【22】2010/12/09 障がい者の就労支援について質問
2010年12月9日、東京都議会 厚生委員会において、議案である「東京都練馬就労支援ホーム外1施設の指定管理者の指定」、「東京都通勤寮の指定管理者の指定(江東、大田、豊島、立川、葛飾、町田の6議案)」の7議案について、福祉保健局に質問を行いました。以下に質問と答弁を掲載します。
1.東京都練馬就労支援ホーム外1施設の指定管理者の指定
〇中村委員 それでは、議案200号から206号の議案について質問いたします。まず、東京都練馬就労支援ホームと東京都大泉就労支援ホームの社会福祉法人東京援護協会への指定管理者への指定の議案について質問します。議案調査のために、たきぐち副委員長と田中委員とともに練馬就労支援ホームを見学し、お話を伺ってきました。まず最初の質問として、東京都練馬就労支援ホームと東京都大泉就労支援ホームはどのような施設ですか。改めて両施設の役割と法的な位置づけを伺います。
〇芦田障害者施策推進部長 東京都練馬就労支援ホーム及び東京都大泉就労支援ホームは、障害者自立支援法に基づく施設でございますが、同法の経過措置の適用を受けている旧法指定施設で、改正前の身体障害者福祉法に規定されていた身体障害者授産施設でございます。身体障害者授産施設は、身体障害者手帳を持っている18歳以上の身体障害者で雇用されることの困難な人等に対して、入所または通所による訓練、生活指導及び授産作業を行う施設でございます。
〇中村委員 現在、障害者自立支援法は国で見直しを進めていますが、現在の法律では平成23年度中に新体系に移行しなければなりません。今後、就労支援ホームはどのようなサービス体系になっていくのか伺います。とりわけ、今回の指定管理の指定は平成25年度までですので、指定期間中に期限を迎えます。新体系への移行においても、利用者の生活に支障がないようにしなければなりません。現状の入所者は定員50名で、生活支援と作業支援の両方を受けていますが、今後どのようになっていくのでしょうか、伺います。
〇芦田障害者施策推進部長 障害者自立支援法による経過措置では、平成23年度末までに新体系サービスへ移行することが求められております。東京都練馬就労支援ホーム及び東京都大泉就労支援ホームは、定員50名の旧法適用の身体障害者授産施設として運営をしてまいりましたが、新たな指定管理期間となる平成23年4月から新体系サービスへ移行することを条件に、指定管理者の募集を行ったところでございます。
新体系への移行先としましては、具体的には、東京都練馬就労支援ホームは、施設入所支援が定員50名、生活介護、定員20名、自立訓練、機能訓練、定員30名に移行をいたします。また、東京都大泉就労支援ホームは、施設入所支援、定員40名、生活介護、定員40名。これに加えまして、新たに通所部門として、就労移行支援、定員10名、就労継続支援B型、10名に移行をいたします。また、両施設それぞれにおいて、空床型の短期入所1名を実施いたします。
現在、入所している障害者は、今後、障害者自立支援法に基づく支給決定を受けた上で移行先のサービスを利用するほか、利用者の希望により地域への移行なども考えられます。新体系の移行に当たりましては、利用者の意向を尊重し、安心してサービスが受けられるよう円滑な移行を図ってまいります。
〇中村委員 安心してサービスが受けられるような移行を図るということを確認させていただきました。時代の変化とともに制度は変わりますが、何より利用者の生活に支障がないよう重ねて要望しておきます。また、両施設とも平成18年以前から、東京援護協会へ運営を委託し、平成18年から5年間は指定管理者として指定してきました。同協会へのこれまでの施設運営の評価と施設の実績について伺います。
〇芦田障害者施策推進部長 東京都では、指定管理者に対し、毎年、東京都指定管理者の管理運営状況評価を実施し、その結果を公表しております。この評価は、東京都指定管理者による公の施設の管理運営状況について、管理の履行状況、安全管理、法令遵守、サービスの利用といった観点から、指定管理者の業務実施状況等について、第三者の視点を含めた評価を行い、その結果を今後の施設管理運営に反映していくことで、都民サービスの向上を図ることを目的としております。
両施設の評価結果でございますが、平成21年度は、S、A、Bの三段階評価のうち、A評価となっており、管理運営が良好であった施設とされております。具体的には、大泉就労支援ホームについては、利用者に対する毎日のバイタルチェックの実施や体重測定結果等の統計的な分析を行うことにより、効果的に利用者の栄養状態を把握していること、練馬就労支援ホームについては、一週間程度の体験入所を実施するほか、職員が新規入所者の状況把握に努め、入所者の不安解消につなげていることなどを主な評価内容としております。
〇中村委員 運営は良好であるとの評価であったとのご答弁でした。指定管理者制度については、都が運営に直接は関与しなくなってしまうので、今後も評価と検証をしっかりと行い、常によりよいサービスを目指していただきたいと思います。
また、民間事業者によって、よりよいサービスを提供できるよう、制度の長所を生かすとともに、一方では、都も現場からの声を受ける機会をふやし、都の政策に生かすことが必要です。都立施設としての認識は持ち続けていただきたいと思います。
今回の特命の理由は、今後、民間移譲を予定しているため、利用者支援の継続性及び事業運営の安定性を確保する必要があるとされています。平成18年に策定された福祉・健康都市東京ビジョンで民間移譲の方針が出されました。新体系への移行がある中で、民間移譲して経営が成り立っていくのか伺います。
〇芦田障害者施策推進部長 平成18年に策定した福祉・健康都市東京ビジョンでは、身体障害者授産施設については、利用者の状況などを踏まえ、施設のあり方を見直した上で、施設体系の変更や運営面での統合等を進め、順次、民間移譲を行いますとされており、今後、条件が整った段階で民間移譲する予定であるため、特命で指定管理者の選定を行いました。両施設とも、平成23年4月から新体系サービスへ移行し、平成26年3月までの3年間を指定管理施設として運営していきますので、この間に運営状況を十分に見きわめ、条件整備に努めてまいります。
〇中村委員 ご答弁ありがとうございました。民間移譲して経営が立ち行かなくなってしまえば、入居者が困ってしまいます。その見定めについては慎重にお願いします。
また、障害者自立支援法によって地域移行が進められていますが、高齢になった方が地域で暮らす際、地域で孤立することなく生活していけるよう引き続きの支援をお願いして、次の質問に移ります。
2.東京都通勤寮の指定管理者の指定(江東、大田、豊島、立川、葛飾、町田の6議案)
○中村委員 次に、通勤寮の指定管理者の指定に関して、江東、大田、豊島、立川、葛飾、町田の六施設、六議案について一括して質問します。この議案も調査のために、大田通勤寮に見学をし、お話を伺ってきました。まず、最初の質問として、知的障害者通勤寮の概要について伺います。
〇芦田障害者施策推進部長 知的障害者通勤寮は、障害者自立支援法に基づく施設でございますが、同法の経過措置の適用を受けている旧法指定施設で、改正前の知的障害者福祉法に規定されていた知的障害者通勤寮でございます。知的障害者通勤寮は、愛の手帳を持っている15歳以上の就労している知的障害者に対し、居室その他の設備を利用させるとともに、独立及び自活に必要な助言指導を行うことを目的としている施設で、利用期間は原則3年となっております。都内には6通勤寮が設置されており、すべて都立施設でございます。定員は六通勤寮合計で185名となっており、平成22年10月1日現在の利用者は165名となっております。
〇中村委員 次に、指定先についてですが、この六施設とも、平成18年以前から今回の議案の指定先に運営を委託し、平成18年度から5年間は指定管理者として指定してきました。これまでの施設運営の評価と施設の実績について、こちらも伺います。
〇芦田障害者施策推進部長 先ほどの練馬就労支援ホーム及び大泉就労支援ホームと同様に、指定管理者に対し、毎年、東京都指定管理者の管理運営状況評価を実施し、その結果を公表しております。各通勤寮の評価結果でございますが、平成21年度は、S、A、Bの三段階評価のうち、各通勤寮ともA評価となっており、管理運営が良好であった施設とされております。具体例として、例えば、江東通勤寮では、利用者、職員が町会の活動に参加し、地域で生活していく上で大切なことを学ぶよい機会としていること、豊島通勤寮では、利用者の目線に立った説明と情報提供を心がけ、利用者の自己決定を尊重する支援に努めていることなどを主な評価内容としております。
〇中村委員 通勤寮についても良好との評価であったとのご答弁でした。就労支援ホームでも述べましたが、都としても検証と評価をしっかりと行っていただきたいと思います。また、もし万一、異変の兆しがあるようでしたら、すぐに現場に足を運び、よりよいサービスが提供できるようしていただくことも要望しておきます。
通勤寮には、児童養護施設を18歳で出た後に入ってくる方も多くいると聞きます。知的なハンディを持つ方が児童養護施設を退所し、帰る家庭もない場合、通勤寮はとても大切な場所だと聞きます。通勤寮の入所者のうち、どれくらいの方が児童養護施設からの受け入れになるのでしょうか。
〇芦田障害者施策推進部長 平成21年度における知的障害者通勤寮全体の入寮者数は63名であり、そのうち、児童養護施設からの入寮者は26名、全体の約4割を占めております。
〇中村委員 さまざまな状況下で入所してくる方がいると思いますし、児童養護施設からの入所だからと予断を持つことは必ずしも適切でない場合もありますが、その人の持つ心の傷や精神状況に異変があったとき、それを理解するには、これまでの家庭環境も理解することが必要な場合もあります。
通勤寮では、入所に当たり、児童養護施設から必要に応じて情報提供を受けるなど、適切に対応されるとも聞きました。通勤寮は、こうした個人情報も扱うため、大変重い責任のある仕事を担っているわけです。今後とも、引き続き連携を図り、利用者支援の充実に努めていただくことを申し述べます。
また、児童養護施設を退所し、帰る家庭のない方であっても、通勤寮の利用期限は3年です。利用者は、3年間の利用が終わった後は、通勤寮から地域に移行し、多くはグループホームで地域生活を送ると聞きました。地域での生活を支える上でも、退所した後も通勤寮が大きな役割を果たすことが重要であるとともに、利用者の地域移行にはグループホームの整備充実が必要と考えますが、いかがでしょうか。
〇芦田障害者施策推進部長 通勤寮は、就労している中軽度の知的障害者に対し、社会性を高める生活訓練などの生活支援や、職場訪問などによる職場定着支援を提供しております。三年間の利用期間が終了した利用者は、グループホームやアパートなど、地域生活に移行することとなりますが、地域での生活を定着させるためには、引き続き地域での支援が重要でございます。通勤寮におきましても、退所した利用者等の地域生活を支援し、定着させるため、生活支援ワーカーを設置し、退所後も金銭管理などの支援を行っております。
また、障害者のグループホーム、ケアホームにつきましては、平成17年度末2,645人の定員を、平成23年度末までに5,514人にすることにしております。そのため、都は、障害者の就労支援・安心生活基盤整備3か年プランに基づき、整備費の事業者負担を二分の一に軽減する特別助成を実施して、整備を促進しております。初年度に当たる平成21年度においては、グループホーム等の定員数が504人増加し、平成21年度末の定員数は4,423人となっており、おおむね計画どおり進んでいると考えております。今後とも計画数の達成に向けて積極的に整備を進めてまいります。
〇中村委員 通勤寮の退所後の居住の確保は大変重要です。グループホームの計画的な整備については、引き続きよろしくお願いします。
次に、通勤寮の障害者自立支援法での新体系サービスへの移行について伺います。平成23年度までの移行が定められていますが、どのようなサービスに移行するのでしょうか。新体系に移行すると、国の給付費が低いため、運営が厳しいと聞きます。国にその必要性を訴え、具体的にどのような働きかけをしてきたのか伺います。
〇芦田障害者施策推進部長 国は、障害者自立支援法における通勤寮の移行先として、宿泊型自立訓練を想定しております。この宿泊型自立訓練は、夜間の居住支援の場を提供し、生活訓練を行うものでございますが、その利用期間は原則二年であり、現在の通勤寮の3年に比べて短いことに加え、職員配置や運営費の面でも基準が低く設定されております。
このため、都は、国に対し、知的障害者通勤寮からの自立は三年程度を要していることから、宿泊型自立訓練の利用期間を3年まで可能とし、その間は十分な報酬単価とすること、また、通勤寮における日中の就労支援や就労継続支援部分の機能を付与し、その報酬を充実することを提案要求をしております。
〇中村委員 通勤寮は、東京都が早くから独自の施策として取り組み、重要な役割を果たしていますので、新体系への移行についても施策が生かされるよう、今後の国への提案をしていただきたいと思います。
また、その後には障害者福祉総合法の制定という動きもあるようですので、そうした際にも当事者の声をしっかりと伝えていただくことを要望します。今回の特命の理由は、今後、民間移譲を予定しているため、利用者支援の継続性及び事業運営の安定性を確保する必要があるとあり、先ほど質問した就労支援ホームと同じになっています。平成18年に策定された福祉・健康都市東京ビジョンでは、通勤寮についても民間移譲の方針が出されていますが、これまで東京都が先進的に取り組みを行い、また、現状の法体系に合致しないことから、民間に移譲すると経営が成り立たなくなるおそれがあります。民間移譲を行うに当たっては、当然、現行のサービス水準が守られ、民間事業者が運営できる条件が整うことが前提と考えますが、いかがでしょうか。
〇芦田障害者施策推進部長 民間移譲については、平成18年に策定した福祉・健康都市東京ビジョンに基づき、条件が整った段階で民間移譲する予定でございますが、3年間の指定管理期間の運営状況を十分に見きわめるとともに、今後も通勤寮の機能を維持できるよう、さまざまな機会を活用して国に働きかけてまいります。
〇中村委員 ご答弁ありがとうございました。これも先ほどの就労支援ホームと同じですが、民間移譲して経営が立ち行かなくなってしまえば、入所者が困ってしまいます。その見定めについては慎重にお願いします。
最後に、障害者の就労支援について福祉保健局長に伺います。今回、議案である就労支援ホームと通勤寮について質問しました。通勤寮については、国への積極的な提言が必要となります。また、地域移行や自立を唱えても、実際に障害者の就労の受け皿はまだまだ十分とはいえないという問題もあります。何よりそうした制度の変化が当事者に大きな影響がないようにしなければません。最後に、障害者の就労支援について、局長に今後の施策展開と決意を伺って質問を終わります。
〇杉村福祉保健局長 東京都は、第二期障害福祉計画におきまして、障害者が当たり前に働ける社会の実現を目指し、働く機会を拡大するとともに、安心して働き続けられるよう、さまざまな就労支援策を進めております。企業への一般就労の促進のため、就労面と生活面の支援を一体的に提供する区市町村障害者就労支援事業を実施いたしますほか、企業等での就労を体験する実習事業や企業向け普及啓発セミナーなども実施をいたしております。
また、本会議の場でも答弁をいたしましたが、都が設置を進めております区市町村の障害者就労支援センターにおきましても、さまざまな障害者の就労継続を支援する取り組みが行われております。
さらには、福祉施設で働く障害者の工賃の引き上げを目指しまして、東京都工賃アップ推進プロジェクトに基づき、福祉施設の経営努力を促すため、生産性の向上に向けた設備整備に対する補助、複数の福祉施設による共同受注の促進、施設職員の意識改革を図るセミナーなど、さまざまな事業を実施いたしているところでございます。
今後とも、関係各局や区市町村、そして企業、経済団体、ハローワーク等の関係機関、関係団体と連携をいたしまして、こうした取り組みを積極的に推進し、障害者の就労支援に取り組んでまいります。
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