【21】2010/11/24 精神疾患の施策について質問
2010年11月24日、東京都議会 厚生委員会において都民から提出された「障害者自立支援法による医療費窓口負担額の助成に関する請願」に関して質疑を行いました。以下に質問と答弁を掲載します。
〇中村委員 障害者自立支援法による医療費窓口負担額の助成に関する請願に関して質問します。障害者自立支援法については、三障がいの施策の統合という利点はあったものの、自己負担の増加等の問題点があり、当初からその見直しを求める声がありました。そのため、民主党は、2009年の衆議院議員選挙のマニフェストでは、その任期中に実現させる政策として、障害者自立支援法を廃止して障がい者福祉制度を抜本的に見直すと公約しました。さらに、2010年の参議院議員選挙のマニフェストでも、応能負担を基本とする包括的な障害者総合福祉の法律を制定すると公約を発展させました。そして、現在、政府ではその実現に向けた取り組みを進めています。そうした背景を前提にして質問します。まず、冒頭、改めて精神障がい者が通院した際の窓口負担を定めている制度の変化について伺います。障害者自立支援法以前の旧精神保健福祉法32条による通院医療費公費負担制度から、障害者自立支援法による自立支援医療制度へ制度がどのように変わったのか、伺います。
〇熊谷障害者医療担当部長 旧精神保健福祉法第32条では、精神障害者の通院医療について、医療保険と公費負担とで95%を負担し、残り5%を本人負担としておりました。障害者自立支援法では、精神障害者の通院医療費について、原則として医療保険と公費とで9割負担し、利用者が一割の定率負担をすることとしております。また、低所得者への負担軽減策として、医療保険が同じ世帯の所得水準及び病名ないし治療方針に基づく高額な治療の継続の要否に応じて負担上限額を設定しております。
〇中村委員 制度の変化について伺いましたが、基本的な本人負担が5%から10%になったとのことです。次に、都内における精神疾患の方の人数と自立支援医療を受けた方の人数を伺います。また、増加傾向にあるとも聞きますが、どのような傾向にあるのでしょうか。また、都の当該負担額は、自立支援法施行の前後でどのようになったのか、決算額を伺います。
〇熊谷障害者医療担当部長 都民の精神疾患患者数につきましては、厚生労働省が3年ごとに行っている患者調査の推計値によりますと、平成17年284,400人、平成20年が294,000人で、この間、9,600人の増、3.4%の増加となっております。自立支援医療における精神通院医療の認定を受けた方、認定者数は、平成17年度に122,519人でございます。これは、旧精神保健福祉法32条による医療費公費負担制度の認定者数でございます。新制度になりました平成20年度は127,753人で、5,234人の増、4.3%の増となっております。精神通院医療の決算額は、旧精神保健福祉法32条による医療費公費負担の決算額については、平成17年度約155五億円でございます。自立支援法施行後の平成20年度の精神通院医療の決算額は、平成20年度で約178億円、約14.8%の増となっております。
〇中村委員 精神疾患は増加傾向にあるとのことです。近年、特にうつ病の方がふえていると聞きますが、ストレスが多い現代社会、とりわけ人口が密集する東京都では、心の健康は大きな問題です。また、都でも大変重要な問題との認識のもとで、財政的にも多くの負担をしていることもわかりました。さて、自立支援法施行の際には、医療費の自己負担分が5%から10%にふえているということで、当事者から法改正への声が多く出ました。そこで、東京都では、独自の施策で所得が低い世帯への軽減策を導入し、区市町村民税が非課税の方は窓口負担をゼロとしました。請願では、軽減策が適用されなかった場合について問われていると思いますが、診療控えなどの影響があったのか、都の認識を伺います。また、都の独自制度による軽減策が適用され、影響がどの程度緩和されたと考えるのかもあわせて伺います。
〇熊谷障害者医療担当部長 自立支援法施行後の自立支援医療における精神通院医療の認定を受けた方の数は、先ほど答弁申し上げたように増加傾向にあります。また、平成18年度の都独自の軽減措置分を除いた一人当たりの給付額が123,800円と前年度に比べて2%減でしたが、診療報酬自体がマイナス3.16%改定であったことを勘案いたしますと、減少傾向は読み取れません。したがいまして、制度改正による受診抑制、診療控えの影響はなかったものと認識しております。平成21年度の精神通院医療の給付決定人数は136,570人であり、そのうち、生活保護の世帯を含め72,391人、全体の53%の方については無料となっており、区市町村民税非課税世帯に対する都独自の軽減策の適用者は41,915人、全体の31%となっております。
〇中村委員 制度をつくる際には公平性も大切ですし、財政的な制限もあります。しかし、重大な問題として取り組まなければならない課題であれば優先して取り組むこともありますので、そのためにも当事者の生活実態や意見については、区市町村や医療関係者を通じて、もしくは直接聞いたりするなどして把握しておく必要があります。引き続き状況の把握と、それに基づいて対応するよう努めていただきたいと思います。また、この自立支援医療については、申請することで軽減がされるのですが、対象の方に十分広報されているのでしょうか。制度の活用が十分に図られる必要がありますが、当事者への告知や広報の方法と実情を伺います。
〇熊谷障害者医療担当部長 障害者自立支援法に基づく自立支援医療費制度の開始時及び制度の変更時には、特に個々の医療機関に対し情報提供を行うことなどにより、対象者への周知を図ってまいりました。また、多くの医療機関の窓口では、対象者に対し、精神通院医療の仕組みの説明や申請手続等のサポートを行っており、丁寧に周知されております。都が発行する自立支援医療費制度、精神通院医療に関するリーフレットを、区市町村の精神保健福祉相談の窓口や福祉事務所、東京都医師会等に配布しておりますほか、ホームページにも掲載しております。リーフレット以外にも、障害者自立支援法のサービス利用についてや「社会福祉の手引」など、各種福祉、医療制度等を周知する冊子に本制度に係る内容を掲載するなど、周知を図っております。
〇中村委員 負担がふえる場合は自動的にすべての方が対象になるのですが、負担を減らす場合は申請主義になっていることが多くあります。ご自分の判断で申請しないということでしたらよいのですが、知らなくて申請できなかったということがないよう、引き続き周知をお願いします。また、自立支援医療については、医療費の負担以外に問題はないのでしょうか。引きこもって病院に行けなかったり、通院しても短時間しかカウンセリングが受けられなかったり、多くの患者がいるため次の診療までの間が随分とあいたり、治療、ましてや自立につなげるには困難とも思われるケースの話も聞きます。また、薬物療法で出された薬の服薬管理ができない状態では、治療の効果も薄れてしまいます。精神疾患の医療については、このようなさまざまな声を聞きますが、重要なのは身近な地域で継続して適切な治療を受けられるようにすることであり、そのために都はどのような対応をしているのか、伺いたいと思います。
〇熊谷障害者医療担当部長 精神科医療におきましては、精神障害者が適切な医療をタイミングよく受けられるような支援体制が重要であります。東京都地方精神保健福祉審議会での議論を踏まえ、今年度、医療中断などにより地域における安定した生活の継続が困難な精神障害者に対する訪問型支援をモデル実施しているところであり、その評価、検証結果を踏まえて本格実施を目指してまいります。
〇中村委員 ご答弁いただきました訪問型支援は、今後重要になります。社会的入院をされている方々の退院促進を進めるためにも、訪問型支援は欠かせません。モデル事業から早期に本格実施に展開ができるよう取り組んでいただくことを要望します。また、精神疾患については、重症化してから医療を受けるよりも、早期発見、早期支援の方が重症化を防ぎ、早期の社会復帰も期待できます。ちょうど本日、24日の夜にも、先ほど話がありました東京都地方精神保健福祉審議会の合同部会が開会されるようですが、施策の推進を望みます。精神疾患については、当事者の医療費負担の軽減も当然重要な課題ですが、同時に、適切な治療を受け、重症化を防ぐような施策を展開することも重要であると考えますが、所見を伺います。
〇熊谷障害者医療担当部長 精神疾患患者について、早期発見、早期支援により重症化の防止を図ることは重要であります。現在、東京都地方精神保健福祉審議会では、身近な地域で症状に応じた適切な治療が受けられるような精神科医療体制について議論しており、その議論の中で、精神障害者を地域で支えるために、早期発見、早期支援に向けた、より効果的な取り組みについても検討していただいているところであります。
〇中村委員 ご答弁ありがとうございました。請願の提出に当たり、精神疾患に関する医療制度についても質問しました。先ほども述べましたが、心の健康の問題はこれからますます深刻になっていくとも予想されます。医療費の本人負担についてはもちろん軽い方がよいのでしょうが、都として独自の軽減策が採用されていることがわかりました。また、同時に、医療費以外にも多くの課題もあり、今後、自立支援のためには就労支援等を含めて施策の一層の展開が望まれます。現在、障害者自立支援法の抜本的な見直し作業が進められ、障害者総合福祉法への改正を目指した取り組みが行われていますが、精神疾患が国民病ともいえるほど大きな問題になりつつある今、精神疾患対策基本法の制定を目指す動きもあります。東京都としても、こうした動きを見据えつつ、都民の心の健康の保持増進に努めていただきたいと思います。以上で質問を終わります。
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