町村や相談支援事業者と連携しながら、障害者の地域生活移行を支援いたします。
今後とも、区市町村等と連携し、障害者の地域生活を支える取り組みの充実を図ってまいります。
〇中村委員 ことし四月には、障害者優先調達推進法が施行されることになっていますが、今後、福祉施設における受注機会の確保が一層求められると認識していますが、都は、福祉施設における工賃向上や受注機会の拡大に向けた取り組みをどのように進めていくのかお伺いします。
〇川澄福祉保健局長 都は、昨年六月に、福祉施設における工賃向上のための具体的な支援策を示すため、東京都工賃向上計画を策定し、施設職員の経営意識や利用者のモチベーションを高めるための研修を実施しております。
また、受注先の開拓等のための地域ネットワークの構築や、経営コンサルタントの派遣に取り組む区市町村に対し、包括補助により支援しております。
来年度は、さらに、福祉施設が生産性の向上のために行う設備整備に対する補助や、製品等の展示即売会を実施いたします。ことし四月には、障害者優先調達推進法も施行されます。
今後とも、より一層工賃向上や受注機会の拡大が図られるよう、区市町村と連携しながら福祉施設の取り組みを支援してまいります。
〇中村委員 次に、多摩地域の振興について伺います。
多摩地域では、法律で市町村が行うべき業務である消防や上下水道などが、さまざまな事由で都に委託されたり、都の機関である保健所や労働相談情報センターが統廃合されるなど、集権化が進んでいます。
一方、地域主権改革一括法の施行により、昨年四月、都から市町村に多数の事務が移譲されました。また、最近では八王子市が中核市を目指して都と協議を進めるなど、市町村への分権も進んでいます。
このように、多摩地域の市町村においては、集権化と分権が同時進行している状況です。財政的には厳しくとも、自治の流れからすると、社会資本整備等の政策は都が行い、生活にかかわる政策は市町村が取り組むという役割分担のもと、少子高齢化への対応などで厳しくなる市町村の行政運営を都がしっかりと支えていく必要性があると考えます。
今後の都と市町村の役割分担及び市町村への分権についてどのように考えているのか、所見を伺います。
〇笠井総務局長 市町村の役割は、それぞれの地域の実情に応じ、みずからの判断と責任において住民に身近な行政サービスを提供することでございます。
これに対して、都の役割は、広域的な行政課題への対応や高度で専門性が求められている事業の実施など、広域自治体としての責任を果たしていくことであります。
こうした役割分担のもと、都はこれまで、東京の実態や地域特性などを踏まえ、建築確認事務や騒音規制に関する事務など、住民に身近な事務権限を市町村に移譲してまいりました。
今後とも、市町村との適切な役割分担により、都民ニーズに的確にこたえる行政運営に努めてまいります。
〇中村委員 来年度の予算を見ると、都の税収はふえると見込まれています一方、市町村財政を取り巻く状況を見ると、少子高齢化社会への対応や国の法定受託事務である生活保護費などの扶助費が増加するなど、引き続き経常的な経費の負担が高まっています。
加えて、景気低迷の影響により地方税は厳しい状況が続いているなど、各市町村は歳入面でも厳しい状況にあります。
そうした中、市町村財政に対する総合的な支援制度である市町村総合交付金に期待される役割はますます大きなものになっており、市町村の安定的な行財政運営の確保や、行財政改革の取り組みの促進、地域のまちづくりの進展などに重要な役割を果たしてきました。議会からの要望にこたえて、年々増額されていることは評価します。
そこで、この市町村総合交付金の交付に当たって、市町村の実態を的確に把握し、その実態に合わせた財政支援を行う必要があると考えますが、所見を伺います。
〇笠井総務局長 市町村総合交付金は、市町村が実施する各種施策に要する一般財源の不足を補完することにより、住民福祉の増進や市町村の健全な財政運営などに寄与しております。
平成二十一年度には、市町村の要望を踏まえつつ、都の施策と連携した市町村の取り組みへの支援や、市町村みずからの経営努力を評価する項目の見直しなどを行いました。
こうした改善に加え、交付金の算定に当たりましては、きめ細かくヒアリングを実施し、市町村のさまざまな要望を十分把握しております。
今後とも、市町村を取り巻く状況の変化や実態を的確に把握し、各市町村の実情に即した交付となるよう対応を求めてまいります。
〇中村委員 このたび、新しい多摩ビジョンの素案が発表されました。まだまだ具体的施策はこれからということなので、具体策についてはこれからしっかりと取り組んでいただきたいと思うのですが、その中で多摩の状況をちょっと見てみますと、先般、文書質問もしたのですが、かつて都心から見れば郊外だった多摩地域には多くの大規模事業所がありましたが、今は多摩地域も都心部とつながり、郊外ではなくなるとともに、大規模事業所の撤退が始まり、多くの雇用や税収がなくなってしまいました。
日産の村山工場の撤退は大きな話題になりましたが、近年では三鷹市の日本無線も撤退を発表しています。撤退は企業の判断であったとしても、これだけ同様の現象が各地で起こると、都としても対応を考える必要があります。
工場が撤退するのを転機ととらえるとビジョンの中にありますが、都全体を一つのまちと見ると、住む場所と働く場所の役割分担ともいえますが、少子高齢化の地域のまちづくりを考えると、住宅だけのまちでは成り立ちません。
そこで、東京自体のこうした大きな変化についての認識と対応について所見を伺います。
〇笠井総務局長 多摩地域は、区部に先行した人口減少の到来、大規模団地や都市インフラの老朽化、大規模工場の相次ぐ撤退などの課題も発生し、大きな転換期を迎えております。
こうした時代の変化を乗り切るため、二〇三〇年ごろを見据え、中長期的視点に立った多摩の進むべき方向性を示す新たな多摩のビジョンを策定するとし、今般、素案を公表いたしました。
本ビジョンの実現には、都のみならず、多摩の市町村、民間企業やNPOなどの力を結集していくことが必要であり、今後、これらの主体と一丸となって、大規模工場の撤退を契機としたまちづくりや産業の活性化など、施策の具体化に早急に取り組んでいきたいと思っております。
〇中村委員 三鷹市では、来年度の予算の中で、これはつくるという意味の創、蓄えるの蓄、省エネの省で、創・蓄・省エネルギー機器を導入する住宅開発事業者に対する奨励制度を創出し、エコタウンを目指すとの政策を発表しました。
こうした取り組みを初め、多摩地域には豊かな自然環境があり、今後、多摩全体でスマートシティーを目指すべきと考えます。
不燃化特区というのは二十三区のみしか指定されていませんでしたが、こういった多摩地域にスマートシティー特区をつくり、良好な住環境整備を行うべきと考えますが、所見を伺います。
〇笠井総務局長 多摩地域の住環境整備を進めていくに当たりましては、太陽光などの再生エネルギーの活用や、非常時にも対応できる自立分散型エネルギーの導入など、環境に優しい、安全なまちづくりを志向していくことが重要でございます。
このため、新たな多摩のビジョンの素案では、大規模工場の撤退や大規模団地の更新などの機会をとらえ、まちごとにエネルギーの創出と活用を目指すスマートシティーのモデル構築を進むべき方向性として掲げており、今後、関係各局、市町村や民間企業などとも連携しながら、その実現に向けた方策を検討していきたいと思っています。
〇中村委員 次に、労働政策について伺います。
毎年五万件を超える労働相談が都内六カ所の都労働相談情報センターに来ています。都の労働委員会や国の労働局とは違って、権限はなくても多くの相談があり、あっせんにより多くの相談が解決されていることも、その身近さゆえと評価したいと思います。
労働組合のないところの相談が多いというデータも出ています。相談は、大手勤務でも解雇の相談だったり、来所者からはパワーハラスメントの相談もあるということです。また、最近では追い出し部屋が問題になっているとの報道もあります。
近年の労働相談の傾向についてどう考えるか伺います。
また、受けた相談内容を労働政策に生かすべきと考えますが、所見を伺います。
〇中西産業労働局長 労働相談件数は、六年連続で五万件を超える高い水準で推移しております。また、その内容といたしましては、退職と解雇が常に上位を占めており、近年は職場の嫌がらせが増加傾向にございます。
労働相談は、職場で労働問題の悩みを抱える労使双方に、その解決に向けた助言等を行うものであり、労使紛争の防止や良好な雇用環境を整備する上で重要でございます。
相談内容は、雇用情勢や労働環境の変化などを反映しており、その傾向を的確に踏まえた対策を講じることが必要でございます。
このため、都ではセミナーや冊子等を通じて、労働関係法令の内容や相談傾向に合わせた労働問題への対応策などについて幅広く普及啓発を実施しております。
〇中村委員 今、質問の中で述べたパワーハラスメント、いわゆるパワハラの防止について伺いたいと思っています。
数がかなりふえているということで、これは昨今のいじめや体罰、暴力といった問題と根源は同じように思われます。
そこで、東京都としてもパワハラ対策に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
〇中西産業労働局長 いわゆるパワーハラスメントは、労働者の尊厳や誇りを傷つけるばかりでなく、職場環境の悪化を招きかねないものでございます。こうした課題には、まず、事業主がその防止や対応に取り組むことが必要です。
そのため、都は、事業主等を対象に、ハラスメント防止に関するセミナーや未然防止の取り組みに参考となる冊子等の作成と配布を行ってまいりました。また、企業からの要請に応じてセミナーの講師を派遣するなど、きめ細かく普及啓発を実施しております。
今後ともこうした取り組みを通じ、パワーハラスメントを防止するための普及啓発に努めてまいります。
〇中村委員 知事は、よく心のデフレの脱却というお話をされますけれども、例えば若い人であれば、もちろんオリンピックを見て元気になるということもあるかもしれませんが、安定した仕事や収入、生活がなければならないと思っています。そういった点で、若年層の雇用対策は大変重要です。
新卒の学生による職業観の変化により、就職後、すぐにやめる場合もあるとの批判もありますが、一方では、それほどの好条件ではないとか、大学を出ても非正規採用であったりと、さまざまな状況があります。若い世代の雇用対策として、まずは正規雇用の拡大が必要と考えます。
また、現状、早期に退職する人が多い中、不安定雇用への重点的対策も必要と考えますが、見解を伺います。
〇中西産業労働局長 不安定雇用を余儀なくされている若者は依然として多く、こうした若者の正規雇用化を後押しすることが重要でございます。
そのため、都はこれまで、東京しごとセンターにおいてカウンセリングやセミナーなど、きめ細かい支援を行ってまいりました。
また、リーマンショック以降、雇用情勢が悪化する中、都内経済団体に対し、若者の雇用拡大について要請してまいりました。
さらに、新卒未内定者等への支援をしごとセンターで開始し、紹介予定派遣制度を活用した未就職者や非正規雇用歴のある若者への支援にも取り組んでまいりました。
新年度は、これらの事業の拡充に加え、若者の早期離職問題に対応するため、職場定着支援事業を開始いたします。こうした取り組みを通じ、若者の安定的な就業を支援してまいります。
〇中村委員 最後の質問項目として、教育について述べたいと思います。
我が国の将来に対する不透明感や閉塞感を打ち破るには、若者が希望を持ち、より高い目標に向かってチャレンジしようとする意欲を持つことが必要だと考えます。このような若者を育てるため、教育に対する期待が寄せられています。
知事は、生きる力、支え合う力を教育再生の基本とすると選挙公約に掲げていました。都教育委員会は、先般、今後の中長期的な教育の方向性を示す東京都教育ビジョン(第三次)案を公表しましたが、子どもたちの知、徳、体や社会に貢献する力の育成に向けてどのように取り組むのか、教育長に伺います。
〇比留間教育長 新たに策定をいたします教育ビジョンは、社会全体で子どもの知、徳、体をはぐくみ、変化の激しい時代における、みずから学び、考え、行動する力や社会の発展に主体的に貢献する力の育成を基本理念とし、十項目の取り組みの方向に施策を体系化しております。
具体的には、児童生徒一人一人の個性、能力を把握し、個に応じた指導を行うことにより、基礎学力や規範意識、基礎体力を確実に身につけさせるとともに、言語能力を高める取り組みなどにより、さまざまな課題に対応する思考力、判断力、表現力などを育てます。
さらに、社会貢献活動等を通じ、社会の発展に貢献する意欲と行動力を身につけさせます。
このような取り組みを学校、家庭、地域社会の連携により推進し、次代を担う児童生徒を育成してまいります。
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