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都議会質問記録

【19】2010/10/28 高齢者と介護保険、障がい者、低所得者対策、中国残留邦人問題について質問

2010年10月28日、東京都議会 厚生委員会において福祉保健局の事務事業報告についての質疑を行いました。以下に質問と答弁を掲載します。

1.高齢者福祉と介護保険について

〇中村委員 それでは、大きく4点について質問します。高齢者施策、障がい者施策、低所得者対策と中国残留邦人問題の4つについて質問します。最初に、高齢者福祉について質問します。
 平成12年に介護保険制度が創設され、10年が経過しました。この間、要介護認定者は、約17万6千人から42万4千人と2.4倍に増加し、介護サービス利用者も約10万6千人から34万7千人と3.3倍に増加するなど、制度は着実に定着してきました。また、平成18年には軽度の要介護者の増加などを踏まえ、介護予防事業の導入や地域密着型という新たなサービスの創設、さらには、地域の総合相談機関である地域包括支援センターの創設など、大幅な制度改正が行われました。
 現在、平成24年に実施される診療報酬改定と介護報酬の同時改定に向けて、国において介護保険制度の見直しが検討されています。しかし、新たな見直しを行うには、その前提として前回の介護保険制度の改正で創設された事業の検証をしっかりと行うことが必要です。そこで伺いたいと思います。平成18年の制度改正で導入された地域密着型サービスのうち、夜間対応型訪問介護については、先般、会計検査院が国の交付金を受けたにもかかわらず、既に廃止した事業所があったと指摘しました。鳴り物入りで創設された新しいサービスにもかかわらず、そのような指摘をされたことには驚きました。そこで、都内における交付金の交付実績と事業者の廃止や休止の状況について伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 夜間対応型訪問介護とは、夜間に利用者宅を定期的または通報を受けて随時訪問し、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話を行うものでございます。平成20年度における国の区市町村に対する交付金は、この夜間対応型訪問事業所を創設または既存建物を改修して整備した場合、補助額は一施設当たり5百万円でございます。また、事業に必要な備品購入費等諸費用に対する補助額は、一施設当たり3千万円となっております。
 これまでに都内で開設された事業所は37カ所でございます。このうち、国の交付金の交付を受けたものは29カ所、補助額は8億2,907万円となっております。このうち、交付金による補助を受けた施設のうち、1カ所が平成22年3月末に廃止、6カ所が平成22年10月25日現在、休止中でございます。

〇中村委員 状況はわかりました。それでは、その夜間対応型訪問介護事業所が開設しても廃止や休止に追い込まれる原因を、都はどのように考えているのか伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 夜間対応型訪問介護について、国は制度導入当初、この事業の想定利用者数を3百人から4百人としておりました。しかし、平成20年の都内事業所の平均利用者数を見ますと約43人であり、当初想定利用者数の約1割強となっております。その結果、平成20年には12カ所の事業所が休止しました。このように、国が当初想定した利用者数と実際の利用者数の大きな乖離が廃止や休止の原因の一つと考えられます。なお、平成21年には、事業者の努力により、平均利用者数は百名を超え、休止していた事業所も現在5カ所が再開しております。

〇中村委員 国は次期介護保険制度の改正をにらみ、新たなサービスを導入しようとしています。都は夜間対応型訪問介護の二の舞にならないよう、国の要求を注視すべきことを指摘しておきます。
 次に、介護予防事業を含む地域支援事業について伺います。同じく平成18年の制度改正で創設された地域支援事業において介護予防事業が導入されました。介護予防事業が生活機能の低下を早期に把握し、状態の軽減や悪化を防ぐという理念は理解できます。しかし、事業への参加率が低いなど、理念と現場の間にギャップがあると感じています。今後、市区町村において創意工夫を凝らした効果的な事業展開を図っていくべきと考えます。そこで、地域支援事業全体の現状と課題について伺いたいと思います。まず地域支援事業の目的と事業内容、都の実績額はどのようになっていますか。伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 地域支援事業は、介護保険に該当しない方が、要介護や要支援の状態になることを予防するとともに、可能な限り地域で自立した日常生活を営むことができるように支援することを目的として創設されました。地域支援事業には、すべての区市町村が行う介護予防事業や地域包括支援センターの運営費といった必須事業と、各区市町村の判断により実施される、例えば、家族介護者支援事業などの任意事業があり、区市町村の責任のもとに実施をされております。この事業に必要な費用は、介護保険法に基づき、保険料と公費から成る地域支援事業交付金により賄われております。平成21年度の事業費は157億8,612万円で、このうち、都は交付金として26億8,255万円を負担しております。

〇中村委員 地域支援事業は、総給付費の3%という枠組みの中で行われていますが、一律の上限を撤廃すべきであるという意見も聞きます。そこで、都内の市区町村における課題を伺いたいと思います。

〇狩野高齢社会対策部長 介護保険法施行令により、地域支援事業には、介護給付費見込み額の3%以内という上限が設けられております。しかし、東京都の調査によると、平成21年度は、都内24の区市町村で地域支援事業に要する予算額が不足し、一般会計からの負担を行っており、上限枠の設定が、地域の柔軟な事業展開が十分にできていない可能性がございます。そこで、都は、地域支援事業について、区市町村が地域の実情に応じて積極的に事業展開できるよう、十分な財政措置が図られるよう国に緊急提言しております。

〇中村委員 地域主権の視点に立てば、保険者である市区町村が独自の裁量で地域の実情に応じた事業が展開できる仕組みが確保されるべきであると思いますので、そういったことも述べておきます。
 次に、地域包括支援センターについて伺います。高齢者の見守り機能など、在宅の高齢者が地域で安心して生活を続けられるためには、地域包括支援センターが中心的な役割を果たすべきだと考えます。そこで、地域包括支援センターの目的と都内における設置の状況を伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 地域包括支援センターは、高齢者や家族からの相談に応じるとともに、医療や介護などのサービスが適切に提供されるよう、関係者の連絡調整を行うことを目的に創設された機関でございます。区市町村が直営または委託により実施しており、平成22年10月1日時点で都内に364カ所設置されており、直営が25カ所、委託が339カ所決まっております。

〇中村委員 地域包括支援センターは地域の拠点機関として大きな期待をされてきましたが、その一方で介護予防ケアプランの作成に忙殺されるなど、十分に機能を発揮できていない現状があります。そこで、地域包括支援センターの課題について伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 都の調査によりますと、地域包括支援センター職員の業務時間の約4割弱が要支援者の介護予防ケアプラン作成に割かれているとの結果が出ております。そのため、高齢者の実態把握や認知症の相談といった総合相談業務や高齢者虐待対応などの権利擁護業務、地域のネットワークづくりなどの役割が十分に果たせていない現状がございます。介護予防ケアプラン作成に当たっては、居宅介護支援事業所に委託することが可能となっておりますが、委託件数に制限が設けられていること、報酬単価が要介護者に比べて著しく低いことなどから、委託しようとしても、受託してくれる居宅介護支援事業所が得にくいという問題がございます。そのため、都は、地域包括支援センターがケアプランを必要に応じて外部委託し、総合相談業務などに集中して取り組むことができるよう、委託件数制限の撤廃等、報酬単価の見直しを国に提言しております。

〇中村委員 地域包括支援センターの機能の充実に向けて、制度の仕組みを再構築する必要があるということも指摘をしておきます。
 さて、介護保険制度の改正の議論において、その柱となるのが地域包括ケアの方向性です。地域包括ケアとは、高齢者の住宅を基本に、医療や介護のみならず、福祉サービスを含めたさまざまな生活支援サービスが日常の生活の場で提供できる体制のことです。地域には、制度としての介護保険や医療保険のサービスだけではなく、ボランティア団体の活動などがあります。しかし、これらは断片的に存在していて、必ずしも有機的に連動していません。都では今年度より、シルバー交番設置事業を開始しています。ネーミングは少しいまいちだと思うんですが、我が三鷹市でも1カ所で実施をしておりまして、高齢者の見守りの拠点として、大変期待をしているところでもあります。そこでまず、このシルバー交番設置事業の概要と現状について伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 シルバー交番設置事業は、昨年度立ち上げました少子高齢時代にふさわしい新たな「すまい」実現プロジェクトチームの中で、地域全体にケアつき住まいと同様の安心を提供できる仕組みとして提案されたもので、本年度より事業を開始いたしました。高齢者などからの相談にワンストップで対応するとともに、訪問や安否確認などにより、安心・安全を確保する取り組みでございます。本年度は三鷹市で1カ所、墨田区で2カ所の計3カ所で実施しております。

〇中村委員 市区町村には、地域の拠点として地域包括支援センターを初め、独自の取り組みが行われているかと思いますが、このシルバー交番設置事業の位置づけと設置促進に向けた取り組みについて伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 シルバー交番設置事業は、地域包括支援センターがその機能を十分に果たせていない状況の中で、地域包括支援センターの機能を補完する東京都独自の取り組みでございます。地域包括支援センターや、例えば三鷹市で行われております、住民がみずから見守り支え合う、共助の仕組みづくりとして実施している地域ケアネットワークといった区市町村独自の取り組みと連携し、地域の実情に応じて実施することで、高齢者の見守り機能の充実などに大きな役割を果たすことができると考えております。都は、今月15日に、区市町村向けに、こうした先進的な取り組みを行っております墨田区、三鷹市による事例報告会を開催したところであり、引き続き区市町村へ働きかけを行い、設置促進に努めてまいります。

〇中村委員 ただいまの答弁にもありましたが、地域包括支援センターや区市町村といかに連携していくかが重要だと思います。予算上はまだ枠がありますので、そういった設置の促進に努めていただきたいと思います。高齢者の見守り機能として有効に機能するよう、しっかりと取り組みを進めていただくことも要望いたします。
 さて、高齢者を取り巻く環境や生活の状況はさまざまであり、当然、高齢者の生活を支える手だても多種多様です。つまり、介護保険のサービスだけでは高齢者の生活を支えることは困難なわけです。そこで、食事の用意や日常生活上のちょっとした困り事など、介護保険外サービスの充実が必要と考えますが、認識を伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 地域において高齢者の在宅生活を支えるためには、見守りや食事、外出支援など、多様な生活支援サービスが必要でございます。しかし、これらすべてのサービスを介護保険制度で行うことは、だれにも起こり得る介護事故に対処するために、40歳以上の国民が連帯して保険料を負担する保険制度の趣旨から申しますと、必ずしも適切ではありません。このため、NPOや民間事業者などの多様な主体によるサービスを、介護保険制度と組み合わせて提供することが必要であると認識しております。こうした保険外サービスについては、区市町村が、先ほど申し上げました地域支援事業などにより地域の特性を踏まえ、創意工夫を生かして行っており、さらに都は、独自に区市町村包括補助事業により支援しております。

〇中村委員 介護保険には制度の限界ということもありますので、それを見据えて、高齢者の生活を支えていく視点ということも不可欠であるということを述べておきます。
 さて、今後高齢者人口が増加し、それに応じて介護サービスも増加していきますが、介護にかかわる人材の確保も急務です。本年8月の介護関係職種の有効求人倍率を見ますと、東京が2.07と、全国平均の1.32を大きく上回り、いまだに人手不足が続いている状況です。そこで、昨年10月から、介護職員の賃金改善を目的とした介護職員処遇改善交付金事業が実施されています。本事業により、介護職員の待遇改善がどの程度進んだのか伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 平成21年度の介護職員処遇改善交付金の申請状況は、サービス種類別に事業所数を集計いたしますと、対象事業者数7千306事業所のうち、5千466事業所が申請しております。平均賃金改善額は、国が当初想定しておりました介護職員一人当たり月1万5千円とほぼ同額でございました。賃金改善の方法は、事業所により異なり、基本給や一時金手当など、さまざまな形で改善しております。

〇中村委員 介護職員の賃金が一定程度改善していることはわかりました。介護職員の待遇改善のため、この事業を着実に実施していただくことを要望しておきます。
 この項目の最後として、都の市区町村に対する支援について伺います。市区町村では介護保険の保険者として、また高齢者福祉の実施主体として、高齢者施策を計画的に推進していく立場にあります。しかし、市区町村が作成した計画を見ますと、介護保険料を算定することに重点が置かれ、介護保険以外の福祉サービスをどのように進めていくかなど、不十分な点があります。例えば、ひとり暮らしで身寄りがなく、社会的に孤立している高齢者の福祉などは、単なる経済的給付で解決するものではありません。東京都は、広域自治体として、市区町村がこのような介護保険の範疇におさまらない高齢者の多様なニーズの把握等、適切な対応ができるよう支援していくべきだと考えますが、所見を伺います。

〇狩野高齢社会対策部長 区市町村は、地域の特性を踏まえて優先的に取り組むべき重点事項を、みずからの判断により選択して介護保険事業計画等に位置づけなければなりません。来年度策定をする第五期介護保険事業化計画においては、日常生活圏域ごとに、どのような支援を要する人々が、どの程度存在するかを調査する日常生活圏域ニーズ調査を行うこととされております。この調査により、地域や高齢者の課題等をより的確に把握し、必要なサービス量を盛り込んだ精緻で実効性のある事業計画の策定につながるものと考えております。都はこのような区市町村の取り組みに対して、今後とも支援してまいります。

〇中村委員 冒頭申し上げましたとおり、介護保険制度は着実に定着はしてきていますが、2055年には生産年齢人口、1.3人で高齢者1人を支える超高齢社会が到来します。こうした社会環境の変化に応じた制度の改正は不可欠ですが、18年度改正の轍を踏まないよう、調査やデータに基づいた実現可能性のある現実的なものでなければなりません。東京都は、市区町村に対する支援を一層強化するとともに、引き続き国に対しては、市区町村や事業者の現場の実情を踏まえた現実的な提言を行っていただきたいということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。


2.障がい者施策について


〇中村委員 次は、障がい者施策についての質問です。まずは、平成18年4月に障害者自立支援法が施行されて、どのような影響があったのか伺いたいと思います。当初、自己負担の増加ということが盛り込まれたため、障害当事者から不安の声が多く出たのですが、施行後、数年を経て、実際には生活はどうなったのでしょうか。また、この法律は、知的、精神、身体の三障がいの施策の一元化が特徴とされていますが、実際にはどのようになったのでしょうか。法制定について功罪さまざまいわれていましたが、都としての認識を伺います。

〇芦田障害者施策推進部長 障害者自立支援法の施行により、身体、知的、精神の三障害共通の制度となるとともに、NPOなど多様な事業主体の参入により、グループホームや日中活動の場など、福祉サービス基盤の整備が促進されております。また、施設サービスを日中活動の場と住まいの場に再編し、障害者がサービス利用を組み合わせて選択することが可能となりました。利用者負担につきましては、利用者は、サービス利用量と所得に応じて一定の負担を負うこととされましたが、国は、障害者の負担を軽減するため、平成19年4月から、負担上限月額の引き下げ等の利用者負担軽減措置を実施してきました。さらに、平成22年4月から、低所得者に係る障害福祉サービス及び補装具の利用者負担を無料としたところです。都は国に対し、利用者負担について、今後も必要に応じた軽減措置を検討することとあわせて、障害者の自立支援に関する法制度については、障害者の生活実態に即した効果的な仕組みとするよう、提案要求をしているところでございます。

〇中村委員 障がい者の生活実態については、引き続きまして注視をしていただきたいと思います。次に、小規模作業所などのいわゆる法外施設についてですが、平成23年度までに障害者自立支援法に基づく法内施設に移行することが求められていますが、小規模で経営が不安定であることから、法内化が大変難しいとの話も聞きます。小規模作業所の法内化に当たり、何が課題であり、事態をどのように受けとめ、都はどのように対応しているのか伺います。

〇芦田障害者施策推進部長 都としましては、法外の小規模作業所が障害者自立支援法に基づく新体系事業に移行することで、国から財政支援を受けて経営が安定し、法人として事業の透明性や公益性が発揮され、利用者支援の一層の充実が図られると考えております。こうした観点から、小規模作業所の平成23年度末までの法内化を促進しておりますが、法内化に際しまして、法人格の取得や施設経営のノウハウ、施設設備基準の充足、利用者数の確保などが課題となることが多いことは認識をしております。そのため、法内化に際して必要な施設改修や備品購入に要する経費の助成、法人格取得や団体運営について、知識及び経験を有するスタッフの派遣によるノウハウの提供、定員の充足に向けた小規模作業所同士の統合の促進等の支援策に取り組んでいるところでございます。さらに、法内施設に移行した後も、障害者自立支援法に基づく報酬に加えて、都が運営費の一部を補助しております。今後とも法外の小規模作業所が早期に法内化し、経営の安定を図ることができるよう、引き続き支援を行ってまいります。

〇中村委員 小規模な作業所は、その規模拡大への不安や、また規模拡大のために他の作業所と統合されるということは、運営方針の違いから余り望まれているとはいえないようです。小規模のままなら、市区町村事業の地域生活支援事業もあるのですが、自治体の財政などの問題から、こちらへの移行もスムーズではないようです。引き続き小規模な作業所が成り立っていくよう、支援をお願いします。
 さて、都は平成21年度から23年度までの3年間を対象に、障がい者の就労支援・安心生活基盤整備3か年プランを策定しました。障がい者が地域で居住する場として計画目標を定め、グループホームの整備が行われていますが、障がい者や家族のニーズにこたえられる状況でしょうか。整備状況を伺いたいと思います。また、その整備の目標数値の算定については市区町村からの集計と聞きますが、それは入所希望者の実態に即した調査がなされているのでしょうか。伺います。

〇芦田障害者施策推進部長 都は、障害者の就労支援・安心生活基盤整備3か年プランにおきまして、平成21年度から23年度までの3年間で、障害者のグループホーム、ケアホームの定員を、1,640人ふやすこととしております。初年度に当たる平成21年度におきましては、グループホーム等の定員数は504人増加し、平成21年度末の定員数は4千423人となっております。また、障害者の就労支援・安心生活基盤整備3か年プランを含む第二期東京都障害福祉計画の策定に当たり、都はサービスの利用状況や障害者等のサービス利用に関する移行、入所施設などからの地域移行促進という考え方を踏まえて、区市町村と調整を図った上で、都の目標数値を定めているところでございます。さらに、第二期東京都障害福祉計画の策定に当たりましては、障害を持つ当事者を含む外部の委員から構成される、東京都障害者施策推進協議会の提言を受けて策定をしております。

〇中村委員 東京都全体の数値目標の達成も重要ですが、地域的な偏りや障がいの種別による状況なども考慮し、希望される方の入所が図れるようお願いします。とりわけ、各自治体での財政状況により可能な目標数値なのか、実際の希望者のニーズに即した調査なのかについてはしっかりと確認し、実態の的確なニーズの把握が計画に反映されるようお願いします。また、グループホームの整備について伺いますが、東京は特に土地が高いため、その整備に困難が伴うとも聞いていますが、都としてどのような支援をしているのか伺います。

〇芦田障害者施策推進部長 都は、障害者の就労支援・安心生活基盤整備三か年プランに基づき、グループホーム等の整備費の事業者負担を半分に軽減する特別助成を実施し、整備を促進しております。また、障害者グループホームにおきましては、賃貸物件の賃借料や整備に係る事業者負担などの経費は、利用者が支払う家賃に反映されることとなります。このため、都は、利用者に対する家賃助成等を行っている市町村に対し、障害者グループホーム等、支援事業などにより財政的な支援を行い、利用者負担の軽減を図っているところでございます。

〇中村委員 グループホームの整備については、社会福祉法人であったりとか、当事者団体、また、親の経済的支援を望めなかったり、親からの自立を望む方々による整備の動きなど、さまざまです。都としても、支援策があるということですが、ぜひそうした方々への支援と丁寧な相談体制をお願いいたします。さて、先ほども述べましたが、障害者自立支援法の特徴の一つは三障害の一元化でしたが、実際には精神障がい者が十分なサービスを利用できているのでしょうか。知的や身体に比べてまだまだ不十分との声も聞きますが、状況を伺います。また、精神障がい者の地域移行、地域定着を進める上では、発症後、早期の対応や入院患者に対する退院促進支援、地域生活支援などの各段階での支援が必要ですが、これらの取り組み状況についても伺います。

〇熊谷障害者医療担当部長 障害者自立支援法の施行により、三障害のサービス提供の仕組みが一元化され、グループホーム、ケアホームや地域活動支援センターなどの相談支援事業所の整備が進んでおります。また、都は、グループホームなどの整備費の事業者負担を軽減する特別助成や障害者施策推進区市町村包括補助事業を実施しており、精神障害者が利用できるサービスが充実してきております。さらに、都においては、精神障害者の地域移行、地域定着のための取り組みを進めており、平成十八年度から、十二カ所の委託事業所に配置したコーディネーターが、協力病院へ出向き、入院から退院に向けた支援などを行う退院促進支援事業を実施しております。また、東京都地方精神保健福祉審議会の意見具申等を踏まえて、今年度、医療の中断により症状が悪化し、地域での安定した生活が困難な精神障害者に対して、精神保健福祉センターの医師、保健師等の専門職チームが、区市町村や保健所と連携して訪問等の支援を行うアウトリーチ支援モデル事業を実施しております。審議会では、引き続き精神障害者を地域で支えるための具体的取り組みについて検討しており、精神疾患の早期発見、早期対応についても、現在、議論を行っているところであります。

〇中村委員 心身障がいについては、長期の社会的入院が問題となり、退院促進支援をしていただくことも大変重要な施策ですが、そうした状況にならないよう、早期の発見や対応への取り組みが、今後、一層充実することも望まれます。現在、審議会で議論されているとのことですが、国の方でも施策を進めていますので、都としても対応していただくようお願いします。さて、障がい者にとっては、地域で生活するためには就労が大変重要であり、引き続きの支援をお願いします。しかし、就労だけでなく、また、さまざまな場面での差別も懸念されます。都としては、障がい者の差別をなくすためにどのような取り組みを行っているのでしょうか。差別禁止条例を制定することも一つの方策であると考えますが、見解を伺います。

〇芦田障害者施策推進部長 都はこれまで、どんなに障害が重くとも、障害者がみずからの人生のあり方を選択、決定し、人間としての尊厳を持って生活できるよう、就労支援や障害福祉サービス基盤の整備など、障害者の自立を支援する具体的な施策を着実に積み重ねてきました。また、福祉のまちづくり条例により、ハード面での整備を推進するとともに、障害に対する都民の理解を深めるため、障害者週間における普及啓発活動などを実施しております。ご質問の障害者差別禁止条例につきましては、差別の定義をどのようにとらえるかなど多様な意見があり、運用の難しさが指摘されております。また国は、平成19年9月に署名した障害者権利条約の批准に当たっては、障害者差別を禁止する理念が規定されている障害者基本法など、関連法令の改正も予定していると聞いております。今後とも、都は、国の動向を注視し、的確に対応してまいります。

〇中村委員 ご答弁ありがとうございました。今回、障害者自立支援法施行から数年を経たことを受けて、全般的な状況を伺わせていただきました。現在、障害者自立支援法の見直しが国の方で議論されていますが、多くの課題を解決するためにも、早急な対応について私も自治体議員の一人として望んでいます。制度がたびたびかわり、障がい当事者や家族支援団体など、これまでも混乱をしてきた場面はありましたが、今後も国の動向を見据えて、障がいのある方が地域で安心して暮らせるような取り組みをお願いしたいと思います。


3.低所得者対策について

〇中村委員 次に、低所得者対策として、生活安定化総合対策事業について伺います。この事業は、知事が知事選の前に打ち上げた低所得者に対する都民税の軽減という公約が、姿を変えて制度化されたという経過がありました。平成20年度から3カ年の事業ということで行われましたが、その実績と成果はどうだったのでしょうか。生活保護の生活水準よりも、場合によっては低い所得の方々も含めて、低所得者対策として有効だったのでしょうか。対象となる方々にこの制度が知られ、そうした方々がサービスを受けることができたのか伺います。

〇市川生活支援担当部長 東京都は、平成20年度から区市町村などと連携して、真に困窮している都民の方々がみずから生活安定への道を切り開けるように、国に先駆けまして生活就労支援等を重層的に講じる生活安定化総合対策事業を実施してまいりました。平成20年度から平成22年9月末現在の実績といたしましては、生活安定応援事業では、相談件数10万2,618件、生活サポート貸付事業の貸付件数は1,718件、チャレンジ支援貸付事業の貸付件数は6,944件、住居喪失不安定就労者サポート事業の事業登録者数につきましては2,109人、介護人材育成支援事業におきます資格取得者数は2,398人、就職者数は1,334人となってございます。なお、産業労働局が実施しております就職チャレンジ支援事業では、平成22年7月末までの実績ではございますが、職業訓練受講者数が3,940人となってございます。本事業では区市町村との連携によりまして、地域レベルでの多くの相談を受け、資金貸付職業訓練や就労につなげてきたところでございます。また、低所得の家庭の子どもたちの進学に寄与するなど、緊急総合対策として一定の役割を果たしてきたと考えております。また、事業の実施に当たりましては、区市町村の福祉部門や教育部門、社会福祉協議会などの関係機関と連携するとともに、電車広告を初めましてさまざまな広報媒体を活用し、対象者への事業周知を徹底して行ってきたところでございます。

〇中村委員 生活保護の水準ぎりぎりの生活の方や、また、場合によっては生活保護以下の水準の方でも、受給を望まず自立されている方もいます。最終的には生活保護というセーフティーネットはあるのですが、財源の問題の側面からとらえると、国の事業ですので、市区町村の財政を圧迫しているという側面もあります。だからといって困っている人を窓口で追い返すこともできませんので、そういう状態にならないための対策が今後とも必要です。そこで、この3カ年ということで始まった生活安定化総合対策事業ですが、今後は継続をしていくのでしょうか、また、制度の改善など考えているのか伺います。

〇市川生活支援担当部長 生活安定化総合対策事業は、平成20年度から緊急総合対策3カ年事業として実施してきたものでございます。このような都の先駆的な取り組みがありまして、国は昨年度、住居等に困窮している離職者に対する職業訓練、生活給付、資金貸付、住宅手当などの第二のセーフティーネットを構築いたしました。今後の施策の方向性につきましては、こうした国施策の動向や経済、雇用情勢等を踏まえまして、都として区市町村とも連携しながら、適切に対応してまいります。

〇中村委員 現在、日本全体で自殺が3万人を超える異常事態が続いていますが、貧困と自殺との関係をどう考えていますでしょうか。借金や失業が原因でうつ病になり、自殺をするということも多いと聞きます。自殺対策という観点からも貧困対策を強化すべきと考えますが、所見を伺います。

〇市川生活支援担当部長 自殺の背景には、健康問題や家庭問題、失業や経済的問題などの多様な要因が複雑に絡み合っているとされております。東京都はこれまでも、労働や精神保健、法律機関等のさまざまな関係窓口との連携も図りながら、低所得離職者等に対する福祉施策を実施してきたところでありまして、引き続き施策の推進に努めてまいります。

〇中村委員 自殺をされるというのは、よほど追い詰められている方々ですから、死を選ばないまでも、苦しんでいる方ははるかに多くいると推測されます。お答えいただいたように、自殺の要因は多様であると思いますが、直接、間接に貧困が絡んでいることも多くありますので、その動向を見据えて貧困対策の強化をお願いします。


4.中国残留邦人問題について

〇中村委員 最後の質問として、次に中国残留邦人問題について伺います。私は長年、中国残留邦人の支援活動に取り組み、帰国支援や日本語教育、生活相談を行ってきました。本件は、都議会、平成21年第4回定例会にも文書質問を行いましたが、現状と課題の確認をするために、以下質問します。
 そもそも中国残留邦人は、終戦の混乱や冷戦などの国際情勢のもとで、何十年も中国に残留を余儀なくされた方々です。最近は余り報道されなくなりましたが、日中国交回復後のころは、訪日調査による肉親との涙の対面が報道されていましたが、実際にはこの問題は、その帰国後の生活にありました。帰国がおくれたこともあり、戦後65年を経過しましたが、いまだに言葉や生活習慣の違いにより苦労され、また、数十年の歳月が、問題は子どもや孫にまで拡大してしまいました。国の責任と補償を求めて、国家賠償請求訴訟も起こされましたが、国との和解がなされ、国の責任は棚上げになりましたが、法律が改正されて新たな支援策の導入がされました。そこでまず、現在都内には何人の中国残留邦人が住まい、家族を含めると支援給付受給者は何人いるのでしょうか。また、新支援法の本格施行から約2年半が経過しましたが、それにより生活がどのように改善されたのでしょうか。現状と課題をどう受けとめているか伺います。

〇市川生活支援担当部長 平成22年3月末現在、都内に居住し、いわゆる中国残留邦人等支援法による支援給付を受けて受給されております中国残留邦人等とその配偶者の数は2,005人でございます。支援給付を受給していない中国残留邦人等の正確な人数を把握することは困難でございますが、平成20年3月21日時点での国の資料によりますと、都内の中国残留邦人等は1,470人でございました。また、平成19年11月に改正されました支援法の趣旨は、ご苦労を重ねてこられた中国残留邦人等の方々に、祖国で心安らかな老後の日々を送っていただくことと理解しておりまして、本格施行から約2年半が経過し、経済的には老後の生活の安定が図れたものと考えております。しかし、子どもの言葉の問題や地域住民との交流が進まないなどの課題もあり、都と区市町村とが連携して、地域の日本語教室や交流事業等に気軽に参加できる仕組みを整え、社会的自立を促していくことが重要と考えております。

〇中村委員 市区町村では、制度が生活保護に準拠していることもあり、生活福祉部門での対応が多いと聞いています。生きるだけではなく、よりよく生きるために、地域の中での支援がより求められています。市区町村の地域支援事業の取り組みはどうなっているのでしょうか。また、支援団体のない自治体も多く、地域福祉との連携をさらに進めるべきだと考えますが、見解を伺います。

〇市川生活支援担当部長 地域生活支援事業は、中国残留邦人等の自立を支援するため、地域における支援ネットワークの構築、日本語学習者への支援、通訳の派遣等を行うことによりまして、地域の一員として普通の暮らしを送れるように支援する事業でございます。この事業の実施主体は、原則として区市町村でございますが、都としても区市町村に対して、支援連絡会や研修を定期的に開催するなどにより、取り組みの拡充に向けた働きかけや支援を行っており、地域の方々との日本語交流事業や日本語学習を支援する事業、通訳等派遣事業など、多くのメニューに取り組む区市町村も出てきております。また、地域に支援団体のない区市町村においても、音楽会や日本語学習の実施、民生児童委員や町会、自治会との交流など、中国残留邦人等のニーズを踏まえるとともに、地域資源も活用しながら創意工夫した取り組みを行い、地域での居場所づくりや生きがいづくりに努め、地域社会との交流を図っているところでございます。

〇中村委員 国の援護対象が同伴で帰国した二世家族に限定されてはいますが、家族の別離から始まった問題だけに、呼び寄せ家族の問題は切り離すことができません。特に、中国残留邦人の二世は高齢化しており、就労も困難な状況にあります。国の援護事業ではなくても、地域福祉という観点から、日本語学校への補助を都単独事業で行ってきたように、都や市区町村の単独事業と組み合わせることで支援を行うこともできると考えます。中国残留邦人の二世の課題を都としてどう受けとめ、対策を講じるのか、見解を伺います。

〇市川生活支援担当部長 中国残留邦人等の二世にとりましても、社会的、経済的自立を図る上では、日本語習得や就労が課題となっております。中国残留邦人等と同伴帰国した二世につきましては、国の制度として、地域生活支援プログラム事業の中で、日本語教室等の紹介や就労支援等が受けられることになっております。中国残留邦人等と同伴帰国せずに後から永住帰国した二世につきましては、都が独自に、民間団体等が実施する日本語指導事業に対し助成を行い、受講料無料で学習できる日本語教室を確保しているほか、生活相談員制度を設け、自立定着の促進を図ることを目的に、日常生活等の諸問題に関する相談、助言、指導を行っているところでございます。

〇中村委員 ご答弁ありがとうございました。戦後処理問題は本来的には国の責任ですが、さまざまな社会状況のもと、地方には仕事も支援団体もないことから都心部に集まる傾向にあり、とりわけ東京都には多くの方が住んでいます。当事者の声を国に伝えて政策の改善を求めていただきたいのと同時に、地域で家族とともに安心して暮らすことで、本当に帰ってきてよかったと思えるよう、地域福祉という観点からも東京都の支援の充実をお願いして、質問を終わります。

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