2016/10/24 都財政の健全な運営を求める~決算審査で質問~
●会計管理局への質問
〇中村委員 それでは、会計管理局の昨年度決算において、局の重要な役割である公金の管理、運用について伺います。
都は、平成二十七年三月にそれまでの東京都資金管理方針を一部見直し、東京都公金管理ポリシーとして新たに策定をし、この決算年度の資金管理計画は、このポリシーのもとで策定された最初の計画となりました。公金の安全性、流動性の確保を大前提としつつ、柔軟かつ効率的な運用を行うことが目的とされました。
以前から政府の政策もあり、低金利からゼロ金利となっていましたが、決算年度中の平成二十八年一月には、マイナス金利の導入が日銀からも発表されました。
そこでまず、昨年度の実際の運用状況と会計管理局の対応を伺います。
〇中澤管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 平成二十七年度公金管理実績では、当局が管理している公金の平均残高は約四兆七千八百四十三億円で、前年度と比べ約五千二百二十九億円の増加でございます。
一方、利回りは〇・一一四%で、前年度の〇・一一九%から〇・〇〇五%低下しましたが、平均残高が増加しましたため、運用収入は約五十五億円となり、前年度の約五十一億円から約四億円増加いたしました。
また、平成二十七年度には、安全性を確保した上での公金運用の多様化の視点から、新たな運用商品の開発及び運用先の拡充を行いました。具体的には、元利保証型の金銭信託、外国銀行への預金及び円建て外債・ユーロ円債の組成を新たに取り入れました。
〇中村委員 金利は下がってはいますが、公金の残高の総量がふえ、また、運用先の拡充についてもさまざまな取り組みをしたため、運用収入は前年度よりは増加をしたということでした。
さて、改めて確認しますが、公金の運用の大前提は、安全性が確保されなければなりません。以前、舛添前知事が公金の株式投資について述べたこともあり、大きな問題になりました。当時、私も財政委員会におりましたので、私を含め各会派の委員から反対意見が出され、実施をされなかったという経過がありました。
知事もかわりましたが、今後も株式への投資はしないということでよいのか、確認の意味で改めてお伺いします。
〇中澤管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 都の公金には、歳計現金及び基金があり、その管理は、地方自治法第二百三十五条の四第一項及び第二百四十一条第七項により、最も確実かつ有利な方法により行うと規定されてございます。したがいまして、公金の株式運用は現行の法令上はできないものとなってございます。
都における公金の管理は、安全性の高い金融機関への預金や債券等で運用しており、この方針は今後も変わりはございません。
〇中村委員 公金の株式運用は、現行の法令上できないとの答弁を改めていただきました。都民の皆様の貴重な税金ですから、今後も安全性の確保を最重要として公金管理を行っていただくことを求めます。
次に、ファンドについて伺います。
会計事務をつかさどり、公金の安定した運用を求められる局において、以前は他局が所管していたファンドが会計管理局に移管されました。このファンドを所管している意義はどこにあるのか、改めて伺います。
〇鈴木資金活用担当部長 官民連携ファンド事業は、公金管理の一環として資金を運用しているものではなく、行政と民間の連携による新たな取り組みとして、全庁的なノウハウ蓄積に向けたパイロット事業と位置づけて実施しているものでございます。
会計管理局には、金融知識を有する人材がそろうとともに、投資、会計、法律分野等の専門家の助言を受ける体制も確立されていることから、ファンドの運営状況を適切に監視することが可能であると考えております。
〇中村委員 通常の公金管理と違い、パイロット事業との位置づけとのことですが、都民の貴重な税金ですから、これは毀損するわけにはいきません。金融の専門家の助言を受け、しっかりとした監視をすることを求めます。
現在、三種類のファンドを扱っていますので、一つずつ確認したいと思います。
まず、最初に始められた官民連携インフラファンドについて、配当と施設の整備の実績はいかがでしょうか。
このファンドは、東日本大震災の翌年の平成二十四年度に、全国のエネルギー分野への投資を通じた電力供給の安定化などを目的として開始をしていますが、ファンドに都が参加することがどの程度貢献したのでしょうか。とりわけ、東京都への電力供給への貢献はいかがか、伺います。
〇鈴木資金活用担当部長 官民連携インフラファンドは、平成二十七年度までに累積で約六億八千七百万円を回収しております。これまでに投融資した発電所及び発電出力は、十七件、約四十万キロワットとなっております。
都の出資金三十億円を呼び水とすることにより、ファンド運営事業者は民間投資家等から資金を集め、全体で約三百億円のファンドを組成しているところでございます。ファンドの投資先である発電所から生み出される電力は、遠隔地についても、全国融通等を通じて首都圏の電力安定供給へ貢献しているところでございます。
〇中村委員 次に、平成二十六年度に組成された官民連携再生可能エネルギーファンドについて伺います。
まだ始まってから期間は短いのですが、配当と施設の整備の実績はいかがでしょうか。このファンドの目的は、再生可能エネルギーの都内での導入促進、東北地方などにおける広域的な普及拡大などとされていますが、ファンドに都が参加することがどの程度貢献したのでしょうか。とりわけ、東京都への電力供給への貢献はいかがか、伺います。
〇鈴木資金活用担当部長 官民連携再生可能エネルギーファンドは、平成二十七年度に回収が始まり、二十七年度に約二千万円の資金を回収しております。これまでに投融資した発電所及び発電出力は、五件、約四万キロワットとなります。
都の出資金十二億円を呼び水とすることにより、ファンド運営事業者は民間投資家から資金を集め、全体で約百億円のファンドを組成しているところでございます。先ほど答弁したインフラファンドと同様に、ファンドの投資先である発電所から生み出される電力は、遠隔地につきましても、電力会社間の融通を通じて首都圏の電力安定供給へ貢献しているものと考えております。
〇中村委員 先ほども述べましたが、最初にできた官民連携インフラファンドの目的は、範囲が全国で、分野もエネルギー分野と幅広くなっていました。その後にできた官民連携再生可能エネルギーファンドは、都内と東北地方などと限定し、その分野も再生可能エネルギーとしていることから、長期ビジョンで再生エネルギーの利用割合を二〇%に拡大しようとすることに、より合っているともいえます。
そこで、官民連携再生可能エネルギーファンドができたことにより、官民連携インフラファンドに意義はあるのでしょうか、伺います。
〇鈴木資金活用担当部長 官民連携インフラファンドが、全国を対象に再生可能エネルギーのみならず幅広く対象としているのは、東日本大震災後の電力不足という喫緊の課題に対応するためでございます。全国を対象に、再生可能エネルギーだけでなく、ガス火力発電所へも投融資を行い、現在においても電力供給の安定化に貢献しているものでございます。
したがって、エネルギーの大消費地の責務として、再生エネルギーの普及促進を目指す官民連携再生可能エネルギーファンドとは目的を異にしており、現在においても意義があるものと考えているところでございます。
〇中村委員 次に、三つ目に立ち上がった官民連携福祉貢献インフラファンドについて伺います。
こちらは、都内における子育て支援施設を含む福祉貢献型建物の整備促進等を目的に昨年度組成され、東京都版CCRCを検討しているとのことです。新たな投資なので、出資金の毀損のリスクや情報公開のあり方、東京都版CCRCがまだ確たるものがないこと、福祉の割合や転用をしないかなど多くの懸念材料があるため、昨年度の予算特別委員会や財政委員会でも多くの議論をしました。その結果、リスクの回避や情報公開などに一定の答弁があり、そうした議論を踏まえてこのファンドが始まっています。改めて、決算においてそれが実施されているのかを確認したいと思います。
そこでまず、官民連携福祉貢献インフラファンドの平成二十七年度の状況はいかがでしょうか、伺います。
〇鈴木資金活用担当部長 官民連携福祉貢献インフラファンドにつきましては、都は、平成二十七年五月にファンドマネジャーの募集を開始し、同年十月にファンドマネジャーを選定、契約内容の調整を経て、平成二十八年二月にファンドマネジャー二者とファンドを組成いたしました。ファンド組成後、ファンドマネジャー二者は、投融資案件の実現に向け、都内のさまざまな案件について検討を開始したところでございます。
〇中村委員 決算年度ではファンドが組成をされ、案件については検討を開始したということでした。
ところが、昨年十月に三者を選定したと発表していましたが、その後、一者が撤退をして、ことし二月に発表された契約は二者になったとのことでした。その理由は何だったのでしょうか。そして、そのことによる問題はないのでしょうか。出資が五十億円から三十七億五千万円になったわけですが、百億円集まるのでしょうか、伺います。
〇鈴木資金活用担当部長 平成二十七年十月に選定したファンドマネジャー三者のうち、スパークス・アセット・トラスト&マネジメント株式会社は、平成二十八年二月八日付で選定を辞退いたしました。辞退の理由は、ファンド組成及び運営に係る参画企業間の調整を整えることができず、選定時提案したスキームの構築が困難となったためというものでございます。
今後、組成した二ファンドの投融資案件が拡大すれば、それに伴い、必要な資金を民間投資家から募集し、ファンド規模を拡大することから、ファンド規模の目標の百億円が集まることを期待しているところでございます。
〇中村委員 辞退の理由について伺い、また、百億円集まることを期待するとのことですが、やはり投資を専門に行う会社が辞退するというのは、そのこと自体にリスクがあり、不安材料になってしまいます。
そこで、リスクを回避するための方策はどのようなものがあるのか伺います。また、外部の専門家から助言を受ける体制を確立しているとのことですが、専門家からどのような指摘があったのか伺います。
〇鈴木資金活用担当部長 ファンドを通じて事業を行う場合、都以外の出資者や事業に融資する金融機関のチェックが入ることにより、事業の安全性がより高まるものと理解しております。また、都のファンドへの出資につきましては、経営責任を負わない有限責任の形で行うことに加え、優先劣後構造の活用により都が優先的に配当を受け取り、出資金の毀損リスクを抑える仕組みも導入しているところでございます。
都は、今後、投資、会計、法律分野等の専門家の意見を聴取しつつ、ファンドの運営監視に取り組んでまいります。
なお、専門家からの指摘内容につきましては、ファンドの運営状況に関する事項であり、守秘義務に係ることから、申し上げることはできません。
〇中村委員 有限責任の形での出資や、優先劣後構造の活用で毀損リスクを抑えるのは最低限のことであり、その上で具体的にどうリスクを回避するかということが問われます。守秘義務でいえないとなると、私たち議会も、本当に安全なのかについてどのように確認をすればよいかということになります。少なくとも、会計管理局がどう監視をしているかについて、まずは質疑を通して確認をすることになります。
そこで、都はこれまでのこのプロジェクトにどうかかわってきたのでしょうか、伺います。特に、リスクの回避をどうしているのか、伺います。
〇鈴木資金活用担当部長 本年二月のファンド組成以来、都はファンドマネジャー二者に対し、投融資案件の検討状況などについて、随時動向を確認しております。先ほどご答弁しましたが、本ファンドの組成に当たっては、リスク回避のための仕組みを組み入れたところでございますが、引き続き、投資、会計、法律分野等の専門家の意見を聴取しながら、ファンドに対する質問権、検査権を活用することによりリスクを回避すべく、ファンドの状況を継続的に監視してまいりたいと考えております。
〇中村委員 ファンドの状況の監視をしっかりと行うよう求めます。
民進党は、予算の審査の段階でも、投資先や整備効果のチェックができるよう情報公開を行い、透明性と貢献度を確保することを主張しました。当時の知事も、守秘義務の制約はあるが、できる限り公表すると答弁しました。
そこで、実際に情報発信についてはどのようになったか、伺います。また、具体的には施設の整備状況を定量的に公表する指標を検討するとも述べていましたが、どうなっているのか、伺います。
〇鈴木資金活用担当部長 ファンド契約上、守秘義務が課せられていることから、情報開示について、有限責任組合である都の意向を全て反映させることは困難でございます。
しかしながら、本ファンドが整備する施設が、地域が求める施設を含むものであることから、情報発信に努めることは重要でございます。本ファンドでは、ファンドマネジャーを公募する際に、その選定基準に、投融資先に関する情報の開示スタンスを明記することで、情報開示スタンスを重視いたしました。また、本年二月には、ファンド契約の締結に合わせて、ファンドの名称やファンド契約締結までの流れなどについて発表したところでございます。
今後、投融資の実行に合わせて案件を公表する際、どのような内容を公表するのかについて、引き続き検討してまいりたいと考えております。
〇中村委員 公募の際に、情報開示についての条件をつけたため、通常のファンドよりは情報開示はするということです。しかし、守秘義務があるとはいえ、公金を活用するわけですから、できるだけ情報公開するように求めていただきたいと思います。
都が出資をすることで投資効果の低い福祉目的が入るのですが、同時に、都が入ることで信頼性は増し、その施設ができれば、むしろ積極的に都が関与することを公表すれば、メリットになるわけです。まだ詳細な内容はこれからとのことですが、政策目的と収益目的の両立を図るとも述べていましたが、どのような福祉施設か、どのくらいの収益を見込むかなどわからなければ、ノウハウを生かしていくこともできません。
繰り返し述べていますが、絶対に都の出資金が毀損しないよう、そのためには都がしっかりと監視をすること、できる限りの情報発信を行うこと、これらを改めて求めて、質問を終わります。
●財務局への質問
〇中村委員 昨年度の決算について、最初に財政運営について伺います。
知事は所信表明で、豊かな税収を背景に、税金の有効活用の観点が損なわれることがあってはなりません、ましてや国際情勢、世界経済は不透明であり、その豊かな税収が約束されているわけではないと述べています。
自治体の財政状況を捉える上では、歳入、歳出の両面から眺めることが重要です。
最初に、都の歳入面から確認をしたいと思います。
まず、平成二十七年度決算を含む最近の税収動向について、財政当局としての認識を伺います。
〇岩瀬主計部長 平成十九年度に五兆四千九百七十三億円と過去最大となった都税収入は、平成二十年九月に発生いたしましたリーマンショックの影響などによりまして、平成二十一年度には一年で約一兆円もの減収に見舞われ、その後も、平成二十三年度まで減収が続きました。平成二十四年度からは、企業収益の堅調な推移などを背景に、法人二税を中心として税収は徐々に回復し、平成二十七年度決算では、前年度比九・〇%増の五兆一千六百二十四億円となりました。
このように、法人二税の占める割合が高い都税収入は、景気変動の影響を受けやすい極めて不安定な構造にあると認識してございます。
〇中村委員 平成二十一年は、私が都議会議員に初当選した年でもあり、都財政が景気変動等の影響に左右されやすく、非常に不安定な構造にあるということを肌で感じたことを記憶しています。
都財政の歴史を振り返ると、バブル経済後には税収が急激に減少する中、国の経済対策に呼応する形で歳出水準を維持したことにより財政危機に直面し、二次にわたる財政再建の取り組みにより、財政再建団体への転換の危機を克服してきました。
こうした経過を見ても、国が、都を豊かだとして不合理な偏在是正措置により多額の税収を吸い上げてきたことは極めて遺憾です。都としては、あるべき地方財政のあり方については引き続き国に働きかけていただくことを求めます。
続いて、歳出面です。
都民の生活に目を向けても、物価の上昇や格差の拡大により、厳しい状況に置かれている都民も多く、適切な対応が求められます。しかし、財政需要として今後大きな増加が見込まれるのは、少子高齢化の進展に伴う医療や介護等の社会保障に関する経費でもあります。
東京都年次財務報告書によると、社会保障関連経費については、今後二十年間に見込まれる増加額の累計は六・六兆円に上るとのことです。
こうした中にあっても、今後とも都民サービスを安定的に提供していくことがまさに都の責務ですが、そのために都がどのように財政のかじ取りを行っているのかを確認していきます。
まずは、事業評価についてです。
事業評価は、一つ一つの事業の効率性や実効性を向上させる、都における自己改革の取り組みとして実施されたものと認識しています。都議会民進党も、事業評価を通じ、施策のあり方を不断に検証しながら、東京の特性を踏まえた費用対効果の高い施策を展開していくことをこれまでも求めてきました。事業評価のこれまでの取り組みと成果について伺います。
〇岩瀬主計部長 事業評価の取り組みは、二次にわたる財政再建の取り組みの成果を踏まえまして、その後もこうした見直し努力を継続していくための仕組みとして再構築したものでございます。
具体的には、予算編成の一環として、財務局と各局が連携しながら一つ一つの事業の成果や決算状況などを分析した上で、事業を継続するのか、見直し、再構築を行うのか、あるいは拡大、充実を図っていくのか、多角的に検証を行い、その結果を翌年度の予算に的確に反映させております。
毎年度、評価手法を充実させて実績を重ね、これまでの十年間で三千百四十八件の評価結果を公表するとともに、累積で約四千八百億円の財源確保につなげており、確保した財源は、新規事業や重点的に実施する事業などの財源とするほか、都債償還や基金積み立てなど将来への備えに活用してございます。
〇中村委員 事業評価について、成果が出ていることはわかりました。
都議会民進党は、無駄の削減について不断の取り組みを主張してきました。もちろん、何でも削減ということではなく、必要な事業については予算を拡充しなければならないので、そのためにも無駄な予算は削ることが必要であり、めり張りのついた予算編成に向けて、より一層の取り組みを求めます。
さて、この事業評価の取り組みにより確保した財源は、基金積み立てなど将来への備えにも活用しているとのことです。過去に財政委員会に所属したときのことを思い返すと、平成二十七年度予算においては、前年度の最終補正とあわせて基金の創設が特徴的だったと認識をしています。
そこで、改めて基金の果たしている役割について伺います。
〇岩瀬主計部長 都の基金には、財政調整基金などの財源として活用可能な基金と、東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金や防災街づくり基金などの二〇二〇年に向けた集中的、重点的な取り組みを図る基金、さらに都債償還等の財源確保を目的とした減債基金などがございます。
財源として活用可能な基金は、不安定な都税収入を補い、財源が著しく不足する場合などに取り崩すことにより、年度間の財源調整を図ることを目的とするものでございます。
また、二〇二〇年に向けた集中的、重点的な取り組みを図る基金は、二〇二〇年に向け集中的、重点的に取り組むべき施策を着実に実施していくための財源を確保することを目的としております。
このように、基金は安定的かつ積極的に施策を展開するとともに、将来の財政需要に備えるための財源として、都の財政運営上重要な役割を果たしてございます。
〇中村委員 基金について、余ったお金をとりあえず貯金したというように見る向きもありますが、将来にわたって安定的かつ継続的な都民サービス提供の基盤を構築するためにも、過去の教訓や将来を踏まえたリスク管理であることはわかりました。これからも基金の持つ役割を生かして、戦略的に活用していただくことを要望し、次の質問に移ります。
次に、契約手続について伺います。
ここ数年、入札の不調の問題、建設労働者の賃金の問題が顕著になり、過去、財政委員会においてもたびたび議論されてきました。改めて、決算の審査に当たり確認します。
この決算年度が始まる四月に、いわゆる担い手三法が施行されました。都はどのように対応したのか、このことにより実際にどう変わったのか伺います。
〇五十嵐契約調整担当部長 品確法、入札契約適正化法、建設業法のいわゆる担い手三法の改正は、平成二十七年四月より全面的に施行されました。都は直ちに担い手三法の理念である担い手の中長期的な育成、確保を図るため、都の契約制度においても事業者の入札への参加意欲が高まるよう、最低制限価格制度の適用範囲の拡大を初め、市場価格と予定価格とのギャップの解消、JV基準の見直し、全体スライド条項の改正などに取り組んでまいりました。
平成二十七年度の入札契約の概況について、入札時の不調の発生数及び不調発生率は五百二十五件で九・八%となり、平成二十六年度の七百五十六件、一三・五%と比べ低下するなど、全体的には好転しているところでございます。
〇中村委員 法改正への対応などにもより、不調の発生率が改善されたとのことでした。
ただ、大きな事業での不調があったことから注目もされました。不調になれば、もう一度内容を見直し、また手続の時間もかかります。不調の結果、再入札により事業費はどのくらい高騰したのでしょうか。また、不調になったものが、再度入札手続を開始するまでにはどのくらい時間がかかるのか、その間、都ではどのような取り組みをするのか伺います。
〇五十嵐契約調整担当部長 不調となった案件の再発注までの入札手続については、不調原因の検討を行った上で、必要に応じて資材単価や労務単価の見直し、入札参加要件の緩和、工事対象や施工手順等の見直しを行っております。
また、再発注するまでの期間については、例えば議会付議案件ではおおむね六カ月、それ以外の財務局契約案件では、おおよそ二、三カ月を要しているところでございます。
なお、再発注による事業費の増加額につきましては、不調案件ごとに原因や対策が異なることから、一概には申し上げることが難しいと考えております。
〇中村委員 金額は一概にはいえないとのことですが、時間は当然かかっています。そのため、そもそも不調にならないような取り組みが必要になります。
入札不調の主な原因は、資材の高騰と労務単価の増加が考えられますが、都では、労働者の賃金等の実態をどのように把握しているのか伺います。
〇五十嵐契約調整担当部長 都は、改正品確法の理念である将来にわたる担い手の育成と確保に向けて、下請の実態を把握するため、平成二十六年度から社会保険労務士と連携した特別調査を実施しております。この特別調査は、財務局契約案件の中から調査対象を抽出し、契約前の書類調査では把握できない賃金を初めとする労働条件、労働環境についての現場の実態を把握するため、法令遵守の観点から実施しております。
具体的には、社会保険への加入状況や休日の付与、労働時間の管理及び賃金支払いなど、就業規則や賃金台帳を中心に、一次、二次の下請事業者について調査し、下請事業者の労働環境の実態を確認しているところでございます。
〇中村委員 調査をされているとのことですが、下請の建設労働者の方々にお話を伺うと、都が単価を引き上げたものをそのまま反映しているということでは必ずしもないようです。やはり公契約条例の制定が必要になると考えます。
さて、入札の事務に関して重要なのは、談合の防止です。都は、談合防止について具体的にどのように取り組んできたのか伺います。
〇五十嵐契約調整担当部長 公共調達において、都民の信頼を損ない、公正な競争を阻害する談合は、断じて許されるものではないと認識しております。そのため、都では、従来より談合情報に関する取り扱いを定め、公正取引委員会との連携に努めるとともに、電子調達システムによる入札手続、一般競争入札及び希望制指名競争入札の適用範囲の拡大、さらには事業者が一堂に会することがないよう現場説明会等を原則廃止するなど、談合のしにくい入札環境の構築に取り組んできているところでございます。
〇中村委員 また次の質問ですが、入札について一者しか入札がない場合もありましたが、競争性を働かせるという入札の趣旨を生かせてはいません。また、落札率が九九%というものも見られ、競争の結果できるだけ契約金額を抑えるという機能が働いていないのではないかとの見方もあります。
そこで、一者しか入札がないとか落札率が九九%であったりすることについて、どのように対処をしていくのか伺います。
〇五十嵐契約調整担当部長 都では、電子調達システムによる入札手続をとっており、入札参加者は、他に参加者がいるか知り得ない仕組みとなっているため、結果的に参加者が一者となったとしても、競争性は確保されているものと考えております。
しかしながら、より多くの事業者が入札に参加し、競争性を高めていくことは重要と考えており、このため都では、実勢価格を反映した適正な予定価格の設定、工事発注時期の平準化などに取り組んでいるところでございます。
また、都では予定価格を事前公表しておりますが、その事前公表された予定価格の範囲内では採算がとれなくなるおそれのある工事、施工条件の厳しい工事などで落札率が高くなることは、事業者の経営上の観点からすれば、不自然なこととはいえないと考えております。
都としては、今後とも、ただいま申し上げました予定価格の適正な設定などにより、事業者の参入意欲が高まり、より競争性が発揮されるよう、引き続き入札に参加しやすい環境づくりに取り組んでまいります。
〇中村委員 今後、参入意欲が高まり競争性が発揮されるようにするとのことですので、ぜひ具体的な施策として取り組んでいただきたいと思います。
さて、先ほども労務単価について述べましたが、実際に労務単価の上昇は建設労働者の賃金には反映されていたのか伺います。
また、法定福利費、社会保険への加入状況はどうでしょうか伺います。予算編成当時には、社会保険の一〇〇%加入を二年後の資格審査時をめどにと答弁していましたが、現状どの程度改善されてきたのか伺います。
〇五十嵐契約調整担当部長 都では、建設労働者の労務単価の改定は、直近では平成二十八年二月に実施いたしましたが、その際に元請事業者に対し、現場技術者への適切な賃金水準の確保や社会保険等への加入促進など、労働条件の改善について徹底するよう通知するとともに、業界団体を通じて、建設事業者に対しても要請を行ったところでございます。
こうした取り組みなどにより、都の建設工事の入札参加有資格者における社会保険の加入状況については、平成二十八年八月末現在、九九・三%となっております。今年度実施する入札参加資格申請の定期受け付けでは、経営事項審査を必要とする工事の業種に申請する場合は、社会保険等への加入を必須条件としており、引き続き加入率一〇〇%に向けて取り組んでまいります。
〇中村委員 建設事業者に対して要請を行ったとのことですが、公共の事業として働く人に払われるために計上した予算ですから、きちんと働く人に行き渡るよう制度を構築していただくことを求めます。
さて、昨年度は、旭化成建材のくい工事データ流用事件が発覚をし、世間に大きな衝撃を与えました。他社でも事例が見つかり、業界全体の問題ともいわれました。都の施設への影響と対応はいかがだったのでしょうか。安全は確認されているのか、改めて伺います。
〇久保田建築保全部長 くいの一部に電流計データ等の転用が認められました都有施設につきましては、施工記録の点検や現地調査を実施いたしまして、くいが適正に施工され、安全上問題がないことを確認しており、その結果を、国の依頼に基づき、建築基準行政を所管する各特定行政庁に報告済みでございます。
また、施工中の工事につきましては、施工管理の一層の適正化を図るため、くい工事や躯体工事など、構造上重要な工程を施工している現場における元請施工者及び工事監理者に対しまして、品質管理の徹底について指導をいたしました。
さらに、これらの現場におきまして、下請業者が行っているくい工事等における元請施工者による立ち会いや施工記録の点検、また、工事監理者による重要な工程への立ち会いなどにつきまして、都の監督員が緊急点検を実施いたしました。
こうした取り組みを通し、元請施工者や工事監理者による品質管理の取り組みが適正に行われていることを確認してございます。
〇中村委員 旭化成建材は下請の業者であり、発注者と直接契約をしているわけではありません。報道では、元請の責任が余り注目されていませんでした。
しかし、都が発注するのは元請なので、直接は元請にも責任を持たせるべきではないでしょうか。再発防止についての取り組みを伺います。
〇久保田建築保全部長 本年三月四日、国は、元請及び下請の施工者がそれぞれ基礎ぐい工事に際して遵守すべき措置や、工事監理者が基礎ぐい工事における工事監理を行うに当たっての留意点などを示しました基礎ぐい工事の適正な施工を確保するための大臣告示とガイドラインを公表いたしました。
都といたしましては、国による再発防止策に基づき、元請施工者に対し、適切な施工管理体制を構築した上で、下請のくい工事事業者による支持層到達の判断を確認することや、施工記録が取得できなかった場合の代替方法をあらかじめ定めておくことなどについて指導するとともに、対策が確実に実施されているのか、都の監督員が確認することといたしました。
こうした再発防止策を着実に進めていくため、本年四月に工事仕様書等の関係基準類の改正を行いまして、元請施工者はもとより、工事監理者等に対する品質管理の一層の徹底を図っているところでございます。
〇中村委員 都としても、くい打ちの問題だけではなくて、発注者としてしっかりと現場の監督をしていただきたいと思います。
さて、最近では、オリンピック施設に関して、レガシーの議論の中で後年度負担も議論されています。一方では、オリンピック以外の施設でも更新時期を迎えている施設が多くあり、改築に当たっては、維持管理や大規模改修等の後年度負担を考えなければなりません。
都は、平成二十七年三月に第二次主要施設の十か年維持更新計画を策定しましたが、整備に当たって、後年度負担の軽減にどのように取り組んでいるのか伺います。
〇久保田建築保全部長 第二次主要施設十か年維持更新計画は、都有施設の改築や改修等の維持更新を計画的に実施する目的で策定したものでございます。
施設整備に当たりましては、設計段階から設備、間取りの変更等が容易となるよう平面計画や設備計画に柔軟性を確保するほか、省エネルギー設備やメンテナンス性にすぐれた材料などを導入しております。
さらに、運用管理段階では、ライフサイクルコストの低減に資する予防保全型の維持管理を推進してございます。
こうした取り組みにより、将来コストの縮減に努めてまいります。
〇中村委員 都の施設に限らず、施設を建設すれば、その後、改修費だけではなく光熱費、維持管理費などもかかってきます。施設を建設する際には、それらをきちんと見越しておかなければなりません。
都の施設の中でも都庁は大規模なもので、ここ数年ずっと改修工事が続いています。改めて、この新宿の都庁舎の建設費は幾らだったのか伺い、また、現在行っている都庁舎の改修はいつまで行われ、改修工事は幾らかについて伺います。さらに、平成二十七年度の都庁舎の建物維持にかかわる費用は幾らかについて伺います。
〇米今庁舎運営担当部長 平成三年に竣工いたしました都庁舎の建設費用は千五百六十九億円でございます。また、現在行われております都庁舎改修工事は、工期が平成二十三年度から平成三十二年度となっており、改修費は七百六十二億円であります。
なお、平成二十七年度の光熱水費、建物管理委託、清掃委託などの本庁舎維持管理経費の合計は約三十五億円でございます。
〇中村委員 都庁舎については、建設費も大きな金額ですが、その後の改修費、さらには毎年の維持管理費が大きくかかっていることがわかりました。
施設を建設する際に、その施設が使われる限りの全てのコストの見積もりや、毎年都の施設全体の維持管理費が幾らなのかという統計はないようです。施設を建てれば、後年にこれだけ負担がかかるということを改めて認識していただきたいと思います。
冒頭にも述べましたが、決して都財政は楽観できる状況ではありませんので、多岐にわたって質問いたしましたが、健全財政に向けての財務局のより一層の取り組みを要望して、質問を終わります。
Twitter
@Nakamura_Mitaka からのツイートfacebook