2023/11/07 交通局に安全のため人を大切にする趣旨で質問しました
2023年11月7日、都議会の公営企業委員会が開かれ、交通局の事務事業について質問しました。乗客である都民の安全安心のためには、人が大切であり待遇の改善を求める趣旨でしました。主な項目としては、1経営計画、2事故への対応、3偽装請負の報道、4バス路線の見直しの状況と影響、5コロナの影響と対策、6将来の都営交通のあり方について質問しました。質問と答弁の概要は以下の通りです。
交通局の事務事業について質問します。厳しい社会情勢の中、安全安心は重要です。交通局だけでなく関係する会社で働く人も、良好な職場環境や待遇が必要です。乗客である都民の安全安心のために人を大切にする立場で質問します。
1 経営計画について
Q1 現在、東京都交通局経営計画2022の期間中で2022年から2025年までの目標が定められています。ただ、その前の計画の経営計画2019はどうなったのでしょうか。本当に大事なのは作った計画に基づいて実行していくことです。行政の連続性からすると、次の計画の冒頭には前の計画の達成状況と総括、課題をどう生かすかがあってしかるべきです。そこで、まず、経営計画2019の主な成果を伺います。また、掲げた当初の目標に達成しなかった項目があれば、その理由について伺います。
A1
●令和元年度からの3年間を計画期間とする経営計画2019では、新宿線や浅草線のホームドア整備など、安全・安心の確保に向けた取組や、乗換駅等9駅でのエレベーター整備など、質の高いサービスの提供に向けた取組を推進
●環境負荷の低減に向けて、燃料電池バスの導入を累計71両まで拡大
●一方、計画に掲げた事業の一部には目標どおりとならなかったものもあり、その理由は、新型コロナウイルス感染症の影響により乗車料収入が大幅に減少する中、安全の確保に最大限配慮しながら、実施する規模や時期を見直したことなど
Q2 経営計画は3年ですが、さらに長期的な見通しをもって考えるべきであり、その途中での3年ではないかと思います。経営計画について、期間が終了後、未達の事業を伺います。
A2
●経営計画を策定する際には、局を取り巻く事業環境の変化も踏まえながら、目標の達成、未達成に関わらず、事業ごとに必要性や実施規模などを改めて精査
Q3 計画の随所に生産性の向上とか業務の効率化などの記載があります。経営努力として無駄を削るとか収益を増やすとかは重要ですが、一方では、安全の確保のためには働く人に関する部分は簡単に削ってよいものではありません。もちろん働く人にも頑張っていただきたいと思いますが、誰もが働きやすい職場づくりにどのように取り組んでいくのか伺います。
A3
●交通局では、職員一人ひとりのライフ・ワーク・バランスの実現に向けて、育児・介護と仕事の両立支援や超過勤務縮減を進めるとともに、テレワークの一層の活用など、多様な働き方を推進 ●ダイバーシティに関する意見交換会等を実施し、職員個々の事情等の相互理解を図るとともに、女性専用施設や、障害のある職員などにも配慮した設備等の整備を進めており、引き続きこうした取組を実施
2 事故について
Q4 公共交通機関は安全が重要ですが、定時運行という安定ももちろん重要です。経営計画2022にも千葉県北西部地震に際しての日暮里・舎人ライナーの被災から復旧にかけての取り組みが掲載されています。一方、こうした災害時ではない時に長期運休するというのは通常あり得ません。しかし、今年4月10日から4日連続で運休という事態が起きました。4日間の運転見合わせで、あわせて217本が運休し、のべ3万3000人の乗客に影響が出たと報道されました。知事も「徹底した原因究明と対策を」と述べていたようですが、あらためて、原因と対策を伺います。
A4
●本年4月の輸送障害は、電車線の伸びを吸収するための金具に不具合が発生し、電車線がゆがんだためパンタグラフが破損したこと、また、この事象を受けて臨時にパンタグラフを交換した際、ボルトの締付作業が不十分だったことが原因 ●パンタグラフの交換については、マニュアルを速やかに改定し、作業前後の確認を順守するなど、確実な実施を徹底
●電車線のゆがみについては、金具の点検の方法や時期等を速やかに見直すとともに、現在、第三者機関等を活用して、恒久的な対策について検討を進めている
Q5 こうした事故は起きうることですが、できるだけ早く復旧させることが重要です。同様の業界などとの情報共有する仕組みが必要だが、見解を伺います。
A5
●交通局は、全国の新交通システムの事業者で構成する協議会に参加し、地震など災害発生時の対応や設備の保守方法などの課題について、各事業者と情報を共有
Q6 日暮里・舎人ライナーは基本的に無人駅になっています。こうした時に、事故の対応、乗客の避難誘導、振替輸送などを迅速に行う必要があります。また、通常時についても、よく交通機関に乗っていると急病人の対応でとして長時間停まることがありますが、無人ではこうした状況に対応できません。日暮里・舎人ライナーの無人駅では、不測の事態への対応をどのように行っているのか、伺います。
A6
●日暮里・舎人ライナーでは、平時より、係員や警備員が各駅を巡回するとともに、指令所においても防犯カメラの映像により駅構内の状況を把握
●事故等が発生した際には、巡回中の係員が緊急自動車等で現場に急行し、指令員等と連携してお客様の避難誘導などの対応を実施
Q7 地下鉄における対応について、電車が止まった時の情報提供について以前も質問しましたが、十分行われているでしょうか。長期間の閉じ込めは乗客にとって大変負担が大きいので早期の対応が必要です。また、適切な情報提供など、乗客が不安を感じないような対応も必要です。都営地下鉄において、昨年度以降、列車が駅間で長時間停止した事例と、その時の対応を伺います。
A7
●都営地下鉄では、令和4年5月に大江戸線において、車両故障により、駅間で列車が停止する事象が発生
●その際、乗務員と指令員とが連携し、車内放送による声かけや状況説明等を行いお客様の不安解消に努めるとともに、速やかに駅係員が現場に急行し、負傷者や体調不良を訴える方がいないことを確認した上で、お客様を最寄り駅まで誘導
Q8 電車の中での凶悪なテロが起きています。テロの対策の訓練を行っているとのことですが、いくら訓練しようとも駅や電車の中に職員が少なければ対応ができません。都営地下鉄の車内でテロ等が発生した場合、どのように対応することにしているのか、確認する。
A8
●都営地下鉄では、車内でテロ等が発生した場合、お客様からの非常通報器での通報により、車内の状況を把握
●通報を受けた乗務員は、運輸指令と連絡をとり、指令員は乗務員に必要な指示を行うとともに、駅係員の手配や警察等への通報を実施
●安全確保の観点から、原則、列車を次の駅に速やかに停車させるとともに、放送によりお客様へのご案内に努め、必要な救護や避難誘導等を実施
3 偽装請負の報道について
次に、都営地下鉄における偽装請負問題について質問します。交通局は今年3月に東京労働局から駅業務の交通協力会への委託について、労働者派遣法違反の疑いで指導を受けました。業務委託が偽装請負の疑いがあるとして報道されました。この件については、先の公営企業会計決算特別委員会において立憲民主党の関口議員からも質問しました。その質疑のおいて、交通局は、法律違反の事実確認はないものの仕様書の記載で疑念を持たれないよう修正し労働局に報告したとのことでした。
ただ、地下鉄においての駅業務は、そもそも都の事業であるので、直接雇用した職員が安全な運行管理を行うのが前提だと思います。一般的に業務を外部に委託することで、人件費が安くなる傾向にあります。その分、全員が自身の職員ではないために、その指揮命令系統が組織と組織の関係になるため、現場同士でのやりとりが難しくなりがちです。
Q9 委託駅において、地震など緊急事態が発生した場合、現在の体制で、乗客の安全が守られるのか伺います。
A9
●重大な自然災害・事故等の発生時には、お客様の安全・安心を最優先に、交通局職員と委託職員とが協力して事態に対処
●委託職員についても、交通局職員と同等の緊急時の対応に関する研修や訓練を受けており、また、局が行う異常時総合訓練に参加するなど、適切に対応する体制を確保
Q10 同じ駅業務を担う協力会においては、正規、非正規と身分の差が生じています。都という公的立場でこの状況を黙認してよいのでしょうか。経営が厳しいのはわかりますが、偽装請負の問題の本質は低賃金労働にあります。協力会の職員の年収は300万円程度だという、これで暮らしていけるという認識があるのでしょうか。基本的な労働への考え方として望まない形の非正規雇用を正規雇用に転換することが重要で、都が積極的に改善する必要があります。勤労者間の待遇の差に関する認識を伺います。
A10
●都営交通協力会における従業員の雇用に関しては、法令等で定められた基準や手続きに基づき、協力会がその責任において適切に対応するもの
Q11 そもそも、都の正規職員が行うべき仕事です。委託と言っても、ほとんど人件費なので経営努力がほとんどできない領域であり、先方が決めることだとは言え、実質は委託費によって委託先の勤労者の待遇が決まってしまいます。さらに問題は、委託費が安いため、交通協力会でも正規ではなく非正規雇用になっていることです。同じ仕事をしてもあたかも身分の差になっている状況は変えなければなりません。
同一価値労働同一賃金の実現を図るべきで、同じ駅員としての仕事なら交通局でも都営交通協力会でも同じ賃金になるようにすべきだが、見解を伺う。
A11
●都営交通協力会における従業員の雇用に関しては、法令等で定められた基準や手続きに基づき、協力会がその責任において適切に対応するもの
4 バス路線の見直しの状況と影響は
Q12 世の中全体でバスの運転手不足が言われています。都営バスではどのような対策を行っているのか。また、直近の採用状況について伺います。
A12
●交通局では、バス乗務員の受験者の裾野を広げるため、受験資格の対象年齢を、19歳以上50歳未満まで拡大
●大型二種免許の未取得者を対象に、局の負担で免許を取得する養成型の採用選考を実施
●広報活動においては、採用ホームページやパンフレット、動画、SNS等を活用し、採用PRを充実
●令和5年度採用のバス乗務員の選考状況は、563名の応募があり、74名を採用
Q13 都営バスの赤字路線がコロナで7割から9割になったということです。民間会社であれば事業の存続の危機にあり、都として楽観してよいとは思いません。とはいえ、だからこそ都が担っている部分もあると思います。あらためて、都営バス事業として、高齢者や障がい者などのいわゆる交通弱者の移動手段の確保を継続的に行う必要があるが、見解を伺います。
A13
●都営バスは、通勤通学や買物、高齢者や障がい者の通院など、地域の暮らしを支える身近な移動手段であることから、赤字路線であっても、地域に必要な路線は黒字路線の収入で支えるなど、総合的な事業運営を行うことで維持
●引き続き、厳しい経営状況であるが、需要動向を踏まえた路線運営を行うとともに、収入、支出の両面から経営改善に取り組むことで、都民の足としての役割を果たせるよう、適切に対応
Q14 経営計画にはバス事業の早期黒字を目指すと記載があるが、どのように取り組んでいくのか、伺います。
A14
●都営バスでは、経営改善に向け、収入、支出の両面から様々な取組を実施
●支出面ではこれまでも、民間事業者への営業所の管理の委託や現業系職員の給与水準の見直しにより、効率的に事業運営
●コロナ禍を受け、営業所の水道光熱費などの経常的経費や、車両の更新などの投資的経費について幅広く見直しを実施
●一方、収入面では、需要が高まっている地域においては、路線やダイヤを増強するとともに、大規模な集客施設等とのタイアップや、広報誌の発行などにより沿線の魅力をPRし、需要を創出
●引き続き、こうした取組を着実に進め、収支の改善を図っていく
Q15 都営バスの一部路線について、はとバスへの業務委託が進んでいます。ここ5年間の委託状況の推移について伺う。また、今後どのようにしていくのか伺う。
A15
●令和元年度から5年度までの管理の委託の状況については、委託支所は5支所、委託路線数は令和元年度から順に42路線、43路線、43路線、42路線、41路線
●また、全国的にバス乗務員の不足が深刻化している中、委託先のはとバスにおいても、乗務員の確保は困難な状況になっていることなども踏まえて対応
委託の状況はほぼ横ばいのようです。厳し状況ですがさらなる委託は慎重であるべきです。
5 コロナの影響と対策
Q16 長期間にわたるコロナ禍の影響で乗客が減り、その間にライフスタイルが変わったことで、コロナ禍が一定程度おさまっても乗客が戻ってきません。小池知事は公約に満員電車ゼロを掲げていましたが、都の取組の目立った効果がないまま、コロナになりすべての交通機関から満員はなくなりました。毎日働く人にとっては、コロナ前より少しでも混雑が減っているのは事実ではあります。ただ、そのことは交通事業にとっては減収になります。知事が満員電車をゼロにするとりくみを考える際に、どこまで減収を考えていたかは分かりませんが、乗客が減れば収入は減ります。
都営地下鉄のコロナ禍前後の乗車人員の推移及び今後の取組みについて伺います。
A16
●都営地下鉄の乗車人員は、コロナ禍前の令和元年度と比較して、令和2年度に約32%の減少
●その後徐々に回復し、令和4年度は、約21%の減少
●このうち定期は、約25%の減少となる一方、定期外は、約14%の減少まで回復
●さらなる定期外需要の創出に向け、旅行者向けの企画乗車券の販路拡大や観光施設とのタイアップなどの取組を展開
コロナは様々な影響がありました。(例えば、)長引くコロナ禍でコミュニケーションの機会が減り、ストレス発散もうまくできないなど、精神的な影響も多かれ少なかれあったと思う。
Q17 職員のメンタルヘルス対策をどのように行っているのか伺います。
A17
●交通局では、厚生労働省の指針に基づき、「職員の心の健康づくり計画」を策定
し、対策を推進
●全職員を対象にストレスチェックを実施し、適宜、産業医による面接指導
●精神保健相談員による健康相談、各事業所での巡回相談などの取組
●職員及び管理監督者への教育・啓発のため、研修や講演会を開催
●精神的問題を抱える職員に対して産業医及び精神科医による相談を行うほか、休職者の職場復帰訓練や復務診断を実施
効率だけを追求すればぎりぎりの人数でよいかもしれませんが、働く人は有給もとるし病気もするし、実際コロナがありました。災害時も含め、一定の余裕や余力がないと危機に弱くなります。余剰人員を抱えるという意味ではなく、
Q18 休暇や病気への対応を向い越した一定程度余力を持たせてこそ安全安心な運行を維持する公共交通機関だと思いますが、見解を伺います。
A18
●交通局は、地方公営企業として、最小の経費で最大の効果を発揮できるよう事業
運営
●人員については安定した輸送サービスを提供できるよう必要数を確保
6 将来の都営交通のあり方について
さまざま質問しましたが、最後に、将来の都営交通のあり方について質問します。遠い将来は全自動化や無人化もあるかもしれませんが、当面は人が必要ですし、人を大切にしなければ安全の確保はできません。少子高齢化、インターネットの普及など、公共交通にとってはますます厳しい状況になりますが、とはいえ、いわゆる交通弱者の移動手段の確保としてますます重要性が増します。公共交通機関の役割として厳しい経営環境でも責任をもって事業を継続する必要があると考えますが、
Q19 都営交通のあるべき姿について交通局長の見解を伺います。
A19
●地方公営企業の事業運営に当たっては、独立採算制の下、経済性の発揮と公共の
福祉の増進を実現することが求められている
●都営交通を取り巻く事業環境は厳しい状況が続くものと見込まれるが、デジタル技術の活用により業務の効率化を図るなど、不断の経営改善に取り組むことで、中長期的に安定した輸送サービスを提供し続けていくことが、首都東京の公営交通事業者として果たすべき責任と役割
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