2022/03/16 財政委員会で都債、施設の維持更新計画について質疑しました
2022年3月16日、都議会財政委員会で財務局に来年度予算案などについて質問しました。都債の中で環境改善等を目的とするESG債の発行について、議案の土地信託契約の延長について、第三次主要施設10か年維持更新計画について質疑を行いました。質問の全文の概要は以下の通りです。
○中村委員 それでは、来年度予算に関して質問します。
まず初めに、都債について伺います。
令和四年度予算では、税収増を活用して都債の発行額を抑制しています。そうした環境にあっても、都債の一種であるESG債については前年度と同規模となる一千億円程度を発行するとのことです。
この環境改善や社会課題解決を目的としたESG債については、市場が大変大いに盛り上がっているということでございますので、幾つか質問いたします。
まず、このESG債の発行は、発行体である都にとって様々なメリットがあるからこそ、これだけの規模を発行するのだと思います。
メリットとしてまず思いつくのが利率などの発行条件ですが、まず、ESG債は通常の都債よりも有利な条件で発行できるかについて、確認の意味で伺います。
○山田理事 発行条件につきましては、ESG債であっても必ずしも有利な条件で発行できるわけではなく、その時々の市況や投資家の動向に左右されます。
昨年発行いたしました東京グリーンボンド及び東京ソーシャルボンドでは、金利環境が比較的落ち着いていたことや、多くの投資家の需要が集まったことから、直近で発行された他の債券よりも低い利率で発行をしております。
今後も、市況を見極めつつ、多くの投資家の参加を促すことで、都債による低利で安定的な資金調達に取り組んでまいりたいと考えております。
○中村委員 ESG債とすることで、市況や投資家の需要次第ということではありますが、通常の債券に比べてより低い利率で発行できる場合もあるとのことです。
低い利率となれば、それだけ都債発行のコスト削減につながるわけですから、投資家の需要を集めることで有利な発行条件につなげていってもらいたいと思います。
さて、都のESG債ですが、これまで東京グリーンボンドと東京ソーシャルボンドの二種類が発行されています。このうち東京ソーシャルボンドは、今年度から新たに発行を始めた債券ということですが、大変好評であったと聞いています。
このソーシャルボンドがどういった事業に充当されているかですが、都の事業は、基本的には公共目的で実施しているものですから、いわば全ての事業がソーシャルのようにも見えるわけです。
このソーシャルボンドの充当事業をどのような考え方に基づいて選定しているのか伺います。
○山田理事 東京ソーシャルボンドにつきましては、コロナ対応を目的といたしました中小企業制度融資の預託金や特別支援学校の整備など、都の事業の中でも特に社会的に支援が必要な都民、事業者を対象といたしました事業の財源として活用しているところでございます。
充当事業につきましては、第三者機関から、国際的なガイドラインでありますソーシャルボンド原則に適合している旨の外部評価を取得した上で発行したものでございます。
○中村委員 社会全体で支援が必要となる人々が、対象となる事業を選定の上、充当しているとのことでした。
こうした発行目的を訴えていけば、より多くの投資家に共感を得られるでしょうから、いわゆる機関投資家だけではなく、東京グリーンボンドのように、個人に対しても販売していっていいのではないかと考えます。
今年度は個人向けには発行していないということですが、その理由と今後の展開について伺います。
○山田理事 近年の国内の低金利環境下におきまして地方債を発行する場合、円貨建てでは個人投資家にとって魅力的な利回りの確保が困難な状況にございます。
そのため、個人を対象とした地方債は全国でも発行団体が減少しておりますけれども、都は、外貨建てとすることで個人向けの東京グリーンボンドの発行に努めてまいっております。
一方で、外貨建債につきましては、内外の金利差を活用した調達コストの低廉化を発行意義の一つとして掲げておりますが、市況により、国内債と比較してコストが増加した場合は発行できない可能性もございます。
現状、コロナの感染状況やアメリカの金融政策の転換、直近では、ウクライナ情勢の影響を受けて金利が大きく変動し先行きが不透明な市況環境にあることから、外貨建てによる新たな個人向け都債の発行には相応のリスクを伴う状況にございます。
このため、東京ソーシャルボンドにつきましては、当面、安定的に資金調達が可能な機関投資家向けの円貨建債券として発行してまいりたいと考えております。
○中村委員 先ほどの発行条件に関する質疑でも答弁がありましたが、ESG債といえども直ちに好条件で発売されるわけではないということで、それを踏まえて、投資家への販売戦略もいろいろと練っていく必要があると思います。
そこで、今後もESG債の発行に取り組んでいくために、投資家への情報公開と都債への信頼感を醸成していくべきだと考えますが、その取組について伺います。
○山田理事 投資家に向けましては、都の財政状況や都債に関する情報を発信するIR活動に日々取り組んでおります。
具体的には、都債説明会や個別訪問による情報提供を行っておりまして、特にコロナの感染拡大以降は、ウェブ説明会等に切り替えることで投資家が参加しやすい環境を整えるとともに、これまで訪問が難しかった遠隔地の国内投資家や海外の投資家にもアプローチが可能となっております。
また、説明会参加が難しい投資家向けには、PR動画を作成し、ユーチューブやツイッターなどを活用して、幅広く周知を行っております。
今後も、都債の円滑な販売につなげるべく、あらゆる機会を通じまして丁寧に説明を行ってまいりたいと考えております。
○中村委員 コロナの感染状況や、各国の金融政策の動向、そして、ここ最近では、ウクライナ情勢など、市場を取り巻く環境の変化が非常に大きい中ではありますから、ESG債の発行条件の追求や個人向けの発行はなかなか難しい部分があるかもしれません。
ただ、本日ご答弁にもあったとおり、環境が整った際に、発行条件の積極的な交渉、より幅広い投資家への販売に取り組んでいけるよう、引き続き投資家への説明は真摯に行っていただき、ESG債、そして、都債への理解を深めていってもらうようお願いをいたします。
次に、議案になっている土地の信託の変更について質問します。
墨田区にある両国シティコアについて、五年間延長が知事から提案されました。バブル期の平成四年から期間二十年間、その後、二回にわたって五年間延長し、今回三度目の延長になります。
賃貸ビルである両国シティコアについて、当初見込んでいた収益目標はどうだったのでしょうか。また、実際の数値と大きな差があるのですが、その原因を伺います。
○前山利活用調整担当部長 両国シティコアへの当初見込んでいた信託配当は、地価が右肩上がりに上昇していた昭和六十三年当時に見込んでいたものであり、二十年間で約八十三億円でございました。
しかし、バブル経済の崩壊により賃料相場が大きく下落したため、実際の配当額は、同じ二十年間で約五億円となっております。
○中村委員 バブル経済の崩壊が大きく収益を変えたとのことでした。
このバブル前の状況においては、地価の高騰に拍車をかけないように、都が所有する土地の売却をやめて信託にしていました。現在でも、都の信託物件は両国を入れて五件あります。バブルの崩壊によって大きく状況が変わりましたが、ずっと信託契約が続いています。
今回は継続という議案ですが、仮に売却するという選択肢はないのでしょうか。それぞれの場合の収支の比較を伺います。
○前山利活用調整担当部長 両国シティコアは、両国駅から近く、都心へも至近であるとともに、まとまった面積を持つ貴重な都有地であり、引き続き、都で保有して活用していく考えでございます。
売却と信託を継続した場合の収支の比較は困難でございますが、令和二年十二月時点の両国シティコアの資産評価額は約七十七億円となっております。
一方で、信託を継続した場合は、令和三年度の信託利益金の配分から、年間四億四千万円の信託配当が確保できる見込みとなっております。
○中村委員 売却ではなく、都で保有、活用するとのことでした。
他の選択肢という例で売却との比較を聞きましたが、都心における貴重な公有地ですから、都民のためにどのように利活用するかが重要だと思います。
これまでも信託物件について、契約の延長の議案が出されるたびに、この財政委員会でも質問してきました。その際には、専門家チームを発足させて総括、評価し、出口戦略をつくるとのことでもありました。
今後、この出口戦略はどう考えるのか伺います。
○前山利活用調整担当部長 両国シティコアの借入金は既に完済しており、今後も信託配当金を安定的に確保することが見込まれております。
現時点で、この土地への都の行政需要はなく、その状況が変わらない限り、土地信託の継続により賃貸ビルとして運用していくことが最も有効な活用策であると考えており、専門家からも同様の評価を受けているところでございます。
○中村委員 当面、信託配当金が安定的に確保できるからということではありますが、都が不動産事業を営む必要はないわけです。むしろ、都心における貴重な公有地をどう都民のために利活用するかが重要ですから、それを検討し、その目的に向けて動いていくことが重要かと思います。
五つの信託物件はそれぞれ判断があると思いますが、これらの契約が延長になるたびに同じような提案がされています。
改めて、信託物件の利活用を検討する専門家のチームを設置し、検討した上、出口戦略の策定を求めます。
次に、事業評価について伺います。
予算編成方針として、全ての事業に終期を設けるとしています。常なる改革は必要ですが、医療費助成や私学助成のように、三年や五年で終わっては困るというよりも、本当に終了するつもりがあるのか疑問の継続事業もあります。
改革は行う必要があるのですが、以前も指摘したように、施設の整備のように、もともと終期があるものを終期によって削減した成果として示すのは、少し違うのではないでしょうか。
継続事業で実際に終わった事業があるのでしょうか。終期が来たときにどのような取扱いをしているのか伺います。
○山田理事 都は、一つ一つの事業の実効性と効率性を向上させるため、予算編成の過程で多面的な検証を行う取組として事業評価を実施しておりまして、全ての事業に原則五年以内の終期を設け、評価時期をルール化することで、事後検証を徹底しております。
終期が到来した事業につきましては、事業評価による分析、検証を行い、事業の継続を判断するとともに、見直し、再構築、あるいは拡充についても検討し、予算に反映をしております。
令和四年度予算におきましては、特殊詐欺を抑止する自動通話録音機の設置への補助につきまして、普及に向けた区市町村の取組が進展したことを踏まえまして、事業終了とした例などがございます。
○中村委員 補助事業には相手があります。補助をしても施策を進めてほしいのですが、終期があると補助を受けることをちゅうちょしてしまうのではないでしょうか。
無駄の削減はもちろん必要ですが、せっかく予算を組んでも、手が挙がらなくて未執行になるのでは本末転倒です。
事業の推進とのバランスをどのように考えているか伺います。
○山田理事 終期の設定につきましては、評価時期をルール化し、終期到来後に、事業を継続するのか、見直し、再構築をするのか、あるいは拡充をしていくのか、多角的な検証を確実に実施するために行っているものでございます。
そのため、終期到来時における事業評価では、事業の執行状況や実績の分析はもとより、新型コロナやDX化等の社会情勢の変化など様々な視点から事後検証を行い、事業の終了、継続や見直しに加えまして、必要な拡充につなげるなど、評価結果を予算に反映しております。
引き続き、事業評価による事後検証を徹底いたしまして、実効性と効率性の高い事業の構築に取り組んでまいりたいと思います。
○中村委員 終期設定ということにはよりますけれども、実態は定期的な評価をしているということなんだろうというふうに思っています。
私たちも、常に事業の検証ということを求めてきました。答弁でも多角的な検証ということがありましたが、例えば、今はコロナ対策でいろいろ事業がありますが、検証してほしいということを求めてきても、なかなか本会議等の答弁でも、知事からは、その検証という言葉はなかなか発せられませんが、今ご答弁もありましたけれども、今後、いろんな、行われている事業についてしっかり検証していただいて、やはり、より適切な評価で、削減するときはするんでしょうけれども、増やすときもあるんでしょうし、今後の施策展開につながるような検証の方法をしっかりと行っていただきたいというふうに思っています。
次に、第三次の主要施設十か年維持更新計画について伺います。
第一次の計画から十年が経過します。数字では実績が示してあるのですが、具体的に施設を示すべきではないでしょうか。また、遅れたものや、その原因は何か、それは第三次の計画に含まれているのか伺いたいと思います。
○飯泉施設整備担当部長 これまでの二次にわたる計画で位置づけた施設の中には、事業進捗について、必ずしも当初の計画どおりに進まず、現在でも着手できていない施設もございます。
その理由といたしましては、例えば、施工中の仮移転先の用地の確保に苦慮したことや、工事のために施設を一時的に閉鎖する期間等の調整に時間を要したことなどが挙げられます。
こうした着手できていない施設のうち、現在策定中の第三次計画に位置づけている施設については、所管局と連携し、早期に事業着手できるよう取り組んでまいります。
○中村委員 都庁の方も様々な計画をつくるのですが、それが結果としてどうなったかということを検証して公表すべきだと思います。
第一次と第二次の結果については、第三次の計画の中に数値として示されてはいます。しかし、着手できなかったものについても、老朽化をすればいつかは必ずやらざるを得ません。達成した施設だけではなくて、全ての施設について、どのようになったのかを一覧として公表すべきですし、さらに、着手できていないものは今後どのようにするのか示すことを求めておきます。
さて、都の施設の中で、都庁であるとかビッグサイト、江戸東京博物館とか、非常に大きなものがあり、これらはバブル期の少しデザイン優位の建物であって、大規模改修には莫大な経費がかかるのだろうと思われます。
こういった施設というのは、この計画の中に入っているんでしょうか伺います。
○飯泉施設整備担当部長 都庁舎と東京ビッグサイトにつきましては、第三次計画の対象外とする予定でございます。これらの施設は、工事期間中に建物の運用を全面的に停止することができず、施工エリアや移転先、部分的な休館期間などについて、特に柔軟な対応が必要であることから、個別に計画を作成し、維持更新を行うこととしてございます。
東京都江戸東京博物館につきましては、施設管理者と調整し、工事期間中の全面休館が可能となったことから、本計画に位置づけております。
○中村委員 都庁やビッグサイトのように、大変大きく予算もかかるものが計画には入っていません。また、数が大変多い都営住宅も入ってはいません。小規模のものも含めると、三千九百のうちの二割しか入っていないということでした。
工事の主体は各局だとしても、都全体の状況が分かるようにすべきですし、財務局が取りまとめる必要があるかと思っています。
来年度の都の予算書には、社会資本ストックの維持更新経費が毎年一千百億円かかり、三十年間で三兆円と掲載されています。
この計画と計算の仕方が違うようではあるのですが、施設の維持更新は大きな予算がかかるということが分かります。だからこそ、施設の改修、改築に実際どのくらいの予算がかかるのかを把握するためにも、計画外の施設も含めた都庁全体の施設の維持更新について明らかにし、着実に維持更新を進めることを求めておきます。
さて、計画の中に環境負荷の一層の低減という項目があって、そこに、既存樹木の保護との記載があります。計画に記載されている施設の一例ではありますけれども、建設局の西部公園緑地事務所の建て替えについて伺います。
これは、都立井の頭公園に隣接する場所に位置し、現地で建て替えるのですが、周辺の樹木の伐採を伴うため、地域の方々から伐採本数を減らすよう要望が出されました。
財務局として、建て替え時に、周辺環境への影響を最小限にし、地域住民に丁寧に説明するよう求めるべきではないでしょうか。見解を伺います。
○飯泉施設整備担当部長 東京都西部公園緑地事務所につきましては、建設局からの委任を受け、現地での建て替えに向けて、現在、実施設計が完了した段階でございます。
建て替えにより支障となる樹木の伐採本数は、基本構想では百十二本でございましたが、基本計画において工事区域を縮小することで八十六本に減らされ、さらに、現在、移植などにより六十五本まで見直されております。
財務局といたしましても、引き続き建設局と連携し、今後開催予定の工事説明会などを通じて、丁寧に説明を行ってまいります。
○中村委員 当初の構想から伐採本数を半分まで減らしたとのことです。少しでも伐採を減らせるよう努めていただきたいと思います。
工事の直接の担当は建設局だと思いますが、あえて聞いたのは、これまで以上に地域の方々は自然環境保護について注目されています。今回、事例として西部公園緑地事務所を挙げましたが、同様のことは他の施設の工事でも起こる可能性はあります。
計画の中に既存樹木の保護と記載もありますので、ぜひ各局に徹底していただくことを求めておきます。
さて、また少し個別の事例にはなりますが、消防庁関連の施設が多いので、共通する項目として質問します。
これまでの計画の中で、私の地元の三鷹消防署の建て替えが掲載され、現在は完了しています。そして、現在は、出張所である牟礼の出張所が進められて、今後、下連雀出張所も計画をされています。
都民の安全を守る施設が倒壊しては意味がないので早急な対応が必要です。しかし、多摩地域では、二十三区と制度が違うため、市町村が自ら土地を用意しなければなりません。そのため、建て替えるにしても、土地の確保ができなければ対応は遅れてしまいます。
都も積極的に用地の確保に取り組む必要があると考えますが、見解を伺います。
○五十嵐財産運用部長 稲城市を除く多摩地域の市町村につきましては、消防事務の委託に関する規約に基づき、消防業務を東京消防庁に委託しておりますが、消防署等の土地については、委託する市町村において確保することとされております。
こうした中で、消防署等の建て替えに伴い、近隣に建て替えの適地が存在しないため、都において活用予定のない都有地を買い受けたい旨の要望が当該市町村からあった場合には、消防業務の円滑な遂行のため、都としても、市の用地確保に協力する必要があることから、これまでも都有地の売却に応じてきたところでございます。
今後も、市町村との適切な役割分担の下、財産の利活用を進めてまいります。
○中村委員 制度の違いは承知しているんですが、都民の安全にとって重要な施設の建て替えが円滑に進むよう、協力をお願いします。
やはり、なかなか消防署を建て替えるとすると、その場で建て替えるか、代替の用地を用意するかということになると、市町村で探すのも大変なことがあって、土地の確保ができないと当然建物を建てられませんから、ある意味で、市町村からのこういった経過はあるにしても、やはり都の建物にもなりますし、両者協力しながら進めていただければと思います。
さて、コロナ禍において社会が大きく変わり、IT化やテレワークへの動きがより一層進んでいます。民間のオフィスは早期に対応していますが、都有施設においても、時代への変化に対応し、働きやすい環境を整備することが必要です。
新しいオフィスの考え方について伺います。
○飯泉施設整備担当部長 都有施設を将来にわたって有効に活用していくためには、テレワークの普及やデジタル化の進展などによる施設利用の変化にも対応できるよう、維持更新を進めていく必要がございます。
このため、庁舎であれば、都民の来庁頻度や執務室での職員の働き方、デジタル機器の使われ方などについて、施設所管局と十分検討を行い、設計内容に反映させてまいります。
また、将来、情報通信環境の拡充が必要になる場合に備えて、あらかじめ通信基盤の設置スペースを確保するとともに、整備当初の執務空間の使い方が変化した場合に対応するため、後から間仕切りを設置しやすい構造とするなど、柔軟性を持った建築計画となるよう検討してまいります。
○中村委員 都庁でも、席を固定しないタイプの執務スペースも一部導入しています。
将来的になると本当に全く概念が変わってくる可能性もあるのですが、今の状況で行くと、当面、この都の仕事は個人情報など秘密も多く、都庁で働くか、自宅で働くかになり、一般の方がテレワークをしているときに近くのフリースペースに行って働くということになると、個室でないと難しいのかもしれません。
都庁の職員及び部署にかかわらず、近くにある都立施設で自由にそういったところを使いながら、都庁職員専用のフリースペースがあってもいいような形もしています。
今のような局別の出先機関ではなくて、地域ごとにそういったスペースがあるということも、ひょっとしたら近い将来ぐらいならあるのかなというふうにも思いますが、そういった働きやすい環境の整備についても、せっかく建て替えの期に当たりますので、そういったことも工夫していただければなと思います。
さて、施設の改修や改築の実行は各局が行うことになりますが、財務局の役割も大変重要です。
都全体の施設を並べて、どこから優先して着手するかを決めることは大変これ重要になってきます。それぞれの部門を、ある意味対等ということで、どこかの局が一番優先なものを全部優先で同じだというのではなくて、都全体での判断で優先順位をつけるべきだと思っています。
もちろん耐震化に問題があるものは急ぐしかありませんし、警察や消防のように、都民の安全を守る施設が、そのものの施設が崩壊してしまっては都民の安全を守れないわけですから優先すべきだと思いますが、それ以外については、優先順位について、例えば、学校など子供の安全がかかっているものなどもやはり優先すべきではないかと思っています。
実際、保護者の方からも、特に、例えば、特別支援学校の老朽化があって早く建て替えてほしいとか、そんな要望も頻繁にいわれてきます。
優先順位のつけ方について考え方を伺います。
○飯泉施設整備担当部長 本計画では、建築後の年数や施設の規模、建物の劣化状況を踏まえた各局における施設整備の優先順位などを基に、整備計画の熟度や維持更新の必要性などの観点から、総合的に判断して計画施設を設定しております。
○中村委員 各局がそれぞれ優先順位を決めるのだろうと思いますが、財務局の方で、都全体を眺めて優先順位を決める必要があるかというふうに思っています。
今回、この第三次の中の第一期のところに八王子の盲学校も入っていました。毎年、これは障害者の保護者の方々から、本当に都庁に、各会派回られているのだと思うんですが、要望に来ていて、何とか早くしてほしいということで、ようやく今回入ったのはよかったと思うんですけれども、もちろんまだほかの学校とか、いろんな状況もあるんだろうと思っています。
こういったことも、もちろん各局の事情もあると思うんですが、都庁全体の中で、どこを急いだらいいのかということの優先順位についてご検討していただければと思っています。
さて、この計画の中には事業費の、総事業費等の記載もありますけれども、昨今では、ウッドショックによる木材の確保が困難で、さらにウクライナの危機もあり、価格も高騰しかねないという状況ではあります。また、半導体不足等もあり、これは、施設に必要な給湯器などもなかなか手に入らなくなってしまっているんではないかといわれています。
こういった事態ということまで盛り込まれた計画ということなのでしょうか。対策はあるのでしょうか伺います。
○飯泉施設整備担当部長 本計画は、今後十年間に維持更新が必要な施設を位置づけるとともに、長寿命化の一層の推進など、計画を推進していく上での取組の方向性や概算事業費を示したものでございます。
概算事業費につきましては、過去に実施された類似施設の維持更新費用を参考に、最近の建設費の動向も踏まえ、設定してございます。
なお、委員ご指摘のウッドショックや半導体不足などへの対応につきましては、個々の施設の発注に際し、調達しやすい資材の活用や最新の単価を用いた工事費の積算など、市場の動向も踏まえつつ、適切に対応してまいります。
○中村委員 こういった建設の現場で働く方々から聞くと、やはり木材、半導体の確保等、大変工期も影響が出てくるという話も時々聞きます。工事費が増えることも考えられますので、発注するとき等含めて、状況は刻々と変わるので、情報収集しながら、計画が予定どおりに進むようにお願いしたいというふうに思っています。
さて、都の施設については、適切に改修しながら長寿命化することで、施設にかかるトータルのコストの削減が大切になります。
この計画にも一定の基準は示されていますが、改めて、この改修、改築の判断はどのようにするのか伺います。
○飯泉施設整備担当部長 改修か改築かの判断につきましては、建物の構造躯体や設備機器の劣化状況などを踏まえて、技術的な観点で総合的に検討した上で判断を行っております。
改修と判断する施設につきましては、建築後十年以上を経て、電気や空調、給排水などの設備機器等が更新時期を迎えている建物を対象としております。
また、改築と判断する施設は、基本的に、建築後おおむね四十年から五十年が経過し、建物そのものの老朽化や新たな用途の追加など、現在の規模では行政ニーズを満たすことができない建物を対象としております。
○中村委員 公の施設などでは、よく整備費が注目されます。幾らぐらい建設費がかかりますかということでしょうが、実際、その後の維持管理費や、そして、改修費までトータルコストを考える必要があると思っています。適切に改築を行うことで長寿命化が図られるように求めておきます。
また、過剰な規模にする必要はもちろんありませんが、後に規模が足りずに、まだ使えるのに建て替えとなるとさらにコストが膨らみます。当初から必要な規模の適切な判断を行い、長期間使える施設を整備することを、こちらも求めておきます。
さて、施設の集約化について質問します。
数年前に立川市にある都の合同庁舎が改築をされました。しかし、最近になって、近くにあった下水道局の流域下水道本部の事務所が違う場所に建て替えられました。数年の差であったので、なぜ一緒にしなかったのかと思います。
各局ばらばらで施設を整備するとコストがかかります。全庁的な視点で合同庁舎化すべきではなかったのでしょうか。見解を伺います。
○五十嵐財産運用部長 立川合同庁舎につきましては、平成二十一年二月に策定した第一次の主要施設十か年維持更新計画に基づき整備を進め、平成二十七年一月に竣工したものでございます。
第一次計画の策定当時、お話の流域下水道本部旧庁舎は、築二十九年と比較的築浅であり、合築による建て替えの検討を進めるには至らなかったものでございます。
なお、流域下水道本部旧庁舎につきましては、平成二十六年三月に耐震性の不足が判明したことを受け、新庁舎への移転建て替えを含め、様々な耐震化の検討を始めたというふうに聞いております。
○中村委員 個々の施設に事情があるとは思います。たまたま今、立川市の事例を挙げましたが、都の出先機関がこれだけ集中するのも、ある意味で多摩の中心的な位置でもある立川市ぐらいなので、特別な事例かもしれません。しかし、最近でも、立川の保健所と児童相談所、また、整備中の労働情報相談センターも近くにはあります。これ、会計が違うとはいっても、都庁という建物の中にも公営企業局の事務所があるわけですし、事業会計が違っても不可能だということはないと思っています。
長期的な施設の合同庁舎化が図れないか、これ、なかなかそのタイミングが合わないと難しいところあるんですけれども、ずっと同じことが繰り返されてしまいますので、先ほど来も議論されておりましたけれども、なるべく合同庁舎等にしていただければと思っています。ただ、もちろん、あくまで行政の合同庁舎化というだけですから、例えば、保健所とか、そういう機能面で統合する必要がないものは統合してしまうのはよくないと思いますので、身近な住民サービスを提供するところは当然集約化する必要はないと思っていますけれども、できるところはやっていただきたいと思います。
さて、施設においての環境負荷の低減というのは、当然すべき議題だと思っています。昨今では気候変動の問題への対応について大変重要になっています。
都も、来年度の予算では、太陽光パネルの設置にかなり重点を置いていくことは理解をいたします。ただ、パネルを設置するとなると構造を強化しなければならなくなり、そのためのコストもかかります。
環境への配慮は当然必要になりますが、コストとのバランスを考えなければなりません。その点に関して見解を伺います。
○飯泉施設整備担当部長 都有施設は都民の貴重な財産であることから、施設の維持更新を機に、様々な行政課題に取り組むに当たっては、コストと効果のバランスに考慮する必要がございます。
お尋ねの環境負荷の低減の取組につきましては、例えば、改修の際に設置する太陽光発電設備は、建物躯体への構造耐力上の補強が必要とならない範囲で設置すべきと考えております。
また、地中熱を利用する場合は、施設の整備時に多大な費用を要することから、くいや建物の基礎躯体を有効に活用できる場合に導入を検討すべきと考えております。
こうしたことによりまして、施策の効果と費用のバランスを図り、施設の維持更新を進めてまいります。
○中村委員 環境への負荷を減らすという点では、太陽光パネルの設置そのものというのは大きな流れで進めるべきだとは思っています。
ただ、来年度、東京都の予算書を見ても、九十五億円をかけて二百八十一の都有施設に太陽光パネルを載せるということもありました。
大きな流れの中でやるとなると、どっとやってしまうことがあるので、本当にそれが適切なのかどうかということは細かくは検証しなきゃいけないと思っています。大きな流れはやるべきでも、個々に、向く、向かないとかもあると思いますので、しっかりとそういった検証を行っていただきたいと思います。
今回いろいろと十か年の計画について質問をさせていただきました。やはり都民サービスを提供する上で公共施設というのは大変重要ですから、しっかりと維持更新をやっていくということだと思うんですけれども、やはり、建てただけではなくて、その後の維持管理費等を含めて、トータルなコストの中で最適なものにしていくことが大切かと思っています。
だからこそ、各局でやっているとどうしてもばらばらになるので、財務局でこうして計画もつくっていると思いますから、全庁的な視点で、財務局からも、この優先順位のつけ方とか、また、コストの削減等を含めてしっかりと適度に指示もしていただき、指導もしていただく中で、よりよい都民サービスができる都有施設を造っていただければと思っています。
以上で質問の方、終わります。
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