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都議会質問記録

2015/09/30 東京都議会 本会議 一般質問 質問と答弁(2015年9月30日)

1 都政運営について

(1)平和施策の推進について

○中村ひろし:はじめに都における平和施策の推進について伺います。
9月19日、国会で安全保障関連法案が可決されました。多くの憲法学者が憲法違反と指摘し、報道でも多くの国民が反対している中、審議を打ち切っての強行採決は誠に遺憾です。こうした状況だからこそ、都が平和施策を積極的に推進することは重要です。
 知事は、第一回都議会定例会の施政方針演説で、「都は、オリンピック・パラリンピックの開催都市として、大きな責任を有している。平和で基本的人権が尊重される社会を守る姿勢を貫いていく」と述べました。知事就任以来、都市外交、人権施策、男女平等参画等これまで停滞していた事業が推進されていますので、同様に平和施策も推進する体制を強化し取り組んでいただきたいと思います。
 オリンピック・パラリンピックは、まさに「平和の祭典」であり、その開催都市として、平和への取り組みを進め、それを積極的にPRしていくことも必要と考えます。
都は毎年、3月10日に平和の日記念事業を実施していますが、戦後70年を迎え、戦後生まれが都民の大多数を占めるようになった現在、先の大戦の悲惨さを学び、その尊い犠牲の上に今の平和があることを、一人ひとりが深く胸に刻むとともに、平和の意義を確認し、平和意識の高揚を図っていくことが必要です。2020年大会の開催が決まった都市だからこそ、平和のための取り組みを進めていくべきと考えますが、都の見解を伺います。

〇多羅尾光睦 生活文化局長:平和に関する取り組みについてですが、都は、戦争の惨禍を再び繰り返さないことを誓い、3月10日を東京都平和の日と定め、毎年、東京都平和の日記念行事として、東京空襲犠牲者やその遺族の方々等を招いて式典を開催するとともに、3月10日に合わせ、東京空襲資料展等を実施しています。また、年間を通じ、東京空襲犠牲者名簿も収集しております。
 さきの大戦で戦争の惨禍をこうむった歴史を持つ都民の方々にとって、恒久平和の実現は最大の願いであり、この願いは、オリンピック憲章にうたわれている平和な社会の推進と共通するものでございます。オリンピック・パラリンピック大会開催都市として、引き続き、平和の日記念事業等を通じ、平和の大切さをアピールしてまいります。

(2)人権推進指針の実現について

○中村ひろし:都は、「東京都長期ビジョン」に掲げる「世界一の都市・東京」を人権の視点から実現するため、15年ぶりに「東京都人権施策推進指針」を見直し、先月公表しました。新たな指針では、人権課題が複雑化・多様化していることを踏まえ、取り上げる人権課題を増やし、課題ごとに現状・施策の方向性を示したほか、重点プロジェクトとして、今後新たに取り組む事業を掲げた内容になっています。
 オリンピック・パラリンピック東京大会開催まで5年を切った今、都が人権施策の基本的考え方を明確に示したことは、時宜にかなったものであると評価します。今週の日曜日に改めて「東京都人権プラザ」を訪問し常設展と企画展としてホームレスへの理解を進めるための写真展を拝見しましたが、こうした展示をより多くの方に見ていただきたいと思います。人権施策の推進体制の強化や第三者機関である人権施策推進会議に幅広い意見が反映されることも期待します。とはいえ、現状は、ヘイトスピーチが社会的問題になるなど「世界一」になるにはまだまだ課題も多いので、いかに指針の理念を実現させるかが重要です。今後、人権啓発を中心とした取り組みを強化していくべきと考えますが、都は、本指針に基づき、どのように展開していくのか伺います。

〇中西充 総務局長:今後の人権施策の展開についてでございます。
 オリンピック・パラリンピック東京大会の開催に当たり、人権尊重の理念が広く浸透した社会の実現が重要でございます。
 都はこれまでも、人権週間を中心にさまざまな啓発に取り組んでまいりましたが、新しい人権施策推進指針では、重点プロジェクトといたしまして、大型啓発キャンペーンの実施、東京都人権プラザにおける展示事業の充実などを挙げております。
 来月9日から3日間、大型イベント、ヒューマンライツ・フェスタ東京2015を東京国際フォーラムにて開催し、多様な文化、価値観、生活習慣等について理解を深めるとともに、人権について考える場といたします。こうした取り組みを計画的に実施することにより、人権が尊重される都市の実現を図ってまいります。

(3)知事の施政方針について

○中村ひろし:舛添知事は、前回と今回の定例会の施政方針において、東京都長期ビジョンではあまり前面には出ていませんでしたが、「ゆとり」について強調されました。成長一辺倒の時代から成熟社会への変化の中では当然の考え方といえます。一方、国の経済最優先の政策では格差が拡大していき、生活の現場の声を提案していかなければ、経済的に豊かな人だけが「ゆとり」を享受できる社会になってしまいます。都民が何を求めるかを把握し生活の質の向上を目指す必要があります。知事はどのような考えで「ゆとり」を前面に出し、どう実現していくのか伺います。

○舛添要一 東京都知事:ゆとりある成熟社会の実現でありますが、2020年東京大会は、経済成長の中で開催された前回の大会とは異なりまして、成熟社会の中での大会でございます。
 今回の大会を契機としまして、東京、そして日本は、さらなる高みの成熟を目指さなければならないと考えております。
 経済成長が引き起こしたマイナスの遺産を克服し、目指すべきは、持続的な成長とゆとりある暮らしを両立させた社会であります。
 そのために、長期ビジョンの中にも、例えば国際経済都市の創造、渋滞のない大都市を目指す取り組み、パラリンピック開催に向けたバリアフリー環境の構築、ワークライフバランスの実現など、ゆとりある成熟につながる施策を数多くを盛り込んでございます。
 東京を落ちついたまち、安全・安心に暮らし、誰もが人生を楽しむことのできる、ゆとりある成熟都市にしていくため、先進的かつ具体的な施策を展開し、21世紀の新たなベクトルを示していきたいと考えております。

2 高齢者施策について

(1)地域包括ケアシステムについて

○中村ひろし:次に高齢者施策について質問します。高齢化問題は深刻ですが、民間の研究機関が発表した特別養護老人ホームが足りないから地方へ移住させるという提言は知事が言うようにいささか乱暴な議論です。とはいえ楽観できる状況ではないのも事実です。都は住み慣れた地域に住み続けるための地域包括ケアシステムの実現に取り組んでいます。知事も施政方針で「NPO法人など様々な民間団体や人材が集まる東京の特性を活かして、大都市ならではの地域包括ケアシステムの構築を進める」と述べました。都の強みでもありますが人間関係の希薄さは弱点でもあります。財政の問題もあり介護保険法が変わり要支援の方のサービスが地域や住民に任されるように転換されてしまいました。支え合いといっても簡単ではなく、ボランティア活動する住民をしっかりバックアップする仕組みをつくること、NPOなど事業として行う市民活動を支援すること、同時に、困難事例については公がこれまで以上にしっかりと支えることがないと成り立ちません。行政が本気にならなければできませんし、相応の覚悟も必要です。住民がNPOを立ち上げ、体制を整え、継続的に事業を行えるようにするのは大変なことです。
 今後、地域包括ケアシステムの在り方検討会議における議論の中間のまとめをつくるとのことですが、あらためて、知事の言うところの、東京の特性を活かした大都市ならではの地域包括ケアシステムとは何か、課題と取り組みについて知事に伺います。

○舛添要一 東京都知事:東京の特性を生かした地域包括ケアシステムの構築についてでありますが、2025年には、実に都民の4人に1人が高齢者となり、ひとり暮らしの高齢者も増加いたします。また、要介護、要支援者は約77万人になりまして、今後10年間でおおむね20万人の増加が見込まれております。
 一方、元気な高齢者もふえ、その中には、豊富な経験と知識を持つ人材が数多くおります。また、東京には企業やNPOなど、多様な事業主体が活発に活動しておりまして、高度な医療を提供できる医療機関も集積してございます。
 こうした東京の特性を踏まえまして、本年3月に策定した東京都高齢者保健福祉計画では、介護サービス基盤の整備、介護人材や高齢者の住まいの確保などを重点分野に、さまざまな施策を盛り込みました。
 また現在、福祉先進都市・東京の実現に向けた地域包括ケアシステムの在り方検討会議、これを開いておりますけれども、ここでは幅広い視点から議論を行っていただいておりまして、今後、その議論も踏まえながら、大都市東京にふさわしい高齢者施策を展開していきたいと考えております。

(2)介護職場の待遇改善について

○中村ひろし:都は介護施設の待機者の解消のために施設整備を推進していますが、介護施設をつくっても介護人材が不足するとの意見があります。介護職場とはいえ、大きな施設から、小さなヘルパー派遣の事業者まで様々ありますが、介護報酬を公で決めているのであれば、基本的には待遇にそれほど差が出ないはずです。公の制度としての待遇改善を国に求めると同時に、各職場においてキャリアなどに応じた適正な報酬が支払われていないのであれば待遇改善を求める取り組みも必要です。都は介護職員の処遇に関する課題をどのように認識し問題解決を図るのか伺います。

〇梶原洋 福祉保健局長:介護職員の処遇についてお答えをいたします。
 介護職員の処遇における一番の問題は、キャリアパスの仕組みが十分でないことでございます。
 そのため、都は国に対し、介護職員のキャリアパスを早急に整備、普及するよう繰り返し提案要求してまいりました。
 また今年度から、都独自に、国のキャリア段位制度を活用して、職責に応じた処遇を実現するキャリアパスの導入に取り組む事業者への補助制度を開始し、補助要件として職員の段位に応じた手当の支給などを義務づけております。
 国に対しては、介護報酬の介護職員処遇改善加算について、基本部分に組み込むなど恒久的なものとするよう提案要求も行っており、都としては、今後とも介護人材の確保、定着に向けた取り組みを進めてまいります。

3 まちづくりと防災について

(1)道路整備について

○中村ひろし:次に道路整備について質問します。現在、都は、関係市区町とともに、新たな都市計画道路の整備方針である第四次事業化計画を策定中とのことです。この都市計画道路の中には、未着手で現道がまったくないものと、既定の幅員には足りていませんが、現道として車道などが確保されている、いわゆる概成路線があります。また、都市計画道路ではありませんが、現道として一定の機能を有する道路もあります。
 舛添知事が主張するディモータリゼーション社会を実現させていくためにも、こうした道路整備は必要ですが、最大限にその効果を発揮させていくためには、歩行者空間や自転車レーン、まちづくりと一体となった取り組みなどの視点で進めていくべきと考えます。
 都市計画道路については、広域交通や防災の観点から、優先順位をきちんと決めて整備を進めていくべきと考えます。住民からは、現在、まったく存在していない未着手の道路について整備して欲しいという声はあまり出されておらず、むしろ狭い道路を拡幅して欲しいという声が聞こえてきます。こうした路線についても、しっかりと整備していくべきだと考えます。そこで、現在、策定中の整備方針において、優先整備路線をどのように選定していくのか伺います。

〇安井順一 東京都技監:都市計画道路の整備方針についてでございますが、都市計画道路は、都市活動を支え、交通の円滑化や災害時の救急救援活動などに大きな役割を果たす重要な都市基盤でありまして、計画的かつ効率的にネットワークを形成することで、その機能が発揮されます。
 現在検討中の整備方針におきましても、こうした広域的なネットワークとの整合性を考慮しながら、骨格幹線道路網の形成を初め、地域のまちづくりへの貢献や、ゆとりのある歩行者空間の創出などの視点から、10年間で優先的に整備する路線を選定してまいります。
 引き続き、関係区市町とともに検討を進めて、年内には優先整備路線などを盛り込んだ新たな整備方針案を公表いたします。

(2)避難所のバリアフリー化について

○中村ひろし:次に防災に関連して質問します。今月は、北関東で集中豪雨による水害が発生し、調布市の震度5弱をはじめ都内全域に及ぶ地震が起きるなど、自然の脅威を再認識させられる出来事が続きました。各地で防災訓練が行われ、最近では避難場所に避難するだけではなく、校舎や体育館等の避難所の運営を行う「避難所訓練」も行われています。ところがあらためてバリアフリーになっていないことに気づかされます。
 都内の公立学校については、多くが災害時の地域住民の避難所に指定されています。国立教育政策研究所の「学校施設の防災機能に関する実態調査」によれば、都内の避難所指定を受けている公立学校のうち、体育館や校舎等にスロープや多目的トイレを設置している学校はともに約6割となっています。こうした状況を踏まえ、障がいのある方や、高齢者にも利用しやすいよう学校の体育館等のバリアフリー化を進めていく必要があると考えます。そこで都立学校のバリアフリー化の推進及び市区町村立学校の整備に対する支援について所見を伺います。

〇中井敬三 教育長:避難所となる公立学校のバリアフリー化についてでございますが、避難所指定を受けた公立学校は、非常災害時に、高齢者や障害者を含む多様な地域住民が避難生活を送る施設としての役割を果たす必要がございます。
 このため、都教育委員会は、都立学校について、校舎、体育館等の改築、改修時に合わせて計画的にバリアフリー化を進めております。また、公立小中学校についても、区市町村に対し、他の自治体の学校施設の整備状況に関する情報提供を行うなど、バリアフリー化の促進を働きかけております。
 今後も引き続き、こうした取り組みを通じて、公立学校のバリアフリー化を推進してまいります。

(3)災害時における避難について
 
○中村ひろし:先般の台風18号に伴う豪雨では、一部自治体において避難指示を出す判断が遅れたことや住民への周知メールが送られなかったり、市境を越える避難が想定されていなかったことなど様々な課題が浮き彫りになりました。伊豆大島や広島での土砂災害を受け、内閣府が今年、避難マニュアルを改訂し、各市区町村は水害時の避難のあり方の見直し等に取り組んでいるものの、大規模な水害が発生した場合には市区町村だけの対応では限界があることは、今回の水害を見ても明らかです。
 住民の避難については、地域の実情に詳しい市区町村が責任を負うものの、市区町村を越えた広域避難への対応など、都が果たす役割も大きいと考えます。都の見解を伺い質問を終わります。

〇中西充 総務局長:次に、水害時における避難のあり方についてでございますが、災害時の住民の避難は市区町村の役割ではあるものの、荒川や利根川など大河川が氾濫した場合の市区町村を越えた広域の避難については、都が調整を図ることが重要でございます。
 このため都は、昨年7月、東京都地域防災計画を修正し、従来明確に位置づけられていなかった広域避難の枠組みを整理し、市区町村間の総合調整など、都が果たす役割について明らかにいたしました。
 さらに、本年3月には、都内関係自治体による意見交換の場を設け、住民の安全かつ効果的な避難が可能となるよう検討を進めているところであり、今後、具体的な広域避難の方策について整備を図ってまいります。

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