2014/11/10 病院経営本部、水道局、下水道局の決算を質問しました
2014年11月10日、都議会公営企業会計決算特別委員会が開催され、各分科会での審議を経て全局質疑が行われました。都議会民主党から選抜されて各局に質問しました。病院経営本部に危険ドラッグの対応や小児医療への取り組みを、水道局に災害時の給水や連絡体制を、下水道局に雨天時の汚水処理などについて質問しました。いずれも都民の皆様からの期待に応えられるサービスを提供するという観点から質問しました。
○中村委員 それでは、公営企業会計決算全局質疑に当たり、病院経営本部、水道局、下水道局に質問します。
初めに、病院経営本部の決算について質問します。
都立病院は、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を都民に提供していく重要な役割があります。昨今では、高齢化に伴う認知症の対応、デング熱やエボラ出血熱などの感染症への対策、危険ドラッグなどの薬物対応なども含めて、さまざまな課題がある中、医療に関する課題への対応はより一層重要性を増しています。
また、高度な専門医療機関が多くある都心部に比べて、多摩地域では地域の医療全体をリードしていくという点でその重要性は大きいといえます。多摩地域では、都立病院の再編整備により、旧府中病院が多摩総合医療センターに、八王子小児病院、清瀬小児病院、梅ケ丘病院が小児総合医療センターにそれぞれ移転統合し、多摩メディカルキャンパスが整備されました。
移転統合が行われた平成二十一年度と比較すると、平成二十五年度の都立病院全体の病床利用率、診療単価、自己収支比率は、いずれも大きく改善しています。経営状況の改善は評価はいたしますが、安定的な経営基盤を維持しながら、都民に真に必要な医療を提供し続けていただくことこそ重要です。
決算特別委員会に当たりそのような視点から幾つか質問します。
まず、この多摩メディカルキャンパスは、限りある医療資源を最大限に活用しながら、都民が求める行政的医療を効果的に提供していくことを目的として整備されました。中でも、小児総合医療センターは、小児三病院の統合により、子供のあらゆる疾患に対応できる病院として医療機能の充実が図られたと認識しています。
初めに、再編整備により、小児総合医療センターに集約された小児医療の機能はどのように強化されたのか伺います。
○醍醐病院経営本部長 小児総合医療センターにつきましては、再編整備事業における小児三病院の統合により、心から体に至る医療機能の集約を図るとともに、平成二十二年八月に、こども救命センターの指定を受け、平成二十五年度には、百三十一件の小児重症患者を受け入れるなど、都における小児医療の拠点として機能強化を図っております。
また、多摩メディカルキャンパス内に開設された小児総合医療センターと多摩総合医療センターが相互に連携することによりまして、小児医療から成人医療への移行期医療の充実や総合周産期母子医療センターの一体的な運用を図るなど、それぞれの医療資源を有効に活用し、多摩地域における医療の質の向上を果たしているところでございます。
○中村委員 都立病院改革推進プランでは、多摩メディカルキャンパスを都における最も高度に機能集約した医療施設群として整備するとしています。引き続き一層の機能強化を図ってもらいたいと思います。
また、答弁にあったとおり、小児総合医療センターには、旧梅ケ丘病院が移転統合され、区部にある大塚病院には、児童精神科外来が設置されました。私は、平成二十二年に厚生委員会に所属をしていましたが、昨今、発達障害を初めとする子供の精神疾患がますます大きな問題になってきていると感じています。子供の精神疾患は、早期発見、早期治療が極めて重要であることはいうまでもありません。今後も、小児総合医療センターを中心に、引き続き小児精神疾患への十分な対応をお願いします。
次に、松沢病院の精神医療、中でも薬物依存症医療について伺います。
近年、厚生労働省は、がん、脳疾患、心臓疾患、糖尿病の四大疾患に精神疾患を加えて五大疾患としたこともあり、その対応は、ますます重要となります。特に近年、精神疾患としての依存症の問題が深刻化しており、アルコール、薬物、ギャンブルなどさまざまな依存症があります。とりわけ昨今では、危険ドラッグが大きな問題になっています。
そこで松沢病院において、危険ドラッグなどの薬物依存症にどのように対応しているのか、その取り組みについて伺います。
○醍醐病院経営本部長 松沢病院では、薬物、アルコール依存症病棟におきまして薬物依存症患者を受け入れ、解毒や精神疾患などの専門治療を行っております。平成二十五年度に、新たに薬物、アルコール依存症病棟に入院した患者二百六十五人のうち百一人が危険ドラッグによる中毒患者を含む薬物関連疾患の入院患者でございました。
また、薬物依存症の治療には、患者同士の交流や生活リズムの確保、依存症への正確な知識の提供が有効であるため、平成二十四年度から退院後の患者などを対象とした依存症デイケアを開設し、依存症からの早期回復を支援しております。
○中村委員 危険ドラッグを初めとする一般社会への薬物汚染は、薬物やアルコール問題が関与した事件や事故が後を絶たず、その問題は一層深刻さを増しています。
危険ドラッグは、その成分が多様で、その症状のあらわれ方もそれによって多様ではあるようです。こうした問題は、取り締まりの強化などの対応が必要なのはいうまでもありませんが、松沢病院には、引き続きこうした専門的な精神医療にも的確に対応してもらいたいと思います。
次に、精神科身体合併症医療について伺います。
精神疾患患者の身体の合併症への対応は大きな課題です。東京が他地域に比べ救急車の搬送時間が長くなっている原因の一つがこの合併症救急であるともいわれています。
そこで、松沢病院を初め都立病院では、精神科身体合併症医療にどのように対応しているのか伺います。
○醍醐病院経営本部長 松沢病院では、一般の病院や他の精神科病院では治療が困難な身体合併症患者に対応するため、閉鎖病棟を含む二百六十二床の病床を確保しておりまして、平成二十五年度は、九百四十三人の新入院患者を受け入れました。
また、夜間及び休日には、福祉保健局との契約による精神科身体合併症医療事業として、松沢病院を初め、広尾病院、墨東病院、多摩総合医療センター、それから保健医療公社の豊島病院におきまして、都内全域を対象に、身体及び精神症状が重い救急患者の迅速な受け入れを図っております。
さらに、救命救急治療の必要な患者につきましては、救命救急センターを有する都立病院における身体的治療と松沢病院における精神科治療との連携を図りながら、身体合併症患者への適切な治療を行っております。
○中村委員 身体合併症医療への対応は、身体及び精神のいずれにおいてもその症状に応じた医療を提供する必要があり、民間病院では難しいケースもあります。精神と身体とで両方診られる病院はなかなか見つからないと、まずは身体の治療を行って、その次に精神の治療をと、病院を移動させざるを得ないケースもあるようなので、できれば一つの病院で両方の対応ができることが望ましいと思います。
改革推進プランでは、松沢病院の取り組みを強化するとされています。都立病院全体での体制を含め、さらなる強化を図るよう要望します。
病院経営本部への最後の質問として、患者の地域移行への支援について伺います。
超高齢社会を迎えた今日、単身の高齢者などもふえており、急性期を脱した後の療養生活に対する支援はより必要になっています。また、精神医療においては、海外と比べ社会的入院が多いといわれる中、長期入院している精神疾患患者の地域移行や、福祉への橋渡しなどの支援をあわせて行っていくことも、都立病院の重要な役割です。
しかしながら、そうした取り組みは、都立病院だけでできるものではなく、地域の医療機関や医師会、在宅医療を担う介護事業者などとの連携協力が不可欠です。
都立病院における医療連携の状況と在宅療養支援の取り組みについて伺います。
○醍醐病院経営本部長 各都立病院では、医療連携協議会、臨床症例検討会、連携だよりの発行などを通じて、地域医療機関との連携の構築に努めてまいりました。この結果、平成二十五年度における都立病院の患者紹介率が七四・二%、紹介元の医療機関に返したり、地域の医療機関に照会する、いわゆる返送逆紹介率は三九・八%となっておりまして、毎年度増加傾向にあります。
また、在宅療養の支援につきましては、ケースワーカーや退院支援看護師を中心に、地域包括支援センターとのカンファレンスなどを通じて、退院後の地域生活への円滑な移行に取り組んでまいりました。
今後、設置を進める患者支援センターにおいても、これまでのノウハウを活用しながら、個々の患者の状況に応じたきめ細かい支援を行ってまいります。
○中村委員 医療連携に関する都立病院全体の実績と在宅支援の取り組みについて理解できました。患者支援センターを中心に体制を強化することにより、患者や家族が安心して療養生活を送ることができる環境を整備してもらいたいと思います。
地域の中で重要な役割を果たしている公的病院をしっかり守り、必要な医療機能を確保していくことは、都民の皆様からも大きな期待の声が寄せられていますので、引き続き最重要課題として取り組んでいただきたいと思います。
数ある課題と向き合い、これからも都民に真に必要な医療を提供し続けていく都立病院の活躍に期待して、病院経営本部への質問を終わります。
次に、水道事業関係に関して質問します。
高度成長時代に整備された水道管や浄水場が老朽化し、今後更新の必要が迫られる中、平成二十五年度も将来の大規模浄水場の更新に備えて五十億円積み増しをしたとのことですし、決算年度は起債をかなり抑えたようです。
しかし、今後は起債もふえる見込みであり、厳しい経営が予測される中、決算年度からスタートした東京水道経営プラン二〇一三では、三年間で百億円の経営努力を行うとのことでしたので、安全な水の供給が行えることには当然支障がないようにしながら、着実に事業を進めていただきたいと思います。
水道局は、平成二十四年三月に策定した東京水道施設再構築基本構想をもとに、順次施設整備を進めています。さらに、多摩地域での取り組み方針として、平成二十五年五月に多摩水道改革計画二〇一三が策定されました。計画期間は、平成二十五年から五年間となっています。施設整備なので時間はかかると思いますが、計画目標で期限がある項目は、テレメーター、自動水質計器の電源確保と契約方法の見直しのわずかに二つのみで、他の項目は全て五年間の矢印が引かれているだけになっています。もう少し具体的に年次を定めていただいた方がいいと思います。
特に多摩地域では、武蔵野市、昭島市、羽村市、また、一元化の要望が出されている檜原村の三市一村以外は都営水道に一元化されました。しかし、市営や町営時代に築造された小規模な浄水所等の水道施設が多数あり、多くの施設で老朽化が進行するとともに、区部に比べ脆弱な状況にあります。
私は、平成二十三年度の決算特別委員会の全局質疑においても、事務委託解消後の多摩地区水道の取り組みについて重要な課題として認識し、質問しました。その後、先ほど述べた多摩水道改革計画を策定し、都営水道にふさわしい施設を再構築するための取り組みを推進しています。計画では、小規模施設の統廃合を図ろうとしています。
そこで、まず最初に、多摩地区の小規模水道施設の統廃合の考え方について伺います。
○吉田水道局長 多摩地区には、浄水所が七十カ所、給水所などが百二十六カ所点在しておりまして、ほとんどは、市や町が水道事業を経営していた時代に整備された小規模施設であり、施設管理の効率化が図られておりません。また、浄水所の約八割が築造後四十年以上経過し老朽化が進行しております。
さらに、事故時にバックアップとして機能する給水所の配水池容量が不足しているなど多くの課題を抱えております。
このため、老朽化が進行し、配水池容量が不足しております施設から優先的に更新や整備を行うこととしております。整備に当たりましては、今後の維持管理の効率性向上の観点から、施設の統廃合も視野に入れているところでございます。
○中村委員 老朽化が進行する浄水所や給水所の状況などについてわかりました。今も存在する施設には、整備年次の違いから耐用年数の違いがあり、白紙の上に配置をするわけでもないのですが、水の安定供給が確保され、かつ財政的にも最適な再編事業を行うよう求めます。
しかし、拠点施設を統廃合するだけでは安定給水にはなりません。これまでは各市や町が給水の範囲だったため、管路が狭い範囲でそれぞれの給水拠点を中心に整備されているため、拠点が統廃合されれば、当然それをつなぐ水道管路の見直しも必要になります。
区部に比べると、多摩地区の配水区域の大きさは三分の一未満とのことで、配水区域の再編整備や水道管路の強化が必要になります。とりわけ、都営一元化の大きな目的の安定した給水の確保だけに、渇水や事故、大震災などいつ起こるかわからないことに備えるためには、また、市町が設置した管路の老朽化も考えると早急に管路の強化が必要です。
そこで、統廃合を進めるほかに、多摩地区の安定給水を確保する上での水道管路の整備について取り組みを伺います。
○吉田水道局長 多摩地区では、これまで市や町ごとに給水してきた経過から配水管網などの整備が区部と比べて不十分な状況でございます。また、バックアップする管路が十分でないため、漏水事故の際、断水が広範囲に及ぶとともに、老朽化した管の取りかえが困難な状況にございます。
このため、市や町の区域を越えた配水管の整備を重点的に行うなど、管路のネットワークを構築し、事故時や管路更新における給水の安定性を向上させてまいります。
○中村委員 市町の区域を越えた管路の整備を行い、ネットワークを強化するとのことでしたが、先ほども述べたように、多摩水道改革計画には、計画年次五年間、順次実施としか記載がありませんので、明確に実施する年次を定めて、できるだけ早急な取り組みをお願いします。
また、これまで多摩地域では、重要な水源として井戸も活用してきました。最近は高度浄水施設の整備が完了し、東京水もおいしくなったとはいわれていますが、かつて三鷹市では、深井戸から半分、東京都の水道から半分受け、ブレンドして給水していました。おいしいという基準は人にもよるので、一概にはいえませんが、当時はおいしかったという印象の人もおり、一元化しても深井戸を残すべきではないかという声を聞くこともあります。
もとより渇水、事故、災害などへの備えを考えると、こうした井戸は残しておく必要性があります。現在、市町が整備した水源井戸は二百八十本あり、今後、更新、統廃合していくとのことです。
そこで、多摩地区の小規模井戸をどう活用していくのか伺います。
○吉田水道局長 多摩地区には、今お話にありましたとおり二百八十本の水源井戸がありますが、施設の多くは、昭和三十年代から四十年代に整備されたもので老朽化が進行してございます。また、これら水源井戸のうち二十九本は、水質悪化、地盤沈下、水位低下などによる揚水量の減少などの原因により休止をしております。
このため、地下水は将来にわたる安定的な水源として位置づけることは困難でございますが、引き続き、地盤沈下や水質の動向に十分配慮しつつ、維持管理に努め、災害や事故時などにおきます備えとして、可能な限り活用を図っていくこととしてございます。
○中村委員 今後も、小規模井戸については、災害や事故時等の備えもあるので、可能な限り活用を図るとの答弁でした。また、安定的な水源と位置づけることはできないとのことですが、全く認識をしないということなくではなく、貴重な自己水源として水量を把握し、保全、活用を図ることが必要だと思いますので、ぜひとも検討していただきたいと思います。
さて、今、震災時の話もしましたが、震災等の災害時には、自助、共助に根差した活動が不可欠になります。このため、円滑な応急給水活動を行うためには、町会、自治会のほかボランティア団体との連携も必要になります。さらに、震災時の復旧体制を強化するためには、地元事業者の活用など、多摩地区の特性を踏まえた体制を整えるべきと考えます。
また、市の防災訓練にも、水道局の職員が参加をしていただいているのですが、これまでは、近くの市役所の職員がすぐに来られるという安心感があったので、震災が起きた際に、都の職員は各給水所などに到達できるのか、そうした不安の声もあります。
そこで、事務委託解消後の災害時の給水には、どのように取り組んでいるのかお伺いします。
○吉田水道局長 災害時に、給水拠点で当局職員の参集を待たずに、地域住民や多様な主体が容易かつ円滑に応急給水を行えるよう、多摩地区では、更新工事にあわせて整備する六カ所を除きまして、平成二十五年度までに、給水拠点七十六カ所を改造し、応急給水区画等を整備してございます。
また、避難所周辺の消火栓などを活用した応急給水を地域住民などが行えるように、市や町と覚書を締結し、必要な資器材を当局から貸与するとともに、当局と市や町が連携し、地域住民などが参加する応急給水訓練を毎年多数実施してございます。
加えて、震災などの応急復旧には、地元事情に精通いたします地元事業者の協力が不可欠であるため、地元事業者などと災害時におけます協定を締結しておりまして、このような事業者には工事契約におきまして実績を評価しているところでございます。
○中村委員 給水拠点を改造して応急給水区画を整備しつつあるため、私も改めて近くの給水所に行ったところ、正門の横に地図が張ってあり、敷地の裏側にあるというので回って応急給水区画の場所を確認しました。改めて、今回見に行って気づいたのですが、これまで目立った広報がされていた記憶はなく、今後地域の方々に知っていただくことは必要かと思います。
通常、震災時は、学校などの避難場所に来るため、給水所を利用した訓練も行われているようですが、通常の防災訓練ほど広範囲に広報しているという感じはしません。市や町から要請があれば協力するとのことでしたので、ぜひ積極的に、市役所や町役場、地域の町会、自治会に働きかけていただき、より多くの方に参加していただける訓練を実施していただきたいと思います。
また、先ほどの答弁で、震災時の応急復旧には、地元事業者の協力が不可欠で実績を評価するとのことでした。計画にも、地域の事情に精通し、現場にも近い地元事業者の育成等を図るとの記載がありますが、これまで地域の安定給水の確保のため、市や町に協力してきたため、引き続きそうした体制がとれるよう取り組んでいただきたいと思います。
さて、災害対策については、繰り返しになりますが、地元との連携が必要になります。大島の土砂災害のときに報道されたような、都と地元自治体との連携がとれていないと対応がおくれてしまいます。
そこで、事務委託解消後、市、町との連携体制は万全なのかお伺いいたします。
○吉田水道局長 事務委託解消後も、災害対策や水道管整備などの事業を円滑に行うためには、市や町との連携協力体制が不可欠でございます。このため、平成二十四年二月に、当局と多摩地区二十六市町で構成いたします多摩水道連絡会を設置いたしまして、全市町を対象とする総会と多摩地区を四つに分けたブロック会をそれぞれ年二回ずつ実施してございます。
連絡会では、災害対策など、市町との連携が必要な課題につきまして、各地域の特性なども踏まえて、情報共有や意見交換を行っております。こうした取り組みを通じ、市や町との連携体制を強化し、万全を期しているところでございます。
○中村委員 二十六の市、町と水道局とで多摩水道連絡会が設置されているとのことでした。全ての市、町が一堂に集まる全体としての連絡会も、情報の共有化や近隣自治体同士の連携という点では重要ですが、それとは別に水道局とそれぞれの市や町とも、より一層密接な関係を築くことが重要です。
今後も、都民の皆様に、平時も災害時も安定した給水ができるよう要望して水道局への質問を終わります。
最後に、下水道局の決算について質問します。
下水道事業では、初期に整備した下水道管、水再生センターなどの老朽化施設の更新などで大きな財政支出が見込まれます。また震災への対応、豪雨対策等、やらなければならない対策が多く、経営的には大変厳しい状況が予想されます。
そうした中、都は、平成二十五年二月に東京都下水道事業経営計画二〇一三を策定しました。計画期間は二十七年度までの三年間ですが、中長期的な目標としてそれ以降も掲げ、事業のめどを示しているのはわかりやすくてよいと思います。計画においては、少なくともこの計画期間の三年間は、区部下水道の料金水準や流域下水道の維持管理負担金単価を維持するとのことです。都民の生活実態からすれば妥当な判断だと思います。
とはいえ、区部で、料金収入の減少を見込んでいることから、経営的に楽観できる状況ではありません。平成十二年をピークに企業債残高を着実に減らしてきたことは評価しますが、今後の事業展開を考えると、経営努力の着実な実施が必要です。
そこで、下水道局では三年間で二百十二億円の企業努力を計画していますが、その取り組みの内容と平成二十五年度の実施状況について伺います。
○松田下水道局長 平成二十五年度からの三カ年を計画期間とする経営計画二〇一三における企業努力といたしましては、新技術、新工法の活用や、省エネルギー型設備の導入などによる建設から維持管理までのトータルコストの縮減や、芝浦水再生センター再構築に伴う上部利用ビルの建設など、資産の有効活用による収入の確保、業務執行体制の見直しによる職員定数の削減などにより、三カ年で二百十二億円の企業努力を実施することとしております。
経営計画の初年度である平成二十五年度は、計画額を五億円程度上回る約六十一億円の成果を上げました。今後とも、お客様に最少の経費で最良のサービスを安定的に提供できるよう、不断の企業努力に取り組んでまいります。
○中村委員 資産の有効活用として、芝浦水再生センター再構築に伴う上部利用についてもお答えがありました。下水処理場の上のビルなので、入居してくれるかとの不安がないわけでもなかったのですが、計画後に、田町駅と品川駅の間に建設される新設駅がこの場所に隣接してできることになり、デッキでつながるとのことです。商業的な価値が大きく上がることが期待できますので、有効活用していただきたいと思います。
さて、昨今の気象状況の変化による集中豪雨が頻発する中、これまでも多くの質疑が行われました。私からは、集中豪雨だけではなく、比較的まとまった雨で浸水の被害がなくても河川に放流されることから、環境面、衛生面で改善する必要がある合流式下水道の改善について質問します。
東京では、明治初期のコレラの流行への対策と浸水被害の解消を急ぐため、早期の下水道整備が求められました。このため、区部の大部分と多摩地域の一部では、汚水と雨水を一つの管で流す合流式下水道を主に採用することで、早期に下水道の整備が進められました。
一方、合流式下水道では、晴天時には、水再生センターに集められた汚水がきれいに処理され、河川や海などに放流されている反面、大雨が降った際には、汚水まじりの雨水が放流されるという課題があります。
下水道局では、こうした課題に対応するため、雨天時の下水を貯留する施設の整備等の対策を進めていますが、貯留施設は規模が大きく、完成には相当の期間が必要となるため対策を早めることが重要です。
そこでまず、区部における合流式下水道改善の平成二十五年度までの取り組み状況と今後の取り組みについて伺います。
○松田下水道局長 合流式下水道の改善対策のうち、これまでに、雨天時の下水をより多く水再生センターに送水する下水道管の整備や、はけ口から河川などへ流出するごみなどの流出抑制対策はおおむね完了しております。
現在は、感潮区間や閉鎖性水域のように、流れの少ない河川区間など十四水域で、降雨初期の特に汚れた下水を貯留する施設の整備や、水の流れが滞りやすい水域から水の流れのある水域への放流先の変更などを重点的に進めております。
さらに今後は、水再生センターの既存の沈殿施設の改造により、早期に導入でき、汚濁物をこれまでより二倍程度多く除去することが可能な高速ろ過技術を導入する予定でございます。
○中村委員 下水道局が直接対応する区部での取り組み状況を伺いました。
多摩地域の下水道は、公共下水道を管理する市町村と流域下水道を管理する都が一体となって機能が維持されています。新たに下水管が整備されたところは分流式なので大丈夫なのですが、かえって早く整備した合流式の地域が、八処理区中、野川、北多摩一号、二号の三処理区であり、こちらは都が関係市と連携して早急な対応が求められます。
各市でも対応をそれぞれ行いますが、都も幹線等の対応が必要ですし、各市への支援も必要です。
そこで、多摩地域の流域下水道の合流式下水道改善の平成二十五年度までの取り組み状況と今後の取り組みについて伺います。
○松田下水道局長 多摩地域の下水道のうち、合流式下水道の割合は全体の約四分の一を占めます。流域下水道としては、公共下水道を管理する市と連携しながら合流式下水道の改善を実施しております。
具体的には、公共下水道においては、雨水浸透ますや小規模な貯留施設を設置しております。一方、流域下水道においては、高速ろ過施設や大規模な貯留施設などを設置しております。
今後とも、関係市と連携して、良好な水環境と環境負荷の少ない都市を実現するために、多摩地域の合流式下水道の改善に努めてまいります。
○中村委員 豪雨の後、汚水のまざった雨がまちにあふれることがあり、衛生上の問題が発生します。感染症の問題などもあるため、各市町村は消毒をすると聞いています。そのため、合流式の仕組みを広報し、大雨が降る間は、トイレを我慢してくださいとはいえないとしても、お風呂や洗濯は待ってもらうことはもっと広報してもよいかと思います。
多摩地域の下水道は、各市町村が公共下水道を管理し、都が幹線と水再生センターを管理しています。単独処理区の編入については、八王子市、立川市は流域下水道への編入が決まり、あとは三鷹市だけになっています。編入がおくれた場合、三鷹市も現在の施設の延命を図るなど、財政的な負担が大きくなると思います。
そこで、単独処理区を流域下水道に編入するメリットと、流域下水道の取り組みについて伺います。
○松田下水道局長 単独処理区を流域下水道へ編入するメリットについてでございますが、これまで、単独処理区の処理場で困難であった施設の更新や震災対策、高度処理が可能になるとともに、スケールメリットを生かして、施設整備に係る建設事業費の軽減や維持管理に関する費用の縮減などを図ることができます。
流域下水道の取り組みといたしましては、編入に必要な手続や施設整備を進めていくとともに、適切な技術支援を行っているところでございます。
○中村委員 単独処理区の流域下水道への編入は、東京都市長会からも、以前から強く要望されています。この編入については、都市整備局が平成二十一年に策定した多摩川・荒川等流域別下水道整備総合計画に位置づけられています。八王子市、立川市ではようやく進むことになりましたが、三鷹市の下水処理施設もかなり老朽化していますので、編入を検討していただきたいと思います。
下水道事業は、本来は市町村事務ですが、区部は都の下水道局が直接行い、多摩地域も幹線と処理施設の多くを下水道局が担当し、本来の都道府県事務である市町村の指導助成は都市整備局が担当しています。
質問した流域下水道の編入も合流式下水道の改善も、より一層円滑な業務運営、都民サービスの向上を図る観点から、下水道局は、都市整備局ともさらに連携を強めていただきたいと思いますし、長期的に見たときの都全体の下水道事業のあり方についても検討していただきたいというふうに思います。
以上をもちまして質問を終わります。
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