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都議会質問記録

【7】2009/12/16 「中国残留邦人問題」について文書質問を提出しました

2009年12月14日、東京都議会 本会議において中国残留邦人問題について都知事に文書での質問を提出しました。毎回一般質問ができる市議会と違い都議会では時間等の制約から4年間に数回しかないため、質問機会を保障するため文書での質問を認める制度があり、それを活用したもの。回答は知事の決済を経て次回の議会に文書で回答(回答は2010年2月24日の本会議)されるが、議事録上は本会議での質問と同様の扱いがされます。

一 中国残留邦人問題について

 「中国残留邦人」は、先の大戦において国策により満州(現在の中国東北地方)に送られ、終戦の混乱の中で中国に遺棄され、その後何十年も帰国ができなかった日本人及びその家族のこと(以下、中国帰国者と呼ぶ)である。日本に帰国したのちも言葉や習慣の違いから生活が困窮する人が多く、長く苦難の時代が続いた。2008年4月より、いわゆる中国残留邦人支援法の改正法が本格施行されるに伴い、自治体における新たな支援策が始まり、東京都および東京都内の各自治体においても徐々に整備が整いつつある。しかし、戦後60年以上を経過し、高齢化が進んだこと、それに伴い本人だけではなく家族にも多くの問題が発生していることを鑑みると、より一層の支援体制を整え、地域でより良い生活ができるよう積極的な施策が必要である。そうした立場から以下の質問をする。

質問1 中国残留邦人問題は、国の責任において早急に解決に向けて取り組む問題であるが、東京都内にも多くの方が居住し、自治体としての責務も法律に明記されている。日本語教育、就労、雇用、住宅、二世・三世の教育、医療、介護、その他多岐に渡る課題がある。東京都は中国残留邦人問題についてどのような課題があると認識しているのかを伺う。

回答1 都は、従来から永住帰国した中国残留邦人等の地域社会における早期の自立の促進及び生活の安定を図るため、様々な支援に積極的に取り組んでいます。中国残留邦人等の方々が重ねてこられた御苦労を思えば、祖国で心安らかな老後の日々を送っていただくため、支援給付事業等による経済的支援とともに、地域における生活支援も大切な事業であると認識しています。中国残留邦人等が抱えている問題としては、
 1 高齢化が進んでおり、医療等のニーズが一層高くなっていること。
 2 年齢を重ねてから帰国したため、日本語習得が不十分であり、医療機関等で病状をうまく伝えられないこと。
 3 地域住民との交流が進まないこと。
などがあると考えています。なお、支援給付事業については、国家責任による補償事業の性格から、基本的には国の責任で行うべきものと考えます。

質問2 いわゆる中国残留邦人支援法の改正法が本格施行されて2年弱経過した。新たにどのような施策を行い、それによりどのような効果が出たか、また、どのような課題があると認識するか伺う。

回答2 いわゆる中国残留邦人等支援法による新たな支援策では、老齢基礎年金の満額支給と、それを補完する生活支援給付による経済的支援を拡充するとともに、支援給付の実施機関に、中国残留邦人等に理解が深く、中国語等ができる支援・相談員を配置しています。また、地域で実施する交流事業への支援、通訳の派遣等を行う地域生活支援事業も併せて開始されました。新たな支援策により、経済的には老後生活の安定への配慮がなされたと考えられますが、言葉の問題や地域住民との交流が進まないなどの課題もあり、都と区市町村とが連携して地域の日本語教室や交流事業等に気軽に参加できる仕組みを整え、社会的自立を促していくことが重要と考えます。

質問3 新たに市区町村に設置された「支援・相談員」について、その役割は大変重要であり、言語だけではなく問題の背景を含めて研修を行い、さらなる質の向上が求められる。また、そのためには報酬を含めて十分な待遇を保証することが質の確保に必要である。以上を踏まえ、「支援・相談員」の設置についての現状と課題、またさらなる質の向上について所見を伺う。

回答3 中国残留邦人等の置かれた状況に配慮し、きめ細かく支援していくためには、支援・相談員の資質及び能力の向上が重要です。都は、平成20年度から、中国残留邦人等への理解を深め、業務に当たっての基礎的な知識、心構え等を身に付けさせることを目的に、支援・相談員を対象に随時研修等を行い、資質及び能力の向上に努めています。


質問4 法改正で新たに地域生活支援事業も開始されたが、すべての市区町村で行われているわけではない。高齢となる帰国者は日本語教育も必要であるが当事者相互の交流の場である「居場所づくり」も必要であり、国の地域生活支援プログラム実施要領には明確な記載はないが、柔軟な対応の中で一部の市区町村では取り組みが行われている。今後、市区町村の取り組みがさらに促進されるよう、東京都としても情報提供を含めた積極的な支援を行う必要があると考える。地域生活支援事業のこれまでの取り組みと課題、今後の取り組みについて伺う。

回答4  地域生活支援事業は、中国残留邦人等の自立を支援するため、地域における支援ネットワークの構築、日本語学習者への支援、通訳の派遣等を行うことにより、地域の一員として普通の暮らしを送れるよう支援する事業であり、都内では、18区15市が実施しています。この事業の実施主体は、原則として区市町村とされており、特に帰国者が多く居住する区市町村に主体的な取組を広げていくことが課題となっています。都としても、区市町村に対して、支援連絡会や研修の実施などを通じ、取組の拡充に向けた働きかけや支援を行っています。

質問5 高齢化した中国残留邦人にとっては医療や介護についての不安が大きい。今後、中国語が通じる医療機関、介護施設などの設置や情報提供、また、関係する従事者の育成を図る必要があると考えるが、所見を伺う。

回答5 中国残留邦人等が高齢化し、医療機関や介護施設を利用する機会が多くなっているため、日本語の習得が十分でない中国残留邦人等に対しては、都又は区市町村が、自立支援通訳員を派遣して対応しています。自立支援通訳員の資質及び能力の向上を図るため、都は、平成20年度から都内全域の自立支援通訳員等を対象に、特に医療機関を受診する際の対応や心構え等についての研修を実施しています。なお、医療機関については、既に東京都医療機関案内サービス「ひまわり」で、中国語等による電話相談を行っているほか、中国語等で対応可能な医療機関をインターネットで検索できるサービスを行っています。


質問6 中国残留邦人問題は中国における家族の別離から始まった問題であり、日本に帰国した後、二世と同居ができないことは人道上も大きな問題がある。国は、二世の収入認定の基準を緩和したが、周知が十分にされていない。さらなる周知が必要であり、さらには、収入の多寡によらず一世と同居できる制度とするよう国に求めることが必要となる。見解を伺う。

回答6 平成21年6月から、親子の同居を希望する支援給付受給世帯が二世との同居を実現し、老後の生活を安定させるため、同居する二世の収入の認定方法について配慮がなされました。支援給付の実施機関に対しては、6月に説明会を実施し、適切な事務処理を行うよう指導してきましたが、制度の趣旨が十分に理解され、運用に遺漏がないよう、取扱いについて、引き続き周知を図っていきます。

質問7 多くの二世・三世は日本語を学ぶ機会や職業訓練を受ける機会がほとんどなかったため、生活に困窮する人が多くいるが、国の対応の遅れにより問題が家族に拡大したものである。日本語教育、就労支援、生活保護の適用などにおいても十分に配慮することはもちろんのこと、二世、三世支援のプログラムを都において作成するとともにその開発・作成を国に求めることが必要となる。二世・三世の現状の課題と取り組みについての見解を問う。

回答7 二世等にとって、社会的、経済的自立を図る上で、日本語習得や就労が課題となっています。中国残留邦人等と同伴帰国した二世等については、地域生活支援プログラム事業の中で、日本語教室等の紹介や就労支援等が受けられることとなっています。また、国が定める地域生活支援プログラム事業実施要領で掲げられた支援メニューについては、例示されたもののほか、中国残留邦人等のニーズに応じて地元自治体が独自に作成することができます。

質問8 自治体ではこれまで中国残留邦人については生活保護制度を通して認識されていたにすぎなかった。しかし、改正支援法の施行により、各市区町村でも対象者の現状が認識されるようになった。そのため生活実態の調査について、本人だけでなく、本人を通じて二世、三世などの現状の調査も可能となる。施策を検討するためには実態の調査をする必要があると考えるが見解を問う。また、二世、三世について、国の援護対象となる同伴家族だけではなく、実際に困窮している呼び寄せ家族についても自治体としては実態を把握することが必要であると考えるが、見解を問う。

回答8 現在、国において、各種支援策をよりきめ細かく実施していく参考とするため、いわゆる呼び寄せ家族も含めた中国残留邦人等の生活実態・状況を調査しています。

質問9 公営住宅については、中国残留邦人等支援法で、その居住のために特別の配慮をするものとされている。中国残留邦人等はすでに高齢化しており、できるだけ早期に、住み慣れた地域で、良好な住環境を整える必要があると考える。都営住宅の入居に関して見解を問う。

回答9 中国残留邦人等に対しては、既に都営住宅条例において、居住の安定について特別の配慮が必要であると認める者として、都営住宅の特別割当を行っています。また、都内の広範囲にわたり実施している都営住宅の一般募集においても、中国残留邦人等支援給付受給者に対して、7倍の倍率優遇等を行っています。今後も、これらの優遇措置について、的確に運用してまいります。

質問10 新たな支援策について、よりよい運用にするために、当事者の声が反映されるシステムを設ける必要がある。「中国帰国者生活支援検討委員会」等を設置し、当事者及びボランティアとの定期的継続的協議の場を設け、実効ある運用に努める必要があると考えるが、見解を伺う。

回答10 都では、区市町村との支援連絡会で当事者のお話を伺う機会を設けているほか、ボランティアとの意見交換も必要に応じて行っています。今後とも、必要に応じて随時対応していきたいと考えます。

質問11 学校教育においては、中国帰国者の家族で学齢期にある児童・生徒の受け入れ態勢を明らかにするとともに、担当教員や通訳員・学習支援員などの配置をし、円滑な適応がなされるよう配慮される必要がある。各教育機関に在籍する中国帰国者の家族の正確な把握に努め、特別な手だての事業の策定・継続・充実に努める必要があるが、見解を問う。

回答11 都教育委員会は、海外帰国児童・生徒、中国引揚児童・生徒、在日外国人児童・生徒等で公立小・中学校に就学している者のうち、日本語能力が十分でない児童・生徒に対して、通常の教科についての学習理解及び生活習慣の習得を容易にし、教育効果の向上を図るため、都独自に日本語学級の制度を設け、特別に日本語習得のための授業を行っています。この日本語学級は、対象となる児童・生徒が10人以上通級することとなる場合、学級を設置することができ、学級数に1を加えた教員を配置しています。また、学齢を超過した義務教育未修了者で日本語能力が十分でない者に対しては、働きながら学べるよう、夜間学級として、この日本語学級を設置しています。日本語学級の設置に至らない場合でも、対象となる児童・生徒が5人以上在籍する学校には、毎年度予算の範囲内で、国の制度である日本語指導教員を配置しています。
 なお、都立高校の入学者選抜においては、4校で中国等からの引揚生徒に対する募集枠を設けており、平成21年度入学者選抜では、募集枠24名に対して13名が受検しました。また、外国籍を有し、入国後の在日期間が原則として3年以内の生徒が都立高校共通問題を使用する都立高校を受検する場合には、ひらがなのルビを振った問題で受検できるようにしています。

質問12 雇用、住宅、就労、医療、教育などの諸課題がある中、全庁横断的な取り組みを行い、支援計画やプログラムの策定などが必要と考える。本当に帰ってきて良かったと思える地域をつくるために、今後の取り組みについての見解を伺う。

回答12 都においては、従前から中国残留邦人等の地域社会における早期の自立の促進及び生活の安定を図るため、都営住宅の特別割当や都立高等学校における引揚生徒を対象とした入学者選抜の実施、都立職業能力開発センターの入校案内などの支援を、関係各局の連携のもと行っています。今後とも、中国残留邦人等の置かれた状況に配慮し、適切に対応していきます。

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