> 都議会質問 > 都議会本会議 > 代表質問で舛添知事に都政の課題を質問しました

都議会質問記録

2014/06/18 代表質問で舛添知事に都政の課題を質問しました

2014年6月18日、都議会本会議で都議会民主党を代表して舛添知事等に6テーマ21問の都政の課題について質問しました。舛添知事の都政運営、オリンピック施設見直し、知事から提案されたいじめ対策推進条例と都立高校入試の採点ミスのほか、日中間の都市外交、認知症などの介護の課題、雇用対策、男女共同参画、4月に訪問した小笠原諸島などの課題について議論しました。知事からは前向きな答弁を引き出すことができました
(議場では全質問をまとめて行った後で一括で答弁されましたが、以下は一問一答に並べ替えたものです)

〇中村ひろし 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 去る六月八日、桂宮宜仁親王殿下が薨去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心からご冥福をお祈りいたします。
 まず最初に、知事の基本姿勢について伺います。
 舛添知事は所信表明において、東京オリンピック・パラリンピックの会場計画について、改めて、みずからの視点で内容を再検討していくと述べました。都議会民主党も、整備コストの上昇などが懸念される中、計画の見直しについては歓迎したいと思いますが、一方で、この発言については、国内競技団体、関係団体が大変驚いたとされる報道も見られます。オリンピック・パラリンピックの成功のためには、今まで積み重ねてきたオールジャパン体制での取り組みが欠かせません。知事に発言の真意を伺います。
 また、新国立競技場について、今月六日、下村文科大臣は会見で、新国立競技場の建設費の負担を東京都にも拠出のお願いをしたい、既にもう打診して、事務的には事務折衝を既にしている段階と述べました。
 一方、同日午後、舛添知事は定例会見において、都の負担の五百億円も含め、文科大臣からも組織委員長からも何の話もないと述べています。
 私は、新国立競技場の建設費は国の負担で行うべきと考えますが、要請の有無も含め、知事の見解を伺います。

〇舛添要一知事 中村ひろし議員の代表質問にお答えします。
  まず、会場計画の見直しについてでございますけれども、知事に就任して以来四カ月、ソチ冬季大会の視察や北京市訪問などを行い、またみずから現場にも足を運ぶなどして、招致計画をどのように実現していくべきかを考えてまいりました。
  その結果、東京にとってのレガシー、都民生活への影響、そして整備コスト高騰の懸念といった視点から、現実妥当性を持って、よりよい計画とするためのブラッシュアップを行う必要があると判断いたしました。既存施設の活用や整備費の圧縮など、見直しの基本的な考え方に沿いまして、今後、具体的に進めてまいります。
  アスリートファーストなど、招致計画で掲げました理念には変わりはございません。
  今後とも、大会組織委員会との緊密な連携のもと、国内競技団体を初め、関係者と真摯に議論を重ね、オールジャパン体制で史上最高の大会の実現に取り組んでまいります。
  新国立競技場の建設費の負担についてでございますが、これまでも説明しておりますとおり、新国立競技場の建設については、国が責任を持って整備を進めていくのが原則であると考えております。
  先日、国立競技場将来構想有識者会議で基本設計が示され、その内容につきましては、事務方を通じて報告を受けております。
  整備費の負担につきましては、いまだ国から正式な要請はなく、今後、お話があれば、その時点で協議すべきは協議すると、そういう考えでございます。

〇中村ひろし 次に、都市外交について伺います。
 今定例会には、中国残留邦人の支援に関連して四つの条例改正が提出をされています。私は、長らく中国残留邦人の支援にかかわってきたのですが、二度と繰り返してはならない、さきの戦争によって被害を受けた中国残留邦人の方々は、日本と中国との関係が良好であることを望んでいます。
 舛添知事は所信表明で、都市外交の積極的な展開、とりわけ中国との関係について多くを述べており、石原元知事とは違う未来志向の発言は率直に評価したいと思います。
 知事は、この中で多様な都市外交の展開に取り組むとも述べていますが、中国には民間企業の進出が進み、日本を訪れる中国人も増加するなど、さまざまなレベルでの交流が実質的に進んでおり、私は相互理解を深めていく必要性が一段と増していると考えています。
 そこで、こうした状況を踏まえ、今回の北京出張をどのように都政に生かしていくのか、知事の見解を伺います。

〇舛添要一知事  都市外交を都政に生かすことについてご質問がございました。
  東京と海外の都市とが、教え教えられる関係を築きつつ友好を深めることは、東京を一段と高い次元の国際都市に引き上げるとともに、国家間の良好な関係にも資すると考えております。
  こうした都市外交の第一弾として、私は四月に北京市を訪問いたしました。市長とはPM二・五の問題等、都市の課題解決に向けた協力の推進で合意をいたしました。
  また、江戸東京博物館と北京首都博物館との連携、両都市の産業見本市を活用した企業間交流などを進めていくこととなりました。既に具体化に向けた調整を開始しております。
  さらに、来年予定しております太田記念館開館二十五周年記念式典に市長をお招きしたい旨、お伝え申し上げました。
  今後も、幅広い分野での交流を推進することで、相互理解を着実に深めていきたいと思っております。

〇中村ひろし 舛添知事は、今定例会に補佐官を活用したトップマネジメント体制を構築するため、知事本局を廃止し、政策企画局を新設する組織条例の改正を提案しています。
 東京都の組織的な問題は、ここ十数年の知事のもと、各局の現場から生まれる問題意識を酌み上げようとしない、各局も新たな挑戦をしようとしない風土になってしまったことだともいわれており、私は、舛添知事が現場とのコミュニケーションを大事にしながら、その変革に積極的に取り組まれることを期待するものです。
 今回、政策企画局をつくった狙いは何なのか、知事の見解を伺います。

〇舛添要一知事  次に、今回、政策企画局をつくる狙いでございますけれども、私の組織運営における基本は、まずは現場をつかさどる各局が、責任を持ってさまざまな課題に真っ正面から向き合い、物事を前へ進め、具体的な成果に結びつけていくことであります。
  一方で、都政全体を俯瞰して、各局のさまざまな取り組みを有機的に連携させ、束ねていく司令塔の体制を機能させることも欠かせません。
  しかし、この間、実際に都政運営を担ってみて感じたことは、司令塔の体制が、ややもすればさまざまな作業に追われ、頭脳集団としての本来の機能を十分に発揮していないということであります。
  巨大組織である都庁をスピーディーで仕事ができる組織にするためには、トップマネジメントを補佐する機能により純化した体制の整備が必要であると感じ、新たに政策企画局を設置することといたしました。
  今後は、知事補佐官をリエゾン役として活用し、知事と現場を抱える各局が直接つながり、議論を尽くし、政策を練り上げていくという、これまで以上に積極果敢な都庁に変革してまいります。

〇中村ひろし 次に、教育について伺います。
 まずは、いじめ問題です。昨年、国は学校などにおけるいじめ対策を法制化し、都もいじめ防止対策推進条例案を提案、基本方針などを策定していくことになりました。都は、方針案と対策案について都民に意見を求めましたが、私たちはいじめに社会全体で取り組む姿勢が必要なことから、条例案についても意見を求めるべきであったと考えています。
  都内では、最近でも平成二十二年十月に、そして大津市のいじめ自殺事件を受け調査をしている最中の平成二十四年九月、十二月に、いじめによって子供がとうとい命をみずから絶つ事態が発生しています。いじめは、子供に対する人権侵害であり、社会全体で子供の権利を守っていかなければなりません。
  都内で再び、いじめで子供たちが追い込まれ、悲しい事件が繰り返されないために、東京都はいじめ対策を講じて終わりにするのではなく、今後も子供たちと向き合い、対策の検証、改善の取り組みを続けることで、いじめを撲滅していく覚悟を持たなければなりません。舛添知事の見解を伺います。

〇舛添要一知事  次に、いじめを撲滅していく覚悟についてでございますが、いじめは子供の生命や心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を及ぼすものであり、絶対に許されない行為であります。
  これまで、いじめが原因でみずから生命を絶つという痛ましい事件が発生してまいりましたが、今後、二度とそのようなことが起こることのないよう、学校、家庭はもとより、社会全体で取り組んでいかなければなりません。
  いじめ防止対策推進条例では、都、区市町村、学校、保護者等のそれぞれの責務を明確にするとともに、地域や関係機関等と緊密に連携するための組織などについて定めました。今後、この条例に基づく施策の充実を図るとともに、不断の検証を行い、いじめ防止のための対策の推進に都として全力で取り組んでまいります。

〇中村ひろし  次に、子供たちのいじめ問題への参画です。
  法制化により、国公立、私立を問わず、学校ではその実情に応じて学校いじめ防止基本方針をつくらなければなりません。私は、この方針を形だけに終わらせるのではなく、生徒や教員、保護者など全ての学校関係者がかかわってつくるべきだと考えます。イギリスでも、学校いじめ対策方針の策定が義務づけられ、いじめ予防に高い効果があるとされています。
  現在、都内の市区において、児童生徒が中心に考えたいじめ根絶宣言づくりが行われていますが、こうした取り組みを方針づくりに生かすのです。
  私は、子供たちがいじめをみずからの問題として、教員や保護者たちと主体的、積極的に学校いじめ防止基本方針づくりにかかわっていくよう取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。

〇比留間英人教育長 四点のご質問にお答えをいたします。
  まず、いじめに関する子供たちの主体的な取り組みについてでありますが、いじめは子供たちの間で起きており、子供自身がその実態を最も理解していることから、いじめ問題の解決のためには、大人が子供を守るだけでなく、子供自身が主体的に行動できるようにすることが重要であります。
  そのため、学校では、授業において、いじめは絶対に許されないことを自覚できるようにするとともに、児童会、生徒会による主体的な行動を促すなどの取り組みが必要であります。
  さらに、学校がいじめ防止基本方針を策定する際には、保護者や地域からの意見を聞くとともに、子供たちの主体的な取り組みも参考にすることが求められます。
  都教育委員会は、区市町村教育委員会と連携して、こうした学校の取り組みを支援してまいります。

〇中村ひろし  次に、地域との連携です。
  東京都教育委員会いじめ総合対策では、ポイントの一つに、保護者、地域、関係機関との連携が挙げられています。
  保護者、地域、関係機関との連携は、時代の要請でもあり、既に三鷹市、武蔵村山市、世田谷区、利島村では全小中学校にコミュニティスクールを設置し、学校、保護者、地域が一体となってよりよい学校教育の実現に取り組んでいます。
  また、国のいじめ防止基本方針でも、地域や家庭との連携としてコミュニティスクールの活用など、いじめの問題について地域、家庭と連携した対策を推進することが必要であるとしています。
  いじめを初めとする学校問題への対応として、コミュニティスクールなどに見られるような地域との連携による取り組みが必要と考えますが、見解を伺います。

〇比留間英人教育長  次に、いじめなど学校問題への対応における地域との連携についてでありますが、いじめは学校内外を問わずさまざまな場面で発生することから、いじめに的確に対応するためには、学校と地域がともに子供を見守るとともに、情報を共有するなどして連携を図ることが不可欠であります。
  都教育委員会は、これまでも公立学校全校に民生児童委員や青少年委員、地域関係者から成る学校サポートチームを設置し、学校が地域や関係機関と連携して問題の解決を図る取り組みを進めるなど、子供たちを地域で見守り育てる仕組みづくりに取り組んでまいりました。
  今後とも、学校サポートチームのすぐれた活用事例を示した資料を配布するなどし、区市町村教育委員会と一体となって学校と地域の連携強化に向けて取り組んでまいります。

〇中村ひろし  次に、心理、福祉職との協働支援です。
  いじめ対策には、心理、福祉職との協働が欠かせません。都内には、スクールカウンセラーが校庭や教室に行って子供と積極的にかかわれるよう週二回の配置を始めた自治体もあります。国は、週一回の派遣では子供の気持ちに寄り添うことは困難であり、スクールカウンセラーも子供と保護者、先生への相談に対応するのは厳しいと述べています。
  また、いじめの背景に子供を取り巻く環境問題が絡み合っていることから、スクールソーシャルワーカーを配置した別の自治体からは、配置数が不足しているとの話を聞きました。国と県の財源によって配置を推進している県もあります。
  都がスクールカウンセラーの週二回配置を促すスクールソーシャルワーカー配置支援費をふやすなど、学校がいじめ問題により取り組みやすくなるよう支援すべきと考えますが、見解を伺います。

〇比留間英人教育長  次に、スクールカウンセラー等の配置についてでありますが、いじめは背景や要因が複雑な場合が多いことから、心理や福祉の専門家と連携して対応する必要があります。
  このため、全公立小中高等学校にスクールカウンセラーを配置し、子供が相談しやすい学校づくりを推進するとともに、スクールソーシャルワーカーの配置の拡大に努めてまいりました。
  都教育委員会は、今後とも、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーがいじめなどの問題解決のために十分に専門性を発揮することができるよう、効果的な活用について、学校や区市町村教育委員会に対して助言を行うなど支援をしてまいります。
  また、国に対し、引き続き区市町村補助の充実について要望をしてまいります。

〇中村ひろし  次に、都立高校の入試採点ミスの再発防止策です。
  採点ミスはあってはならない重大な事態であり、猛省を促したいと思います。また、答案用紙の廃棄など、その後の対応を見ても、教育委員会の体質にも問題があると指摘をしておきたいと思います。
  各高校は、採点に当たり、採点者一人及び点検者三人の四人体制で行っており、通常ミスは考えられませんが、ことし二月に実施した入試では、入試当日を含めて四日間の採点期間の中、学校で授業や行事が行われていました。期間中、休業日としている県もある中、果たしてその状況で採点に専念できたのでしょうか。
  私は、採点者が専念できる状況をつくることを初め、受検生が自己採点できる仕組みをつくることや、採点、点検に外部の目を取り入れることなど、あらゆる方策を検討し、再発防止に向けて徹底的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。

〇比留間英人教育長  最後に、都立高校入学者選抜での採点誤りについてでありますが、入学者選抜における採点の誤りは断じてあってはならないことであり、都教育委員会として、受検生とその保護者、都民の皆様におわびを申し上げますとともに、誤りは起こり得るものという前提に立った対策や検証が不十分であったことを深く反省をしなければならないと考えております。
  現在、都教育委員会は、外部の有識者を含めた都立高校入試調査・改善委員会により、原因究明のために学校での実態調査を行っております。
  今後、この調査の結果に加え、採点業務の現状や制度上の課題、大学や他県における取り組みなどさまざまな視点を踏まえ、八月末を目途に抜本的な改善策を策定し、都教育委員会と学校が一体となって、二度とこのような事態を起こさないよう全力で取り組んでまいります。

〇中村ひろし  次に、私立学校授業料の減免補助の拡充について伺います。
  この制度は、私立幼稚園から私立高等学校に通う子供たちの家庭の経済的負担の軽減を図るものですが、今回、国が就学支援金に所得制限を導入した分を加算したことから、私立学校が都の補助によって準備料減免を行う額が以前と比べて縮小しました。
  一方で、私立小学校や中学校、高等学校の学費平均額は前年と比べて上がっています。
  そこで、私立学校に通う保護者の皆さんの負担軽減を図るため、授業料減免制度を授業料以外の学校納付金へと対象を拡大し、制度を充実すべきと考えますが、都の見解を伺います。

〇小林清生活文化局長 私立学校の授業料減免補助についてでありますが、この補助制度は、私立学校に対する基幹的補助である経常費補助の中で実施しており、その配分方針については、毎年度、東京都私立学校助成審議会に諮問しております。
  これまでも、社会経済状況を勘案し、家計が急変した世帯に対し、学校が授業料を減免した場合の補助率を五分の四に引き上げるなど、適切に充実を図ってまいりました。
  今年度は、国の就学支援金や都の特別奨学金の制度改正による授業料に対する公費助成の充実を踏まえ、補助対象を毎年度納付させる学校納付金まで拡大し、学校の取り組みを後押しすることが必要と考え、先月の助成審議会に配分方針を諮問いたしました。
  審議会からは、諮問のとおり配分することが適当であるとの答申を得ておりまして、これを踏まえ、授業料減免に取り組む学校を支援してまいります。

〇中村ひろし  次に、高齢者対策について伺います。
  まずは、地域包括ケアシステムの構築です。超高齢社会の到来が間近に迫る中、地域包括支援センターの役割は極めて重要です。あるセンターでは、月六百件もの相談を受けている中、相談内容も多様化しています。また、医療と介護の連携を進めるため、医師や福祉職などが顔の見える交流を行い、地域の高齢者や家族を支える取り組みを行っています。
  高齢者が住みなれた東京で暮らすためには、このような取り組みを初めとして、都内で適切な医療や福祉、在宅介護支援などが受けられるよう体制整備を一層進めていく必要があります。
  都は、市区町村が地域の実情を踏まえ進めている地域包括ケアシステムづくりを、自治体の声も聞きながら引き続き支援していくべきと考えます。都の見解を伺います。
 
〇川澄俊文福祉保健局長 四点の質問にお答えいたします。
  地域包括ケアシステムの構築についてですが、今後の高齢化に対応し、医療、介護、住まい、生活支援、予防サービスを日常生活の場で切れ目なく提供する地域包括ケアシステムを構築するためには、区市町村が地域の特性を踏まえ、取り組んでいくことが必要でございます。
  こうした考えに立って、都は区市町村における見守りネットワークの構築や、在宅療養支援相談窓口の設置などを包括補助により支援しており、今年度からは、地域包括支援センターの介護予防機能を強化する事業を開始いたしました。
  こうした取り組みにより、今後とも地域包括ケアシステムの構築に向けた区市町村の取り組みを支援してまいります。

〇中村ひろし 次に、認知症の医療支援体制の整備です。
  都内のある自治体では、認知症の疑いがあり受診を拒否している高齢者へ認知症アウトリーチチームを訪問させる事業を行っていますが、地域型認知症疾患医療センターが近くにないことから、地域の専門医療機関とも連携しながら課題解決を図り、地域に合った認知症早期発見、診断の形を構築していこうと取り組んでいます。
  別の自治体では、地域包括支援センターごとに認知症サポート医を配置していきたいとの意向を持っています。
  私は、高齢化が進む都内において認知症の医療支援体制の充実をさらに図っていく必要があると考えますが、都の見解を伺います。

〇川澄俊文福祉保健局長  次に、認知症の医療支援体制についてですが、都は現在、十二の認知症疾患医療センターにおいて、かかりつけ医や認知症サポート医等からの相談に応じるとともに、連携協議会や研修会を通じ、地域の関係機関の認知症への対応力向上を図っているところでございます。
  また、センターに認知症アウトリーチチームを配置して、区市町村と連携し、認知症の早期発見、診断、対応の取り組みを進めております。
  現在、国は認知症の早期診断等の取り組みを進めるため、新たな類型の認知症疾患医療センターの設置や、地域包括支援センター等に配置する認知症初期集中支援チームについて検討を進めております。
  今後、国の動向も踏まえながら、都における認知症医療支援体制の充実を図ってまいります。

〇中村ひろし  次に、認知症の人や家族を支える取り組みです。
  昨年、認知症による行方不明者の警察への届け出は都内で三百八名あり、都も行方不明者などの情報を広域的に都内市区町村へ周知する取り組みを行っています。
  ある社会福祉士が、交差点に立つ高齢者の靴に氏名が書かれている点を不思議に思い、声をかけたところ、他の区の認知症高齢者だったことがわかった事例もあります。都市の認知症高齢者が電車等で広域に移動する可能性もあり、私は、地域の人々が認知症について理解し声をかけたり、ふだんから見守る取り組みが重要だと考えています。
  舛添知事は、母親が認知症に倒れ、介護の苦労を味わったので同じ苦労を皆にさせたくないとも述べており、私も、都がさらに認知症の人や家族を支える地域のネットワークを充実させていくべきと考えますが、見解を伺います。

〇川澄俊文福祉保健局長  次に、認知症の人や家族を支える地域のネットワークについてですが、都はこれまで、認知症サポーターを活用した見守りネットワークなど、区市町村が地域の実情に応じて取り組む地域のネットワークづくりを、包括補助により支援してまいりました。
  また、認知症に対する正しい理解を促進するため、都民向けのシンポジウムを開催するとともに、認知症に関するポータルサイトである、とうきょう認知症ナビやパンフレット等を通じ、広く都民への普及啓発に取り組んでまいりました。
  今後とも、こうした取り組みを通じ、地域におけるネットワークづくりが進むよう区市町村を支援してまいります。

〇中村ひろし  次に、介護保険サービスについてです。
  現在、国会では要支援向けサービスを市町村事業に移行する法律が提案されており、介護保険の持つナショナルミニマム機能を放棄するものだと批判されています。軽度な方々には多様なサービスの中で対応していくとの国の説明に、平成十八年度の予防重視型への改正時に大変苦労した自治体は戸惑いを見せています。
  事業移行に関して、果たして新たな地域支援事業の担い手を確保できるのか、サービス水準の自治体間格差が生じるのではないか、行政サービスとして成り立つのかなどが指摘されています。要支援高齢者の中には、軽い認知症の方が約半数いることから、新たな事業では十分な対応はできないともいわれています。
  都としても、市区町村の声を受けとめ、要支援の方が必要なサービスを受けることができるように、円滑な制度移行を支援していくべきです。見解を伺います。

〇川澄俊文福祉保健局長  最後に、介護保険制度改正への対応についてですが、現在、国会で審議されている介護保険制度改正法案では、要支援者向けの訪問介護と通所介護について、介護給付サービスから地域支援事業に移行することとされております。
  法案が成立した場合、本年夏ごろには制度改正に伴う介護予防のガイドラインの素案が国から示される予定であり、都は国の動向を踏まえ、区市町村に適切に情報提供してまいります。
  都は、今年度から、介護予防に関して幅広い知識と経験を有し、介護予防事業の企画立案や予防機能強化のための実践的な研修等を行う主任介護支援専門員や、保健師等を介護予防機能強化支援員として配置する区市町村を支援しており、こうした取り組みを通じて、区市町村が円滑に制度移行できるよう支援してまいります。

〇中村ひろし  次に、雇用について伺います。
  まずは、労働環境の改善です。二〇〇五年の第一次安倍政権当時、撤回されたホワイトカラーエグゼンプション制度が再び議論され、第二次安倍政権で導入が検討されています。しかしながら、働く者を犠牲にした成長戦略などあっていいはずがありません。
  一方で、国内における長時間労働の現状は変わらず、昨年、労災が認められた脳、心臓、精神疾患は八百件、死亡例は自殺も含めて二百件を超えました。
  過労死防止法案が衆議院で可決された現在において、都は都内の労働環境の改善に向けて取り組みを推進していく必要があると考えますが、知事に見解を伺います。

〇舛添要一知事  労働環境についてでありますが、働く意欲のある人が、健康な生活を送りながら働き続けられる社会をつくり、豊かさを実感できるようにすることは極めて重要であります。
  企業が良好な労働環境を整え、従業員が能力を発揮することは、東京の産業の国際競争力を高め、世界をリードすることにもつながります。
  このため、都は、長時間労働の削減や、従業員の希望に応じた多様な勤務形態の導入など、すぐれた取り組みを行う中小企業を認定し広く公表するなど、生き生きと働くことのできる職場づくりを目指す、そういう社会的機運の醸成を図っております。
  また、先般、視察いたしました労働相談情報センターでは、職場におけるさまざまな労働問題に関して労使双方からの相談に対応しているほか、適切な労働時間管理や従業員の健康管理などをテーマとしたセミナーを開催し、必要な知識の普及を図っております。
  今後も、こうした取り組みにより、労働環境の改善を促し、働きやすい都市東京を実現してまいります。

〇中村ひろし   次に、若年者などの就職トラブル防止についてです。
  賃金や就業時間などがハローワークの求人票の内容と異なっているとして、平成二十四年、全国で七千七百八十三件、都内で千五百件を超える申し出、苦情が寄せられました。連合の相談でも、固定給が残業代込みだった、試用期間が明記されていなかったなど求人票をめぐるトラブルが相次ぎ寄せられました。そこで、国は新たな固定残業代の適切な記入を事業者に求めました。
  雇用契約書がない、就業規則を示さないなど悪質なケースもあり、連合は求人広告をとっておいた方がよいとアドバイスもしています。
  私は、都としても、就職活動に臨む若年者等への注意喚起や労働相談、実態把握など就職トラブルの防止に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。

〇塚田祐次産業労働局長 四点のご質問にお答えいたします。
  まず、就職に伴うトラブルの防止についてでありますが、若者を初め、これから仕事につこうとする方が労働契約等の知識を身につけ、適切な労働条件のもと、安心して働けることは重要であります。
  このため、都は、就職の際に気をつけるべき労働法令等のポイントを紹介した冊子を作成し、大学の就職窓口を通じて配布するなど、必要な知識の普及啓発を行っております。
  また、都内六カ所の労働相談情報センターでは、求人票と実際の労働条件の相違等、職場でトラブルを抱えた方々からの相談に応じており、問題解決への助言を行っております。
  今後とも、若者等が安心して働けるよう環境整備に向けた取り組みを進めてまいります。

〇中村ひろし  次に、正社員化の促進です。
  都の調査では、パートタイム社員の約四分の一がパートタイムを選んだ理由として、正社員として適当な仕事が見つからなかったとするなど、正社員として働きたいパートタイム社員が多数います。
  一方で、一定の条件で労働者の申し込みがあれば、期間の定めのない契約に転換できる有期労働契約の無期転換ルールについては、事業所と従業員の認知度に大きな差があり、その周知の徹底が求められています。
  知事も、働き方が多様化したからといって働く人の三分の一が非正規というのは尋常ではないと述べているとおり、正社員化の促進は極めて重要です。
  私は、有期労働契約の無期転換ルールの周知徹底を初め、非正規の正社員化の推進に向けて積極的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。

〇塚田祐次産業労働局長  次に、非正規労働者についてでありますが、労働者が希望によって働き方を選択できることは重要であり、法令では、パートタイム労働者が正社員となる機会の確保や、有期労働契約を正社員等の無期契約に転換できるルールについて定めております。
  都は、こうした法令の規定を、普及啓発資料の作成、配布や、アドバイザーによる企業訪問などを通じて、労使双方に広く周知をしております。
  また、正社員化など非正規労働者の雇用環境改善に取り組む中小企業に専門家を派遣し、具体的な助言を行っております。
  引き続きこうした取り組みを通じ、正社員化など非正規労働者が希望する働き方を選択できるように支援してまいります。

〇中村ひろし  次に、男女平等参画について伺います。
  まず、女性の活躍推進についてです。政府は、公共調達を使った女性の活用促進を検討しており、来年度から順次導入すると報じられています。このことは、女性役員の割合五・七%にすぎない都内企業にも、はっきりと意識改革を求めるものです。
  都庁の女性管理職は一五・二%で、人数、比率ともに全国随一ですが、この理事者席に座る女性局長はわずか一人です。
  子育て支援が充実し、出生率が二以上に回復しているフランスでは、税の優遇や直接給付や働き方の見直しなど、制度の充実に加え、実際に機能させるための意識改革も進んでいると考えられます。
  我が国では、法制度等の整備は一定程度進んだものの、休暇の取得率、いわゆるM字カーブやガラスの天井問題もいまだ解決をしていません。制度があっても変わらない現状に対しては、トップの強い決断が必要であり、意識改革を進めることが必要です。
  このような状況を踏まえ、東京都においても、企業における女性の活躍を進めるとともに、女性も男性も仕事と家庭生活の両立が可能な社会の実現に向け、一層の取り組みが求められていると考えますが、知事の見解を伺います。

〇舛添要一知事  女性の活躍推進についてでございますが、少子高齢化の急速な進展に伴い生産年齢人口が減少する中で、社会の活力を高めるためには、女性の力を最大限に引き出すことが不可欠であります。
  女性の活躍推進に当たりましては、制度の整備にとどまることなく、企業みずからが育児、介護への参画を男性にも促すなど、意識改革を行うとともに、男女の別なく意欲ある人が能力を十分発揮できるよう、ワークライフバランスの推進や就業のための環境づくりに積極的に取り組んでいくことが重要であります。
  このため、都は、企業経営者に直接意識改革を働きかけるなど、社会全体の機運の醸成に取り組むとともに、安心して子供を預けることのできる環境の創出や、企業における女性の登用、就業継続の後押しなど、女性の活躍推進に向けた環境整備を進めてまいります。
 
〇中村ひろし  また、希望する女性が仕事を続けるためには、会社が妊娠、出産を温かく見守る環境づくりも必要です。
  例えば、マタニティハラスメント、いわゆるマタハラを、妊娠、出産での解雇、雇いどめや、精神的、肉体的なハラスメントと定義して行った連合の調査では、四人に一人が経験したとの結果が出ています。また、妊娠、出産による解雇などに関する労働局への相談は、二〇〇四年度の八百七十五件から、二〇一一年度、三千四百二十九件へと、四倍にふえています。
  そこで、このような実態に対する都の認識と、妊娠、出産に伴って女性がキャリアを諦めなくてもよい、適切な雇用就業環境の確保に対する都の取り組みについて伺います。

〇塚田祐次産業労働局長  次に、女性の雇用環境についてでありますが、妊娠や出産等を理由とした不利益な取り扱いは労働者の尊厳を傷つけるものであり、女性が安心して働き続けられる雇用環境の確保が必要と認識しております。
  このため、都は、事業主を対象に、いわゆるマタニティーハラスメントを含め、さまざまなハラスメント防止に関するセミナーや、関連法令を解説した冊子の配布等を通じ、必要な知識の普及啓発を行っております。
  また、労働相談情報センターにおいて、妊娠や出産に伴う退職強要や職場の嫌がらせなどに関する相談にも対応しております。
  今後も、こうした取り組みにより、女性労働者の雇用環境の確保を進めてまいります。

〇中村ひろし  最後に、小笠原諸島について伺います。
  小笠原諸島は、関係者の長年にわたる努力により、平成二十三年六月に世界自然遺産に登録され、観光客数が約一・七倍に伸びています。
  都議会民主党は、先日、この小笠原を視察し、都の支庁や村の関係者、地元の方々から詳細なご説明をいただきました。
  都と村で進める、エコツーリズムを通じた自然遺産保護の活動と回復した植生なども拝見し、成果を感じる一方、観光客の増大、山や戦跡など新たな観光を楽しむ方の増加により、植生等に新たな悪影響を生じさせないため、今後の注意が必要だと感じました。
  また、グリーンアノールなどの外来種対策の強化も不可欠だと考えます。
  条約では、世界遺産委員会に保全状況を定期報告することが義務づけられています。世界遺産登録後も手を緩めずに、自然環境の保全に取り組むべきと考えますが、都の見解を伺います。

〇長谷川明環境局長 小笠原の自然環境保全の取り組みについてでございますが、世界遺産小笠原の貴重な自然の保護を図るため、都は、遺産登録後もノヤギなどの外来種の排除を実施しております。
  その結果、希少植物のウラジロコムラサキなどの確認数が増加したほか、小笠原で絶滅したアホウドリと思われるひなを、媒島で戦後初めて確認することができたところでございます。
  また、観光客が増加する中、自然の保護と利用の両立を図るため、一層のマナー向上を喚起するとともに、東京都版エコツーリズムにより利用コースや利用者数を制限し、オーバーユースを防いでおります。
  今後とも、都、村、環境省など関係者が連携協力して、グリーンアノールなどの外来種対策等を推進し、世界自然遺産の価値を着実に後世に継承してまいります。

〇中村ひろし  世界遺産は、次世代への継承が本旨とはいえ、その意義は、価値の保全のみにとどまりません。自然保護と地域振興のバランスを図り、持続可能な地域づくりや一層の発展につなげることも、大きな意義の一つです。
  国内の世界遺産登録地では、登録の翌年には観光客数が増加しますが、その後は二極化しています。小笠原は、やや減少傾向にあり、今後の減少を防ぐための観光振興策を一層充実しなければなりません。
  また、島の農業には、台風や塩害などの困難はあるものの、亜熱帯の気候を生かした質の高いミニトマトやパッションフルーツなど、高付加価値の農産物は、観光土産品としての人気に加え、本土の出荷先でも高い評価を得ているとのことです。
  こうした小笠原を取り巻く環境を踏まえ、主要な産業である観光や農業を一層振興すべきと考えますが、見解を伺います。
  小笠原村と本土とのアクセス手段である「おがさわら丸」は、週に一便程度、所要二十五時間半です。高齢の方や病気の方には大きな負担であり、村民は本土の家族に何かあっても、次の定期便を待つしかありません。また、急患の病院収容までには、平均で九時間もかかります。
  このほか、農業、漁業も含めた観点から、航空路開設に向けた強い要望がありますが、過去のさまざまな経緯や課題もあって、抜本的な本土とのアクセス改善は実現しておりません。東京都による航空路の調査が行われていることでもあり、ぜひ、知事も小笠原村を訪れ、航空路の問題を含め、超遠隔離島での都民生活の実情や課題について視察していただきたいと思います。
  以上で都議会民主党を代表しての質問を終わります。

〇塚田祐次産業労働局長  最後に、小笠原における産業振興についてでありますが、小笠原の主要な産業である観光や農業の振興を図るためには、島の貴重な自然や亜熱帯の気候などの特性を生かした施策を展開していくことが重要であります。
  都は、自然環境の保全と観光利用の両立を図るため、エコツーリズムの視点に立った観光ガイドの育成を支援するなど、持続的な観光の実現に向けて取り組んでおります。
  また、農業振興については、気象条件等を考慮した生産を行うため、農業用水を確保する貯水施設や台風にも強い農業用ハウス等を整備するほか、観光シーズンに合わせた出荷も可能とする栽培技術の普及等に努めております。
  今後とも、こうした取り組みを通じ、小笠原の観光や農業の振興を図ってまいります。

ユーティリティ

都議会質問内検索

Search

過去ログ