> 都議会質問 > 都議会厚生委員会 > 都立病院について質問

都議会質問記録

【17】2010/10/26 都立病院について質問

2010年10月26日、東京都議会 厚生委員会において病院経営本部の事務事業報告についての質疑を行いました。以下に質問と答弁を掲載します。

1.都立病院改革について

〇中村委員 それでは都立病院改革について質問をいたします。ことし3月、東京都は、多摩地域の基幹的な医療拠点となる高度な医療を提供する多摩総合医療センターを府中に開設しました。同時に、清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ケ丘小児病院を統廃合し、高度専門的な医療を提供する小児総合医療センターを開設しました。開設に当たって、病院職員の方々が通常業務を行いながら準備を同時並行して進めるなど、大変なご苦労があったと思います。大きな病院であるので、立ち上げに当たって問題はなかったのか、とりわけ大切な患者さんの命を預かっているのですから、その点を確認したいと思います。開設前の移転時においては、患者数を大幅に縮小したと聞いています。そこで、移転に際してはどの程度まで入院患者数を縮小し、また現在はどの程度まで回復しているのか伺います。

〇齊藤経営戦略・再編整備担当部長 本年3月の多摩及び小児総合医療センターの開設に向けた患者さんの移転に関しては、身体、生命の安全を最優先に考えて、昨年の秋より診療規模を段階的に縮小し、入院患者数を減少させてまいりました。具体的には、移転直前である府中病院の2月の病床利用率は16.7%、清瀬小児病院は10.7%、八王子小児病院が27.7%、梅ケ丘病院が21.7%にそれぞれ縮小させてまいりました。この間、各病院が連携医療機関や地元市、医師会等の協力を得ながら、混乱のないよう調整を行い対応してまいりました。3月の開設後、多摩総合医療センターは8月にすべての病棟の受け入れ体制を確保いたしました。また、小児総合医療センターは、3月以降、段階的に病棟を開いているところでございますけれども、10月にはほぼすべての診療科において受け入れが可能な体制を確保いたしました。このことによりまして、多摩総合医療センターの9月の病床利用率は約86%、小児総合医療センターは約70%となっております。

〇中村委員 多摩総合医療センター及び小児総合医療センターは、多摩地域の拠点病院として、地域の住民や医療機関から大きな期待をかけられていることから、より多くの患者を受け入れられるよう今後とも一層の努力をお願いします。都議会民主党は、移転後の多摩地域の小児救急医療を確保することが重要であるとの観点から、昨年11月、小児医療について知事あてで緊急要請をしました。その後も、会派として、三小児病院の移転後もしっかりと地域の小児医療体制が確保されているか、本会議や委員会でもたびたび質問してきました。小児科の医師は依然として全国的にも不足しており、安定的な小児医療の確保をするためには大変な努力が必要であることも認識しています。三小児病院が小児総合医療センターに統合されて八カ月が経過しようとしています。そこで、三小児病院移転後の地域における小児医療の現在の状況について伺います。

〇齊藤経営戦略・再編整備担当部長 北多摩北部地域の小児医療は、多摩北部医療センターを地域の中核病院としまして、一次医療機関と連携を密にして小児救急医療体制を確保してございます。八王子地域については、東海大学八王子病院及び東京医大八王子医療センターを中核病院として、救急及び入院受け入れを行っているほか、南多摩病院においても、新たに入院及び救急の受け入れを開始したところでございます。また小児精神医療については、大塚病院の児童精神科外来を開設し対応を行っております。

〇中村委員 今後とも各地域での小児医療体制について、都の責任において維持し、さらに充実されることを要望します。


2.認定看護師・専門看護師の育成・配置について

〇中村委員 次に、医療人材関連で伺います。医師の負担軽減については、事務的な部分は医療クラークをより活用し、医療的な部分は認定看護師や専門看護師、将来的にはナースプラクティショナーの活用をさらに進めることが必要です。特に最近話題となった多剤耐性菌の院内感染では、現状の診療報酬では専任医師やチームの設置が困難です。また、感染症管理の専門知識を持つ医師や看護師も少ないといえます。都立病院においては、駒込病院で感染症管理の認定看護師がおり、院内の感染管理に取り組んでいると聞いています。都立病院においても、現在医師が担っている仕事、あるいはやった方がいいけれど医師不足でできていない部分などをしっかりと担える看護人材として、認定看護師、専門看護師を計画的に育成していくべきではないかと考えます。そこでまず、都立病院に感染管理の認定看護師は何人いるのか伺います。また、どのような目的で認定を取らせ、どのような効果があると認識しているのか伺います。

〇黒田経営企画部長 現在、感染管理の認定看護師は8名でございます。院内感染の発生によります患者さん、職員、病院が受ける損失を最小限に抑えるためには、効果的な感染管理の確立が重要でございます。そのためには、感染管理や疫学の専門知識、技術を有しまして、実践、教育、相談機能を果たせる看護師が必須でございます。今後、新型インフルエンザを初めとしました、新感染症の発生が予測されまして、救急患者としての受診も予測されることから、ますます感染管理認定看護師の役割は大きくなるものと考えてございます。

〇中村委員 都立病院では、感染管理認定看護師を初めとする認定看護師について、計画的育成をしているのか伺いたいと思います。

〇黒田経営企画部長 病院経営本部におきましては、19の専門分野を対象に、毎年10名を超える認定看護師を計画的に養成してございます。感染管理認定看護師につきましても、毎年養成を続けておりまして、早期に各病院への複数配置を図ってまいります。

〇中村委員 早期に複数配置の方をお願いしたいと思います。感染管理認定看護師は、院内感染防止対策にどのように活用されているのでしょうか。また感染症対策の充実にはどのように取り組むのかを伺いたいと思います。

〇別宮サービス推進部長 都立病院では、各病院に院内感染予防対策委員会を設置するとともに、感染管理認定看護師を中心とした感染管理チーム、通称ICTを組織いたしまして、院内感染対策にかかわる啓蒙、院内巡回チェック等の活動を行い、院内感染防止に努めております。また、病院経営本部では、感染症専門医及び感染管理認定看護師等を構成員といたします感染管理委員会を設置いたしまして、二次感染拡大防止マニュアル作成のためのガイドラインを策定するなど、都立病院共通の院内感染防止対策を推進してございます。今後とも、本部と各病院が連携しながら、重層的な取り組みを行いまして、院内感染管理対策の充実に努めてまいります。

〇中村委員 感染管理の認定看護師だけではなく、緩和ケアの認定看護師も育成が必要です。いわゆるがんの終末期ケアは、現在大変不足しており、特に少ないのが適切な痛みのコントロールができる医療者です。緩和ケア病棟の病床、いわゆるホスピス病床は都内でもまだ382床と大変少ないといえます。在宅での緩和ケアをやってくださる医師もいますが、まだまだ少ないのが現状です。近年のがん医療は、集学的治療が求められ、病院の高機能化、診療科の集約化が進んでいますが、緩和ケア病棟、病床を持つ病院は少ないといえます。手術や放射線、化学療法などを組み合わせて治療を行っていますが、それらの積極的治療を断念した後において、退院、転院できず、緩和ケア病院のあきを数カ月にわたって持つ患者さんが多いと聞きます。緩和ケア病院を待ちながら亡くなる方もいると聞きます。その間、痛みコントロールや終末期の葛藤に対応するのは並大抵のことではなく、疼痛管理や精神的看護に習熟した看護師がいないと適切な対応ができません。一人の患者のために業務が停滞するということもあると聞きます。十分な対応ができないまま患者さんが亡くなられるということは、患者さんにとっても医療者にとっても大変残念なことです。そこで、都立病院では、がん看護、精神看護、緩和ケア、がん化学療法看護、がん性疼痛管理などの認定看護師、専門看護師は何人いるのか伺います。また、がん医療の中でこのような専門的看護師をどのように位置づけ、活用しようと考えているのか伺います。

〇黒田経営企画部長 現在、がん看護の専門看護師は1名、精神看護は2名でございます。緩和ケア看護の認定看護師は3名、がん化学療法看護は2名、がん性疼痛看護は5名でございます。専門看護師や認定看護師の資格取得者は、院内外でその専門性を生かした業務を行っております。具体的には、専門、認定看護師は、特定の専門看護分野のリーダーとしまして、病棟スタッフをサポートするコンサルテーションを行うほか、病院経営本部研修や院内研修の講師を務めるなど、看護技術を組織的に高める活動にも従事してございます。

〇中村委員 専門的な看護師はぜひ必要と考えます。専門性の高い人材育成とその配置は、医療の質の向上につながることはもちろん、医師の負担の軽減だけでなく、病院経営上のメリットもあるのではないでしょうか。都立病院の業務改善のためにも、専門的な看護師を育成、配置していくべきと考えますが、所見を伺います。

〇黒田経営企画部長 専門、認定看護師を専任配置いたしますと、医療レベルや患者サービスの向上につながるのはもちろんのこと、診療報酬上の加算を得られ、病院収支の改善にも貢献いたします。医療の高度化や院内外における看護師の果たす役割が増大しているという現実を踏まえまして、専門看護師や認定看護師を適切に配置していくことは、都立病院の医療機能の一層の向上と経営改善を図るものと考えております。

〇中村委員 ありがとうございました。今後も積極的な育成等、お願いいたしたいと思います。


3.電子カルテシステムの活用について

〇中村委員  次に、都立病院における電子カルテシステムの活用について伺います。都立病院においては、IT化の推進を都立病院改革の一つとして掲げ、電子カルテシステムの導入を進めてきたと聞いています。電子カルテシステムについて、十分メリットを発揮しているのかを確認したいと思います。電子カルテシステムを導入した具体的な効果にはどのようなものがあったのか伺います。

〇別宮サービス推進部長 電子カルテシステムの導入効果といたしましては、まず、インフォームド・コンセントが充実したということが挙げられます。電子的にファイリングした検査の画像を電子カルテの画面上で表示し、医師が患者と同じ画面を見ながら、レントゲンや検査結果をわかりやすく説明することにより、患者の理解を深めることができるようになりました。また、予約患者の診療待ち時間や会計窓口の待ち時間の短縮にも効果がございました。さらに、医師や看護師だけでなく薬剤科など院内の関連部門におきましても、同時に最新の患者情報を閲覧することができることから、適時に患者情報の共有化が図られ、これまで以上にチーム医療の推進が図られたという効果がございました。

〇中村委員 電子カルテの導入により、インフォームド・コンセントの充実や情報の共有化など、効果があったことはわかりました。しかし運用開始から数年経過し、電子カルテシステムにはまだ未解決の課題や新たな課題が生じてはいないでしょうか。そこで、電子カルテシステムが抱える課題について伺います。

〇別宮サービス推進部長 まず、蓄積されるデータ量の増加に伴いまして、画面展開が遅くなってきていることが課題でございます。このため、システムの更新時に機器やソフトをより性能の高いものにするなど、操作レスポンスの向上を目指す必要がございます。また、電子カルテを導入した病院が増加したことに伴いまして、都立病院全体としての電子カルテの運用経費が増大していることも課題でございます。電子カルテシステムは病院を支える重要な基盤となっていることから、安定した運用が最優先ではございますが、今後、経費面での検討も必要であると認識してございます。

〇中村委員 今、課題の方を伺いましたが、また個人情報の保護というのもIT化によりますます重要性を増していきます。とりわけ電子カルテの管理する情報の中でも、病名は特に慎重を要します。手書きのカルテは一般の人には容易に判読できるものでもありませんが、パソコンの画面で、がんなどのように告知に慎重さを要する病名が患者や家族の目に入ることでショックを与えてしまうことがないよう、慎重な取り扱いを求めたいと思います。さて、電子カルテシステムについていろいろと伺いましたが、都立病院では電子カルテだけではなく、部門ごとにもIT化が進んでいると聞きます。先日、独立行政法人の健康長寿医療センターでは、管理体制等のさまざまな問題が絡み合っていたようですが、向精神薬が大量に紛失するという事故がありました。設置主体も会計制度も異なる都立病院ではこのようなことはないとは思いますが、これを他山の石として管理体制を再確認し、常に十分なチェック機能を働かせる必要があります。そのためにも電子カルテシステム等のITシステムを活用すべきであります。そこで、都立病院の薬品の管理について伺います。

〇別宮サービス推進部長 病院内全体の医療薬品につきましては、専用の薬品在庫管理システムにより入庫、出庫、在庫量等を常時把握するとともに、あわせて定期的に棚卸しを実施いたしまして、帳簿と現品チェックを行っております。また、過剰な処方を防止するために、電子カルテシステムにおきましては、医師が指示を登録するときに、また、調剤支援システムにおきましては、薬剤師が調剤を開始する前に、それぞれあらかじめ定められた量を超える処方がないか、システム的に二重チェックを行っております。これによりまして、医薬品の適正な使用及び在庫管理を行っております。なお、先般の向精神薬の大量紛失事故を受けまして、都立病院におきましては、緊急点検を実施し適正に管理されていることを確認してございます。

〇中村委員 電子カルテ等のITシステム導入による効果は、病院経営の中で重要な役割を果たしているということがわかりました。しかしながら、一方で課題もあるということでした。これらの課題に的確に対応することで、最新の機能を維持し、患者サービスの向上や管理運営に有効に活用することを要望します。また、病院と診療所の連携がいわれ、今後は地域の医療機関との患者や情報の行き来がより多くなると思われます。地域診療情報連携として、地域医療機関との電子カルテなどのネットワーク構築についても、さまざまな課題が現時点ではあると思いますが、IT化の急速な進展による将来的な動向を見据えて、その調査検討を行っていただきたいと思います。以上を述べて質問を終わりたいと思います。

ユーティリティ

都議会質問内検索

Search

過去ログ