2022/09/30 財政委員会で補正予算、年次財務報告書について質疑
2022年9月30日、都議会財政委員会が開かれ、知事から提案されたコロナや物価高騰の対策のための補正予算6,135億円の質疑を行いました。また、年次財務報告書についても質疑し、都民生活向上のためにも健全な財政運営を行うことを求めました。
1 補正予算について
○中村委員 それでは、補正予算について質問いたします。
今般、追加分を合わせると六千百三十五億円の補正予算が提案されました。コロナ以前の年間予算の総額がおよそ七兆円であったことを考えると、約一割弱もの補正が一度で組まれるのは異常な状態です。コロナも第七波が収まりつつある中で、第八波への備えは当然するとして、都民の最大の関心事は、物価高から都民生活を守ることだと思います。
これまでのコロナ禍では、産業でいえば、飲食や観光などの特定の分野以外は、ICTや製造業を中心には堅調ではあったと思いますし、都民生活も厳しかったとはいうものの、生活保護の世帯や年金受給世帯、公務員など、収入そのものは変わらなかったわけです。
ところが、この急激な物価高騰は、多くの企業が原材料費の高騰で厳しい状況にあり、都民生活も収入が変わらなくても物価が上がったとのことで、相対的に収入が減り、厳しい状況にあるともいえます。
政府の極端な金融緩和策が長く続いたのですが、結果的には急激な円安となり、これまでにはない厳しい状況になっています。
こうした背景において、都民の最大の関心事は物価高騰への対策であり、今こそ都政が都民に寄り添ったものでなければなりません。
今回の補正予算は、都民生活を改善するものになり得るのか、見解を伺います。
○田中理事 今回の補正予算では、燃料費、物価高騰の影響が長期化、深刻化している状況を踏まえ、都民生活、事業者への支援を一層強化しております。
具体的には、燃料費高騰等の影響を受けるにもかかわらず価格転嫁が困難な医療機関等への直接的な支援など、一歩踏み込んだ対策を講じているほか、低所得のひとり親子育て世帯等に対する給付金の上乗せ、フードパントリーへの支援など、都民生活への支援を盛り込んでおります。
さらに、資材高騰の影響を受けている農林水産業への支援や、中小企業等の賃上げに結びつく取組を支援するなど、幅広く細やかな施策を展開しているところでございます。
今後とも、状況の変化に応じ、必要な対策を時期を逸することなく積極果敢に講じていくことで、都民生活を全力で支えてまいります。
○中村委員 都財政は法人二税が中心で、一部の大手企業の業績が堅調でも、収入が確保され得るものです。反面、税収が堅調だから景気がよいとか、都民生活が安定しているわけでもありません。改めて、都民生活の状況をしっかり把握し、それに対応した取組を行うことを求めます。
また、今回の補正予算の当初提出分六千二十九億円は、大きく四つに分かれます。一つには、HTT、脱炭素化の強化が四百八十六億、二つ目、原油、原材料価格、物価高騰対策が二百六十三億、三つ目の新型コロナウイルス感染症対策が五千二百十三億円、四つ目の防災対策など重要施策のスピードアップ等が六十七億円です。
財源は、国庫支出金が四千五百八十三億円で、財政調整基金繰入金は千四百七十九億円、その他特定財源が七十三億円となっています。
そこで、この四つの区分ごとに、国庫支出金の金額と財源に占める割合を伺います。
○田中理事 まず、HTT、脱炭素化の強化につきましては、歳出額四百八十六億円のうち国庫支出金は八十三億円で一七%。原油、原材料価格、物価高騰等対策については、歳出額三百七十億円のうち国庫支出金は二百七十八億円で七五%。新型コロナウイルス感染症対策につきましては、歳出額五千二百十三億円のうち国庫支出金は四千二百二十二億円で八一%。防災対策など重要施策のスピードアップ等については、歳出額六十七億円のうち国庫支出金の計上はございません。
○中村委員 それぞれ数値を聞きましたが、コロナ対策は、金額が大きいだけではなくて、国庫支出金の割合が高いといえます。年度当初では予測がつかず、緊急性も高く、何よりその必要性を国が認めているからです。本来、行政の予算は年度予算が原則で、補正予算はあくまで例外だという原則を改めて認識する必要があります。
脱炭素化や防災対策の項目だけ見れば必要な事業だと思いますが、財政の視点から見れば、なぜ当初予算に入れていなかったのかということになります。当初予算に入れるのであれば、限られた財源なので、何かを入れれば何かを削らざるを得ない、それこそが財政規律につながります。ましてや、持ち直したとはいえ厳しい状況にある財政調整基金を取り崩さなくてもよいわけです。
そもそも、この脱炭素化や防災対策の事業については、なぜ当初予算ではなく補正予算に計上しているのでしょうか。必要な事業を迅速に行うことは必要ですが、コロナ禍以降、補正予算が常態化して、年間総合予算の原則を崩してはいないのでしょうか、見解を伺います。
○田中理事 都では、当初予算を年間総合予算として編成することを基本としておりまして、一年間の歳入を全て見積もるとともに、その年度に必要な施策全般を計上してございます。
一方で、当初予算編成後に新たな事由が生じ、特に緊急性や必要性が高いと認められる場合には、適時適切に施策を追加すべきものと考えておりまして、コロナ禍以前にも、こうした考え方に基づいて補正予算を編成してまいりました。
お話の脱炭素化に向けた取組については、電力需給の逼迫などを踏まえ、この冬の確実な電力確保に向けた対策に加え、環境確保条例の改正に向けて取り組む中、将来も見据えた対策を強化する必要があること、また、防災対策については、関連する法改正や事業執行の迅速化に係る全庁的な方針を受け、事業着手の前倒しが可能となったことなどから、今回の補正予算に計上したものでございます。
○中村委員 時代の変化も速く、スピード感を持った取組は重要だと思います。ただ、今後は都財政も楽観できる状況ではないため、常に財政規律のことは念頭に置いた予算編成になることを求めたいと思っています。
以上で質問の方を終わります。
2 年次財務報告書について
○中村委員 それでは、年次財務報告書について質問します。
令和三年度決算は、歳出、歳入ともに過去最大の規模となりました。令和元年度末からコロナの流行が始まり、その対策に追われた一年になったことが財政面にも表れています。
そのような中でも、実質収支はほぼ均衡となったということで、都財政を大きく悪化させるような状況には至っていないようにも見えます。しかし、都財政の置かれた状況は決して楽観できるものではないと思います。
そこで、令和三年度決算を踏まえ、都財政の状況について、財政当局としてどのような認識なのか、見解を伺います。
○田中理事 令和三年度は、長期化する新型コロナウイルス感染症との闘いの中、都民の安全・安心の確保と、東京の経済の再生、回復に全力で取り組んだ一年となりました。
各局の機動的かつ積極的な施策展開に万全を期すため、財政調整基金をはじめとする各種基金の活用に加え、国庫支出金の確保に努めるなど、財政面からの下支えに力を注いでまいりました。
また、都税収入の増加に伴い、財政調整基金への義務積立てを行ったほか、各種基金の取崩し抑制や都債の発行抑制を行うなど、将来を見据えた堅実な財政運営を行ってございます。
その結果、令和三年度の決算時点では、基金残高は二・二兆円を確保しているほか、都債残高も減少に転じるなど、都の財政対応力は一定程度維持できていると認識してございます。
○中村委員 一定程度の財政対応力を維持しているということですが、コロナの第八波への備えもさることながら、物価高騰の苦しみにあえぐ都民や事業者への支援など喫緊の課題は山積しており、さらなる財政出動が求められるところです。また、首都直下型地震、少子高齢化、そういった将来的な財政需要も当然見通しておくべきです。
突発的な財政需要に対応するためには財政調整基金が重要な財源となります。昨年、財政調整基金の残高見込額が二十一億円まで落ち込み、都財政は大丈夫なのかという声がありました。しかし、今回の令和三年度決算では、財政調整基金残高の確定値が七千二百七十二億円となったということです。令和二年度決算の確定値が五千三百二十七億円でしたので、確定値の比較においても回復していることが分かります。
令和三年度の税収が上向くことが明らかになったときに、将来的な財政需要に備えるためにも財政調整基金の任意積立てをすべきであると、この委員会でも主張してきましたが、都は、義務積立てのみで対応してきました。
任意積立てを行うことなく、ここまで残高が回復した要因としては何が挙げられるのか、見解を伺います。
○田中理事 コロナ対策を含めまして、各種施策の予算執行過程におきましては、一つ一つの事業について効果を最大限発揮させるとともに、経費の節減に取り組むなど、効率的な執行を各局に求めております。
こうした予算の執行過程における歳出精査を徹底したことなどにより、当初予算及び補正予算編成時に予定していた財政調整基金の取崩し額を下回ることとなってございます。
さらに、都税収入が増加したことによりまして、財政調整基金の義務積立てを行うなど、将来に向けた財政対応力の強化を図った結果、令和三年度決算時点での残高は七千二百七十二億円まで回復したものであります。
○中村委員 様々な要因があって残高が回復した財政調整基金ですが、この七千二百七十二億円という残高も、既に二定の補正、三定の補正で活用されており、現在の令和四年度残高見込額は四千八百七十一億円と、既に目減りをしているところです。
財政調整基金については、令和元年度末に一兆円近くの残高があったことを考えると、その水準としては引き続き心もとないのではないでしょうか。
長引くコロナ禍で財政調整基金が底をつきかけたとき、他の特定目的基金を安易に転用してよいとは思いませんので、既成の予算の執行見直し、徹底等での対応を求めてきました。真に必要な補正に絞るべきで、安易に取り崩してはならないとも思います。
今後の財政調整基金の残高を確保していくため、どのような取組を行っていくのか、見解を伺います。
○田中理事 財政調整基金は、税収の減収局面や突発的な財政需要の発生などに対応するため、年度間の財政調整としての機能を果たすものでございます。
都では、過去の景気変動に伴う税収低迷などの経験を踏まえまして、税収増が見込まれる場合などに、その一部の積立てを義務づける都独自の積立制度を設けまして、財政再建期以降、着実に積立てを行ってまいりました。
こうして培ってきた財政調整基金は、東日本大震災後の緊急対策やコロナ対策において活用したほか、今回の補正予算でも有効に活用しているところでございます。
今後とも、執行段階における歳出精査の徹底はもとより、都独自の積立てなどを通じて残高確保を図りまして、継続的な施策展開を支える財政基盤の堅持に努めてまいります。
○中村委員 さて、令和三年度もコロナ対策に明け暮れた一年となったわけですが、その対策のための財源が、都費から国庫支出金にシフトされたことが示されています。
地方創生臨時交付金に協力要請推進枠が創設されたことで、多額の感染防止対策協力金の支払いに活用できたことで、都財政としては大きく痛まなかったようです。
確かに、全国共通の感染症対策については、国がしっかりと役割を果たしていくべきですが、その財源の出どころを広く捉えると、都費であろうと国庫であろうと、都民、国民の税金を原資としていることに変わりはありません。
そうした観点から、今後のコロナ対策を講じるに当たっては、実効性の高いものを継続し、低いものは確実に見直すことが重要で、無駄な取組に財源を投下すべきではありません。
そうしたことを見極めるためにも、これまでも何度も主張してきたように、コロナ対策の検証が必要であると考えますし、第七波が落ち着いてきつつある今だからこそ、しっかりと検証すべきだと思います。
この検証については、事業を所管する各局がしっかりやるべきですが、予算編成をつかさどる財務局として、今後のコロナ対策に向け、どのような姿勢で臨んでいくのか、見解を伺います。
○田中理事 コロナ対策に当たりましては、新たな変異株の発生など、日々刻々と変化する情勢に的確に対応するため、既に実施した対策の実績や感染状況等を総合的に勘案し、より実効性の高い対策となるよう、取組のブラッシュアップを図ってきたところでございます。
例えば、今回の補正予算では、第七波相当の感染状況にも対応できるよう、宿泊療養施設や高齢者向け施設等の確保を行うとともに、オミクロン株の特性も踏まえ、自宅療養者への支援体制の強化を図っています。また、秋冬の季節性インフルエンザとの同時流行を見据え、インフルエンザワクチン接種に係る支援を行うなど、きめ細かな対策を実施してございます。
引き続き、各局等と連携しながら、状況に即した効果的な対策を講じることで、感染終息に向けた取組を進めてまいります。
○中村委員 ぜひコロナ対策については、これまでの取組の検証を改めて求めていきたいと思います。
令和五年度予算編成に向けた考え方の中で、事業執行の迅速化について触れられています。三定補正予算の中でも、債務負担行為を活用し、防災対策などを前倒すための予算が計上されています。
債務負担行為は単年度主義の例外であり、財政規律の維持という面から乱発を避けるべきだという指摘もあります。
そこで、事業執行迅速化に向け、債務負担行為を積極的活用することにより、都財政への影響をどのように考えているのか、見解を伺います。
○田中理事 債務負担行為は、会計年度独立の原則の例外として、複数年度にわたる契約や支出を可能とする制度でありまして、その限度額を後年度の負担額として予算書上明示することとされております。そのため、後年度の予算を拘束する側面があるものということは承知してございます。
一方、債務負担行為を活用することで早期の事業着手が可能となり、施策の効果を速やかに都民へ還元することにつながると認識してございます。
そのため、債務負担行為の活用に当たりましては、必要性や効果などを精査した上で積極的に活用することで、事業執行を迅速化させ、都政のQOSを向上させていくということとしてございます。
○中村委員 単年度主義にこだわり過ぎると年度の区切りが生じてしまい、継続的な事業執行ができないことは理解しますが、他方で、財政規律をしっかりと守るということも大事です。債務負担行為は、翌年度以降の財政を拘束することにもなります。シン・トセイに方針が定められてはいても、財政規律が崩壊しては都民に真に必要な取組が積極的に届けられなくなりますので、そうした面も配慮しながら進めてもらいたいと思います。
先ほども述べたように、都財政は楽観できる状況ではありません。長く続いた政府の金融緩和策も出口戦略を見失い、極端な円安を招いてしまいました。それに伴う物価高は多くの都民を苦しめています。
来年度の予算編成に向けての基本的な考え方の中で、今後の景気動向の不透明を踏まえると、都の財政環境の行く末を見通すことは困難な状況にあるとしています。しかし、困難だから見通さないのではなく、厳しい状況を前提とした財政見通しを立てていく必要があると考えます。
令和元年度に公表した財政収支の長期推計を見直し、厳しい状況を覚悟しつつ、その対応をする予算編成を行うべきと考えますが、見解を伺います。
○田中理事 財政収支の長期推計は、中長期的な財政見通しに基づいた財政運営を行っていくため、都財政を取り巻く環境変化を見据え、令和元年度に今後の財政収支を推計したものでございます。
推計に当たりましては、今後の生産年齢人口の減少や老年人口の増加などを踏まえた上で、経済成長率について、上位、中位、下位の三つのシナリオを設定いたしまして、収支ギャップの振れ幅を推計しているものでございます。
今後とも、本推計の結果を踏まえつつ、社会情勢の変化等も注視しながら、計画的、戦略的な財政運営を行ってまいります。
○中村委員 これまで都財政の状況を見てまいりました。
現時点では一定程度財政対応力を維持できているということですが、コロナ禍や物価高の状況を鑑みると、今後も積極的な財政出動を行わなければいけない状況が続くのだろうと思いますし、今回のような補正予算での対応が続くことが考えられます。それぞれの対策を検討し実行するのは各局となりますが、都財政をつかさどる財務局としては、これまでも指摘したように、安定的な都財政運営という観点から、財政規律という面もしっかりと目配りしていただきたいと思います。
そうした考え方をベースにした上で、追加対策を講じる際には、真に必要な事業、私たちの会派としても、これは都民や事業者をしっかりと支える取組だと考えていますが、そうした取組に財源を配分してもらいたいと思います。
今年度の予算委員会でも述べましたが、知事の目玉予算の中には執行率が上がらないものも多くあります。制度や政策と補助金のベストミックスで成果を上げるべきです。予算をつける段階でしっかりと検討して、成果を上げていただきたいと思います。
そこでまた、気候変動対策も重要な取組ですので、都の財源を使うなというわけではありませんが、都民や事業者がコロナ禍、物価高騰に苦しんでいる状況を考えると、都民を支える取組に財源を重点配分すべきだと考えますが、財務局長の見解を伺います。
○吉村財務局長 二年半にわたりますコロナとの闘いや長引くウクライナ情勢などによります物価高騰に対しまして、都はこれまでも、迅速に予算措置を講じるなど、都民の安心・安全の確保と経済の回復に向け全力で対応してまいりました。
今年度におきましても、当初予算における都民や事業者に対する支援策に加えまして、追加補正予算、六月補正予算、そして、今回の九月補正予算と、刻一刻と変化する状況に応じまして、必要な対策を時期を逸することなく講じているところでございます。
今後も社会経済情勢の変化やさらなる支援の必要性などを見極めた上で、都民、事業者を支えるための施策を各局が機動的に実施できるよう、財政面から下支えしていく考えでございます。
○中村委員 都財政をつかさどる財務局として、しっかりとした財政運営に取り組んでいただきたいと思いますし、そうした強固な財政をバックボーンとして、苦しい生活を強いられている都民や事業者の方々に手を差し伸べるような施策を積極的に展開していただき、皆様が希望を持てるようにしていただくことを要望して、質問を終わります。
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